好きだよ、ずっと。



「じゃあさ、なまえの彼氏紹介してよ」

買い物帰りに立ち寄った喫茶店で友達の恋愛話に付き合っていたら何故かそんな成り行きになって、無理だよと断ったのは

「そんなに会わせたくない程ブサイクって事?」
「…あー、うん、そう。もう信じられない位に。だから無理なの、ごめんね」

絶対に彼女には会わせたくなかった。いつも他人の"モノ"を欲しがる子だったから、尚更。その悪癖以外はとても良い子なのに…

「ふーん。誰がブサイクだって」
「!?」

後ろから聞き覚えのある声がして振り返るとそこには

「しげるさん」

なまえの顔が青ざめる。まさかこんな場所で会うなんて、と己の不運を悔やんだ。

「ちょっとなまえ、どこがブサイクなのよ!めちゃくちゃ格好良いじゃないの」
「…………………」
「誰?紹介してよ」

すました表情でなまえの隣に座るアカギは煙草に火を付けて大きく吸い込むとゆっくり煙を吐き出す。

「こんな素敵な彼氏が居たなんて知らなかったな。羨ましい」

暫くの間、彼女のアカギへの質問攻めが続いた。なまえがちらりと横目で見ると、いつもなら"くだらない"と我慢せずにすぐ帰るはずの彼は煙草を吸いながらなまえの顔を見て「ククク」と笑うのだ。

「何が可笑しいの?」
「…別に」

少し喧嘩口調で不貞腐れたようにそっぽを向く仕草が可笑しくてまた笑い出すと、ますます不機嫌になる。

「え、何か険悪な雰囲気ですけど、上手くいってないとか?」
「フフ…どうかな。アンタにはそう見えんの」
「だってなまえがつまらなそうだから。彼氏さんと一緒に居ても楽しくないのかな、って…」

内心浮き足立つ友人はなまえが居てもお構いなしに話を続けた。

「そんな状態なら別れちゃったほうがお互いの為に良いんじゃない?」

まるで別れを勧めるような態度に呆れて何も言えなかったけれど

「…そうだな。"恋人同士"でいるのはもうヤメにしようか」
「…っ、しげるさんがそうしたいならどうぞ」

売り言葉に買い言葉

破局の瞬間を目の当たりにした友人は嬉々として身を乗り出した。これならなまえに気兼ね無く彼にアプローチ出来る、と。

まるでその思惑を見透かしたように薄笑いを浮かべたアカギは

「じゃあこれからは"夫婦"でいいだろ?」
「…え?夫婦って…」
「そう。結婚するって事」
「い、いきなりそんな話ッ」

しかもこんな場所で

「はぁ!?何なのそれ。つまんない」

お幸せに、と飲み物の代金を置いて帰った友人を見送るとなまえは未だ信じられないのかぼんやりと窓の外を眺めていた。

「ねえ、何で俺を紹介したく無かったの」
「だって…会わせたらあの子、絶対に貴方の事を好きになっちゃうから」
「ククク…妬いたんだ?」
「知らない!もう帰ります」

会計を済ませたなまえはいつものように差し出された手をぎゅっと繋いで歩く。その帰り道の途中でアカギは「指輪買わないと」と嬉しそうに店を探した。




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