どこまでも黒い空
どろどろの渦の続き
※暗いです。
***
真っ黒く塗られた心が軋む音がする
「話があるの」
愛は憎しみを増幅させる
「昨日、彼女がうちに来て…赤ちゃんができたんですって」
努めて冷静に、問い質す。彼女、といっても何処の誰なのか見当はついているのだろうか。
「で、なまえはどうしたいの」
「どうしたい、って」
「俺と別れる?それとも」
「しげるさんは私と別れたいの?」
「先に俺が聞いてるんだけど」
「私は…別れない」
「じゃあそれでいいじゃん」
煙草に火を付けると大きく吸い込んで静かに煙を吐き出した。
「…心配しないでよ。"奥さん"なんでしょ」
「別に心配なんて…してないわ」
明日話つけてくるから、と約束してその日は終わった。これ以上彼を問い詰めた所で何も変わらないと思ったから…
***
翌日、夕飯の時間を独りで過ごした。そのまま気がつけば夜中を過ぎて、時計の針がカチカチと耳障りな音を立てる。静かな部屋で待ち続けたなまえは眠いはずなのにどこか冴えている頭を抱えて布団に潜った。
(まだ帰ってこない)
ごろりと寝返りをうつ。溜め息をひとつ、ふたつ。今頃二人で…と考えただけで胸の奥がじくじくと痛み、叫びたい気持ちでいっぱいになる。
『アカギさん、奥さんと別れてよ。この子の為にも』
こくりと頷いて彼女のお腹を撫でる彼の指先が酷く優しい。あの、切れ長の瞳が映すのは、私じゃない
「やめてよ、やめて!」
「終わらせなくちゃ…」
なまえの心は深い闇に沈んだまま、色褪せてゆく。台所の引き出しから手にした鈍色が冷たく光を放ち、涙が溢れて止まらない。もう、限界だと唇を噛み締めた。
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