準備期間
07 千歳Side


「見つけた。千歳君だよね?」



誰かが近づいてくる足音は聞こえていた。だけど、まさか声をかけられるとは。
明らかに自分に用があるその声の主は女で、先日ここで会った竹谷さんの声とは違う。
目を開けると、しゃがんでこちらを覗き込むように見る女子生徒の姿があった。……どこかで見たような?
女子が身を引くのに合わせて、俺は上半身を起こし、改めて女子に視線を向ける。



「四葉知ってるでしょ? 竹谷四葉」
「うん? 知っとるばってん、君は?」
「私は久々知明。四葉の親友。んでもって白石君と忍足君のクラスメイトで、私も合宿に参加するの」



「よろしく」と明るい笑顔を浮かべる久々知さん。
そうか、隣んクラスやけん、見よることがあるんかもしれん。
どうして自分を探しに来たのか聞けば、久々知さん曰く「遠山君が千歳君と一緒に部活やりたいんだって」という理由らしい。
それに加え、早く自己紹介を済ませてすっきりしたかった、と。そりゃ悪かことばしたばい。
じゃあ、久しぶりに部活に出るばい。試合はせんばってん。

よっこいしょ、と立ち上がると、久々知さんも同じように立ち上がった。
竹谷さんといい久々知さんといい、背が小さかねー。
じーっと見ていると、視線に気づいたのか、久々知さんが俺を見上げて「どうした?」と聞いてきた。
妹のミユキみたい。そう思ったなんて言ったら、傷つけてしまうかもしれない。ミユキとは歳、結構離れとるし。



「なんでもなかばい。行こー」



特に追求しようとしていないのか、俺の言葉に「うん」と頷く久々知さん。
歩き出すと、久々知さんも俺の横に並んで歩き出した。身長の高い俺と合わせるのは大変だろうから、久々知さんの歩幅に合わせる。



「てか千歳君、背高いね。何すればそんなに高くなれるの?」
「食う寝る遊ぶ!」
「いや子供か?」



久々知さんの言葉に笑う。確かにそうかもしれん。

合宿。正直行くつもりはなかった。
テニスも、白石達んことも好いとるばってん、わざわざ合宿せんちゃ良かんでもって思うとった。
ばってんなんでやろう。なんでかは分からんばってん、いつもと違う何かが起きる予感がする。
そん原因は、竹谷さんと久々知さんかもしれん。なんとのう、そう思うた。

あーあ、ジブリんごつ不思議なこと、起きらんかなあ。

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