準備期間
05 白石Side


いつもと違う髪型で、高い位置に髪を1つにまとめ、ハードルを飛び越えて走る姿。
体育の時間なのだろう、グラウンドで走る竹谷さんの姿を、授業中の教室の中から眺める。
ぶっちぎりの1番乗りでゴールにたどり着いた竹谷さんは、息が乱れている様子はない。
「竹谷さん早すぎるわー!」と、いまだ走っているクラスメイトの女子の言葉に、竹谷さんは振り返ると「頑張れー」と笑いながら言う。

久々知さんと竹谷さん。ほんまに不思議な子達やなあって思う。
なんちゅーか、纏う雰囲気? が他の人とちょっと違う気ぃする。県外の子達やからかもしれへんけど。



「竹谷さん、陸上部をメインにすればええやん。大会出れるで?」
「でも、また大川学園に戻らなきゃいけないし」
「あー、せやったなあ」



走り終えた女子と竹谷さんの会話が、小さいながらも聞こえる。

そんな時、ズボンのポケットに入れていたスマホが揺れた。
スマホを取り出し、授業中の為、机の下でこっそりとスマホを見る。メッセージアプリの通知だ。差し出し人は、久々知さん?
せや、合宿のことで連絡取り合う為に交換したんやった。
久々知さんの方に顔を向けると、久々知さんは俺を見ていたようで、目が合った。
久々知さんは俺にニッと笑みを浮かべると、黒板に視線を向ける。とりあえずメッセージ見るか。

白石君白石君。四葉、足速いでしょ。私には負けるけどね!

俺が竹谷さん見とるの気づいたんか。なんや恥ずかしいわ。
「もしかしたら謙也より速いかもしれへんな」と返事をしたら、しばらくして「私には負けるけどね!」と再び言われた。
思わず笑ってしまいそうになるが、授業中であることを思い出し、笑いを堪える。



思いの外、久々知さんも竹谷さんもクラスに馴染んでいるようだ。
今朝の久々知さんは、昨日俺と謙也が合宿に誘ったことで、クラスの女子達に囲まれていた。
久々知さんがどういう経緯で参加することになったか。合宿に乗り気ではないこと。
目の前で見て知っているからか、女子達には「相談乗るで」と励まされていた。
さっきの女子との会話を聞くと、竹谷さんもクラスの女子と仲が良いらしい。良かった良かった。

なんや合宿、一気に楽しみになってきたなあ。

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