惚れたもん勝ち



嫉妬なんてどうかしてる

第一、俺のモンでもねえのに
理由がつかねえだろ

「赤木さん、こっち」

手招きされた先にはなまえの姿。嬉しそうに微笑む彼女は雪のように白い肌とパッチリしたまあるいヘーゼル色の瞳が印象的で。光に反射する虹彩が薄緑に輝いて、その宝石みたいな目が合えば大抵の男共は気を良くする筈だ。

「楽しみですね。皆でお食事会」

なまえが誘った高級ホテルのラウンジでの食事。メンツはなまえ、赤木、天、ひろゆきの4人。値段は少し割高だがシェフのこだわりが人気を呼び、予約を取るのも大変だとテレビや雑誌で取り上げられていた。

「それにしてもなまえちゃん、よくここの予約とれたな」
「違うんですよ、実はね、くじ引きで当たったんです」

ペアチケット。2枚?

「私が1枚、赤木さんが1枚。一緒に行って二人共当たっちゃったんです!高級ホテルのラウンジでビュッフェなんてお洒落でしょ?」
「へぇ…そりゃすごい強運だな」
「それで僕達を誘った訳だ」

成る程、と納得した二人は座ったまま動かない赤木に視線を移した。

「赤木さん行かないんですか」
「…俺はいいよ。適当にやるから」
「じゃあ私が取ってきますね。ひろゆきくん、一緒にいこ」
「いいよ」

歳も近いし自然と仲も良くなる。
が、どういう訳かそれが赤木は面白くない。

なまえが何を選ぶのか気になって素知らぬふりで黙って後ろからついていくと何やらひろゆきと楽しそうに話していた。

「赤木さんて何が好きなのかな」
「ふぐさしとか?」
「それもいいけど置いてないから違うので」
「じゃあ端から取っていこうよ、全部」
「そんな食べないと思うけど…」

後ろから見ていた時、肩を並べて寄り添う二人をお似合いだと思った。普通の恋人同士のような初々しさが微笑ましい、と。そんな雰囲気を感じて声を掛ける事を少し躊躇ってしまう。

「………………」

(別に遠慮してる訳じゃねえ)
やっぱり座って待つ事にしようと席に戻り煙草に火を付けた。

***

『いつも僕に聞いてくるんですよ』
ついこの前、普段より神妙な面持ちで話し出すひろゆきはなまえからの質問攻めに少々困惑しているようだった。

赤木さんの好きな食べ物や好きなお酒、好みの女性はどんなタイプか、なんて僕が知ってる訳ないのに。そういえば麻雀も教えて欲しいって言われたなあ…

「本当笑っちゃう位、赤木さんの事好きですよね」

なまえさんには僕も敵わないや

まるで自分の事のように嬉々として話すひろゆきを思い出した。好かれるのは、まあ、悪い気はしない。

気に入ってるなまえなら、尚更。

「お待たせしました」

どうぞ、とテーブルに置かれた皿には色とりどりの料理。

「こんなに食えねぇよ」
「じゃあ半分こしますか?」
「…なまえが食わしてくれや」
「あっ、アーンですね?はい、どうぞ」

「ちょっと赤木さん、俺ら居るの忘れてんでしょ」
「天さんスルーして下さい。何言っても無駄ですよ」

呆れた顔で見合わせる天とひろゆきは苦笑いで肩を竦めた。




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