◆其の七

苦無で掘り起こした箱の中には、半年間食費無料、と書かれた紙が二枚あった。
実は学園長先生のブロマイドではないか、と疑っていた為物凄く嬉しい。
ユキちゃんと手を合わせて「やったー!」と喜ぶ。



「残り約半刻(約一時間)、皆から逃げ切ればなんとかなりそうですね」
「だね。何事もなければ、だけど」



せめて厄介な七松小平太に見つかれなければ良いけど。
とりあえず校庭にずっと居るのは目立つだろう。
「どこか隠れる場所探そう」と私が提案すると、「はい」と頷いてくれるユキちゃん。
さて、隠れる場所といっても、学園内ではすぐに見つけられそうだ。
となると、裏山辺りに潜むのが一番の得策かな。




 ***




「――残り四半刻(30分)、これは最後まで行けそうだ」



裏山の木の上で休憩をしながら、残りの時間を待つ。
今までくのたまと忍たまの数人が私達の下を通ったが、誰も私達に気付いていなかった。
まあ、一年生二年生の下級生だから仕方ない。
ユキちゃんは半年間食費無料の券を見ながら、「やった」と笑みを浮かべる。



「ちか先輩が組んでくださって本当に良かったです」
「私もユキちゃんで良かったよ。機転効くし」



ニヒッ、とお互いに笑う。
誰も来る気配が無いのを確認し、太い木の枝の上に寝そべる。
すると、ユキちゃんが「久々知先輩とはどうなったんですか?」と聞いてきた。
どうって言われても……、



「会話すらしてないよ」



私の言葉に、ユキちゃんは私をジト目で見てくる。
完全に不満そうなその態度が分かり、「何」と言うと、ユキちゃんは口を尖らせた。



「そんなんじゃ久々知先輩誰かに取られちゃいますよー?」
「ずっと見てきたけど、久々知君と親しい女いないもん」
「久々知先輩の片想いは視野に入れないんですか?」



ユキちゃんの言葉に、私はユキちゃんへと顔を向ける。
……久々知君が誰かに片想い……、それは全く考えていなかった。
ずっと友達と一緒だったし、そんな素振り見せなかったし。
……でも忍者の卵だから、そういう態度を隠せてもおかしくはない。
もし本当に久々知君に好きな女がいて、いずれ告白するのかもしれないのだとしたら、その時は、



「――その女殺すしかないな」



目を鋭くしながら殺気を出す私に、ユキちゃんが一気に青ざめる。
「じょ、冗談ですよ」なんてユキちゃんは言うけれど、それが本当のことだったらどうする。
別に私が久々知君と恋仲になりたいというわけではないが、久々知君を奪われるくらいなら相手を殺すしかない。
もしもの時の為に、今から準備をする必要があるな……。

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