準備期間
12 明Side


終業式を終えて、いよいよ明日から夏休み。
私にとって、魔の1週間が始まってしまう。だって兵助に会うのが遅れるんだよ!? 大問題だよね!?
担任の先生の話が始まる時間まで時間があるからか、クラスメイト達は廊下に出て他の同級生と騒いでいる。
夏休みどこどこ行こー、とか、水着買おー、とか、うきうきしているのがよく分かる。
合宿のことが無ければ、私も四葉と一緒に騒いでたのになあ。なんて思ったら悲しくなってきた。
……はあ。寂しいから四葉に会いに行こう。

ぼけーっと頬杖つきながら外を見ていたけど、ガタ、と立ち上がる。
このクラスに友達がいないわけじゃない。だけど、友達はみんな別のクラスに友達がいるし、その輪の中にぐいぐい行くことが出来ない。
忍者のつもりで行けば猫被って輪の中に入るんだけど、ずっと演じるのは嫌だし。本音で話したい。
って考えると、四葉の側が1番安心する。一緒にいて楽だし、気を使わなくて良いし。なにより大好き。



「へえ。私の友達にもいるよ、薬草とか毒草とか見分けられる奴」
「ほんま? 気ぃ合いそうやなあ」



教室を出ると、四葉のクラスの前で、四葉と白石君が話していた。あれ、珍しい。
2人きりで話しているところを見るのは初めてだ。いつもは私とか忍足君とか、誰かしら一緒にいたのに。
”薬草”とか”毒草”とかって言ってたから、四葉は伊作のことを言ってるんだろうな。
確かに伊作と白石君、会えば仲良くなりそうだ。毒草見分けられるらしいし、性格の相性も良さそう。



「でも自分の骨格標本持ってるんだよ」
「コーちゃんって名前つけてね」



四葉の言葉に続けて言えば、白石君は驚いたようで「わっ、久々知さん!?」と私に顔を向けた。
邪魔しちゃ悪いかなあって思ったけど、お互いに恋愛感情が無いのは見ていて分かるし、話しかけてしまった。
四葉は私の存在に気づいていたようで、平然とした顔で「そうそう」と頷く。さすが気配に敏感だね。
「伊作の話でしょ?」と四葉に聞けば、案の定「うん」と肯定される。ま、”毒草””薬草”で、”骨格標本”といえば伊作しかいないか。
しかし白石君は伊作のことを知らない為、「いさく?」と首を傾げた。

えっとー、写真あったかなあ。
スマホをいじって写真を漁ると、案外すぐに伊作の写真が見つかった。あ、これ面白くて撮ったやつだ。



「これが伊作」



そう言いながらスマホの画面を見せる。
喜八郎の掘った穴にお尻がすっぽり入り、なかなか抜けない為、出ようと必死に踏ん張っている伊作の写真。
四葉は「これ覚えてるー!」と笑うが、白石君は引き攣った表情を見せた。
この後、伊作は自力で抜け出すことが出来ず、私と四葉が手を貸しても抜けず、結局喜八郎に穴を広げてもらって脱出できた。
伊作は「僕かっこわるい」なんて涙目だったけど、いつものことなので、私達は気にしなかった。伊作は気にしてるかもしれないけど。



「もっとちゃんとした写真なかったんか……」
「伊作は不運だからね、仕方ない」



四葉も「不運だからね」と頷く。もはや伊作の不運はネタ扱いだ。
白石君は苦笑しながら「もし会うたら、全力で優しくせなあかんなあ」と呟くように言った。別にそこまでしなくても。

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