準備期間
11 小春Side


「2人ともー! かっこよかったわよーん!」



ジャージに着替えて部室から出てくるのを見計らって、がばっ!、と明ちゃんと四葉ちゃんに抱きつく。
2人とも「わっ」と驚きの声を出したけど、無視無視! ユウ君が「浮気か!」と言ってるけど、無視無視!
「なになに、どうしたの?」と明ちゃんに背中を擦られ、体を離して2人の顔を見る。



「ひったくり犯捕まえとったやないのー!」



アタシの言葉に、一瞬だけ、2人が固まった気がした。どうしたのかしらん?
しかし、すぐに「見てたんだ」と四葉ちゃんが笑いながら言った。あら、固まったのは気のせい?
アタシが大きな声を出したからか、他のレギュラー達が「なんやなんや」と集まってきた。相変わらず千歳君はおらんけど!

昨日、ユウ君とたこ焼きデートをしていた時、「撮影かいな?」という男性の声が聞こえてきた。
その男性はかっこよくて、好みのタイプだったから思わず「ロックオーン!」と言ってしまってユウ君に怒られた。
って、これはどうでもええのよ。そんなことより明ちゃんと四葉ちゃんの話をせな!
男性の言葉に、アタシとユウ君は撮影のカメラやら役者さんやらを見る為に、お店から顔を出して外を見る。
カメラは無いし役者さんもいなかったけど、不釣り合いな可愛らしいトートバッグを持った男性が前を横切った。
なんや慌ててる様子の男性に、ユウ君と「なんやろなあ」と会話をしたのを覚えている。
しばらくして、看板の上を飛び移る明ちゃんと、川の欄干の上を走る四葉ちゃんがアタシ達の視界に入った。



「そしたら、男に追いついた2人が男を拘束するもんやから、もう驚き!」
「久々知が”警察行く”言うたから、すぐひったくりやて分かったわ」



アタシとユウ君の説明に真っ先に反応したのは金太郎さん。「凄いなあ!」と目を輝かせて明ちゃんと四葉ちゃんを見ている。
謙也もケン坊も、尊敬の眼差しを2人に向けているようだ。蔵リンは「危ないことするなあ」と苦笑しているけど。
銀さんは……、あら、2人に手を合わせて頭を下げとるわあ。拝んどるんやろか。



「せやけど気をつけなあかんで? 刃物持っとる可能性あるんやから」



心配性の蔵リンらしい言葉。だけど響いていないのか、明ちゃんも四葉ちゃんも「はーい」と返事をするだけ。
その後、「忍者や忍者ー!」と騒ぐ金太郎さんを宥め、蔵リンの「始めるで」と言う言葉で部活が始まった。
金太郎さんてば、忍者なんて大袈裟やわあ。……せやけどなんでかしら、忍者でしっくりくるわ。
ちら、と明ちゃんと四葉ちゃんを見ると、2人は仲良く話しながら試合の準備に取り掛かっていた。
……追いかける時は普通やなかったけど、……今は普通よねえ?

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