壊れてそして | ナノ
■ 見えない顔と見える心

私が、泣いている。呆然と座り込んでいる母の背中を見つめて、目から溢れ出てくる雫がボロボロと頬を伝って落ちていく。拭っても拭っても涙は止まらない

私が、浮いている母の姿を見上げている。言葉にならない悲鳴を上げて流れる涙を拭う事もせずただただ叫んで髪をグシャグシャにかき混ぜて。頭の中で何かが割れる音がする

私が、俯いている。身体のあちこちに絆創膏や包帯を巻いている濁った瞳が下を見つめている。けれど温かい手が私の腕を後ろから引っ張って、振り返った私はその姿を見て、顔をクシャクシャにする

私が、私が立っている。目の前にいる大きな背中を見て手を伸ばそうとしたけれど、微笑んで動きを止めて虚空を掴む

離れなきゃ。これ以上縛っては、迷惑をかけちゃいけないから、

そう呟いて目の前にいる彼に背中を向ける。瞬間、お腹に小さな腕が回ってきて誰だろうと下を見ると、息が詰まった。 私だ。小さい頃の私だ。でもその顔は黒いボールペンのような物でグシャグシャに塗り潰されて、表情を覗くことが出来ない。その私≠ヘ、私を見上げてこう言った。

ほんとうに? ほんとうにそれだけ?

その言葉の意味か分からなくて、怖くて、私は私≠フ腕を振りほどく。私≠ヘ抵抗しなかった、だからと言ってその場から離れるわけでもなかった

くろに、めいわくをかけたくないから
くろに、きらわれたくないから
わたしがしんじて、まってたひとは、いなくなっちゃうから
もう、すてられたくないんだよね

私=Aは、

いつかくろがわたしのもとからいなくなるまえに、いなくなりたいだけだよね?



ブーッブーッと震える音と共にアラームが部屋中に鳴り響きその音に目をパチリと開ける。春瀬は一瞬己がどこにいるか分からなくなった。何度も目を瞬かせて辺りを見渡せば、自分の部屋であることを確認してゆっくりと上体を起こした。音の発生源である携帯を探して止める。ドクドクと血の通う音が妙にハッキリと聞こえ、額には汗をかいていることに気が付いた
「…………なんだろう」
何だか凄く、嫌な夢を見ていた気がする。心音をここまで早くさせるような恐ろしい夢。先程まで見ていた筈なのにその内容は思い出せなくて、ただボンヤリと不快な色が春瀬の心を包んでいた。その精神的な気持ち悪さと共に、肉体的にも気持ち悪くなっている自分に気付く。その原因が何かは、下腹部の重みで分かった
「……これは絶対…」
口を押さえてよろめきながらトイレへと向かい、朝から月に一度訪れる女の憂鬱と向き合う羽目になった。


夏休みが終わり、今日からまた学校が始まる。長期休暇を終えると髪型が変わっている者や小麦色に肌が焼けている者等、大きな変化はないものの少しだけ違う生徒達の姿が見れる。久しぶりと騒めく周囲の声が妙に頭に響いて、春瀬は顔に出さずとも小さく溜息をついた。薬は飲んだが未だに効く様子はなく、怠い身体を動かすのが億劫だ。夏休みで持ち帰っていた洗い立ての上履きを取り出して地面に投げ、裏返った片方を足で転がして直す。ローファーを入れようと靴箱を開けると
「…………」
新学期早々ご苦労な事だと目を細める。今度は押しピンではなく土や虫の死骸ときた。ここでキャアと怯え叫ぶような玉ではないが、いつもよりも苛つきの沸点が大分低くなってしまっている手前眉間に皺を寄せて舌打ちをした。すると隣で怖っ!と声がする。誰だと首を動かせば、今日も今日とて派手な三井と唯川がニヤニヤしながら立っていた。
「出てる出てる元ヤンが出てるぅ〜!」
「みっことゆーちゃん……」
「逆逆、みーちゃんとゆっこぉ」
「なはは、おはよぉございますねぇ」
「はよ〜ってかあんた顔色悪くない?大丈夫?」
「目が死んでるわな」
「いちにちめ…」
「あー…」
春瀬生理痛重いもんねぇと頭を撫でられそれに乾いた笑いで返すと、げ!!と不快感丸出しの声が上がった。
「何これ気持ち悪い最悪…!まだやられてんの?!」
「ゆっこさんすまん頭に響く…」
「あ、ごめーん」
「………流石にヤーさんに言うでしょ春瀬」
「……まー気が向いたら」
「あんたねぇ」
がははと力無く笑って、他の人の目から隠すように靴箱の戸を閉める。
「じゃあ私が言ってもいい?」
「自分で言うからダイジョブよぅ」
「ってなったら春瀬一生言わないじゃん〜」
「んふふ」
「……………ねぇ本当に顔色やばいよ?薬飲んだ?」
「そんなにやばい?何春瀬くらい?」
「100春瀬くらい」
「それはやばいな…」
「やばみやばみ。学校休めば良かったのに」
「んー…」
中学と違い高校はまともに通っている為出席ギリギリという訳ではないのだが、進学を決めた手前日数を考えるようになった。いつもの事だしどうせ暫くすれば薬も効くだろうとタカを括って登校したのである

だが、
「……………」
「……お〜い、生きてる〜?」
「………Hell」
「へるって何?」
「わっかんね。減る?腹減ったの?」
「地獄…」
その希望も虚しくいつまで経っても薬の効果が表れる様子はない。どうにか始業式を乗り越えて教室に戻れば、ホームルームが行われる。担任である久保が連絡事項を話しているが、机にうつ伏せになった状態でそれを聞き流してしまう。
「ーーーで、次は文化祭の出し物の件だが、」
「お!待ってましたぁ〜!」
「最初からそれ話せっつーの」
「ヤーさん話構成下手くそー」
「はなくそー」
「みみくそー」
「俺らのクラスは校内草むしりボランティア活動って書いとく。はい次、」
即座にごめんなさいとブー垂れていたメンバーが頭を机に擦り付けて謝れば、馬鹿野郎もっと低く頭を下げろと下衆顔をかましてくる久保。それに周りがゲラゲラ笑い声を上げる。3-6は問題児が集まっているクラスではあるのだが、基本的に皆陽気でアホな問題児ばかりだ。が、その最たるアホが今日はやけに大人しいと久保は春瀬の席を見て目を丸くした。
「春瀬どうした。寝てたら殺すぞ」
「殺さないでほしいんご……起きてるんご…」
「ヤーさん、春瀬体調不良んごよ」
「朝からずっとだから保健室行った方がよろしいかと思われるんごよ〜」
「なにンゴンゴしてんだお前らゴリラか…。春瀬、きつかったら無理すんな」
「…ぃー……っす…ざぁーっ…す」
「ノイズか」
注目されている居た堪れなさとHRを中断させてしまっている申し訳なさが勝ってしまい、春瀬は大人しく保健室で休むという選択を選んだ。三井と唯川が付いて行こうとするが、大丈夫と手をピラピラさせて教室を後にする。
ゆっくりと廊下を歩けば、各教室の話し声が耳に入ってくる。4組を横目で覗くと、黒尾が大きな欠伸をかき、その前の席で夜久が頬杖を付きながら担任の話を聞いている姿が見えた。何となくバレたくなくて早足でその場を離れて階段を降りる。
「っ、ぅ………」
急に鈍痛が下腹部を襲い、足が動かなくなる。ズルズルと壁に凭れてその場でしゃがみ込んで膝に頭を乗せた。治れ、治れと願いを込めながら腹を摩るが一向に痛みが引く気配はなく、冷や汗をかき始める。やはり誰かについてきて貰えば良かったと思ったが後悔先に立たず、身体が石のように動かない。
(なんで薬効かないのー……)
ゆっくり息を吐きながら、このまま下半身を捨てて上半身だけ帰宅出来ないだろうかとその姿の自分を想像する。そんなこと出来るわけがないのだが、一時的にでもこの辛さから離れたいと必死な彼女の現実逃避だ
(……………気持ち悪い、)
吐きそうと胸を押さえた時だった。
「……貴田?」
頭上で自分の名を呼ぶ声が聞こえて、春瀬はゆっくりと見上げる。
「やっぱり貴田だ。どうした?体調悪いのか?」
海だ。見知った顔に少し安心を覚え笑おうとするが笑顔を作る力もない。彼は春瀬の横に並んで屈むと、その顔色をの酷さに気付く。
「貴田、保健室行こう」
「………」
「…頷くってことは、行こうとはしてたんだな。動けないのか?」
「……」
「…………」
元々生理痛が重い方ではあったが、ここまで酷いのは初めてだった。もういっそのことこの階段で横になってしまいたいと思ってしまうがそうはいかないし、だからと言って動けない。海を困らせているに違いないと自分に対して苛立ってしまう。すると、少し迷う素振りを見せていた海だったが、意を決したように春瀬に手を伸ばした。そして軽々と彼女を横抱きにし、保健室向かうねと言って階段を降り始めた。これは所謂お姫様抱っこというものじゃないかと頭の隅で今の自分の状態を冷静に分析したが、恥ずかしい等と抵抗する気にはなく流れに身を任せた。


目的の場所に辿り着けば、直ぐに保健医が駆け寄ってきてベットに横になる様に指示してくる。海がゆっくりと春瀬を下ろすと彼女は薄く目を開けて、ごめんね、ありがとうと呟いた。
「全然。早く良くなるといいな」
「うん……」
「海君ありがとね。教室戻って大丈夫よー…ってあら?海君と貴田さんって同じクラスだった?」
「いえ。トイレ行って教室戻ろうとしたら貴田が蹲ってたの見つけて」
「なるほど。」
じゃあ俺戻るねと春瀬に声をかけると、もう一度謝罪と礼が返ってくる。何も気にしていないのだが、きっと申し訳ないと思っているのだろう。
(一応黒尾にLINEいれとくか)
退室する前に一度礼をして、ドアをゆっくり閉める。お姫様抱っこをした事は隠した方がいい気がすると苦笑いをしながら、海は教室へと戻っていった。

「貴田さん、とりあえず熱測ろっか」
「せーりつー、…です…」
「あ、そうなの?そっかそっかキツイねぇ。……それにしても妙に体温高い気がするんだけど」
春瀬の額に手を置いて、保健医が訝しげな顔をする。とりあえず測ってみてと体温計を渡され、正直もう寝てしまいたいという文句を堪えて亀の様にゆっくりとそれを脇に挟んだ。長い間があいて、ピピピッと測り終えを知らせる音が鳴る。またノロリノロリと動いて腕を挙げて取り、数値を覗けばマジかよと気が遠くなった。
「せんせぇー……38.8ぃ…」
「うそ?!?!」
要するに二重苦だったという訳か。どうりでいつもより酷い筈だと両手で顔を覆えば、何で学校来たの!と怒られてしまった。
「今日はもうお家帰った方がいいわね。連絡するね」
そう言って彼女の保護者に電話をかけようとする保健医。春瀬はハッとして思わず裾を掴んだ。
「わ、…どうしたの?」
「大丈夫」
「え?」
「ちょっと寝て、落ち着いたら自分で帰ります…帰れます」
保護者に連絡するということは即ち叔母に、叔母と連絡がつかなければ黒尾の母に迎えを頼むということだ。仕事の邪魔はしたくない、薬も飲んだからあとは睡眠を取れば症状もそれなりに良くなるはず、春瀬がそう告げると保健医は困ったように笑った。
「でも階段で動けなくなったんでしょう?帰宅中にまたそうなったらどうするの。」
「…………寝れば大丈夫…な気がします」
「気がするじゃダメ」
「…………お願い先生…」
裾を掴む手が強くなる。顔を真っ青にさせながらもその目はジッと保健医を見つめてくる。春瀬の事情は、よく知っている。だからこそその瞳を無視する事は出来ない。暫し思案を巡らせた後、わかったと口を開く
「じゃあお昼後に私が送るっていうのはどう?」
「え………いいよー……先生も仕事あるじゃん…」
「何言ってんのこれが仕事よ」
「……」
「昼後だったら空いてるから、その時に私の車出す。これでおっけ?それまでここで寝てなさい」
「ぜーったい、昼までには治ってる…だから1人で帰れる…」
「粘るわね貴田さん。大人しく言うこと聞いてちょー、だいっ」
「ひょっ…」
ペシンと額に冷えピタが貼られる。突然肌にひんやりとした感覚が来たものだから思わず変な声を上げてしまうが、すぐにそれは心地よさへと変わっていった。学校で冷えピタを貼るなんて変な感じだ。
「ほらほらもう寝なさい。喋るのもキツいでしょ?」
「うぅ………せんせぇ…」
「はーい」
「………ありがとうございますぅ…」
「どういたしまして」
布団を被せて、微笑みながらカーテンを閉めてくれる。優しい美人さん、まさに保健室の先生って感じだなぁとボンヤリしながら、突き刺すような腹痛に顔を歪めて目を閉じた。



ドボン

誰かに背中を押された。 随分と深い水の中に突き落とされて、浮力が働かず自分の身体は下へ下へと沈んでいく。苦しくて、苦しくて、手と足を稼働させて上へ向かおうとするも、動かせば動かす程身体は下へと落ちていく。いや、落ちていくというよりは引っ張られているようだった。その勢いはどんどん強くなっていきグンッと身を捩らせば、いつの間にか地上に出ていた。 何、と呟けばまた背中を押される。押される瞬間後ろを振り向いて息が止まる。顔が見えない、小さな、
ブクブクと泡が身体を包んで、また引っ張られて、地上に戻って、押されて。何度も何度も、その繰り返し

どうしたって、くるしいよ

そんな声が耳に入って、また、



昼時間の合図である予鈴が鳴る。海から連絡を受けた黒尾は直ぐに教室を出て、保健室へと足を運んだ。夜久も一緒に行くかと尋ねれば、委員会の集まりがあるとのこと。貴田によろしく言っといてくれと心配そうな顔をしていた辺り、彼もまた朝からずっと気になっていたらしい。小走りで階段を降りる。本当はもっと早く訪れたかったのだが今日に限って午前中の授業は全て移動教室で、中々時間が空く様子がなかったのだ。途中教師に走るなと諌められれば、競歩でーすと言って誤魔化す。
漸く目的地へと着けば丁度保健医が保健室のドアを閉めた所だった。
「ちわす」
「あら黒尾君。もしかしなくても貴田さんね?」
「もしかしなくてもそうっすね」
「丁度良かった。今から貴田さん車で送ろうと思ってたんだけど、私ちょっと職員室に忘れ物しちゃって。少しだけ貴田さんのこと見ててもらえる?」
「うぃす」
「よろしくね」
ポンポンと黒尾の肩を叩いたのち職員室へと向かう保健医を見送って、軽くノックしてドアを開けた。外の喧騒が聞こえるのみで、中は誰もいない。一つだけカーテンが掛けられているベッドの様子から、今日休んでいる生徒は春瀬だけのようだ。静かだということは寝ているのだろうか。黒尾はなるべく足音を立てないようにゆっくりと彼女が寝ているベッドへと近付き、カーテンを開いた。金色の長い髪が枕に散らばっていて、その額には冷却シート。掛け布団は中途半端に下半身に掛けられていて、身体はまるで胎児のように折り曲げられている。顔にかかった髪をどかして耳にかけてあげてから、黒尾は布団を優しく引っ張ってちゃんと掛けてあげる。すると春瀬が身動ぎした。
「起こしたか…?」
焦ってポソリと呟けば、返事は返ってこない。ふぅと息を吐いて、傍に置かれていた椅子に腰掛ける。春瀬が体調を崩していると連絡を受けた時、口にはせずとも月に一度のアレかと何となく察していたのだが、冷えピタが貼られているということは単に風邪だったのかと黒尾は彼女の頬を撫でる。実際のところ彼の予想は間違いではなく、より詳しく言えばその予想していたものと風邪が併発しているという事なのだが。原因がどうであれ想い人が辛そうにしているのを見るのは当たり前の事ながら、嫌である。早く治るといいなと呟くと、春瀬が急に掠れた声を発した。
「……………い…ぁ」
「………ハル?」
「………………た…………い」
「……………」
うなされているのか。黒尾が彼女の顔を覗き込む。そしてピシリと固まってしまう。薄く開かれた唇に蒸気させた顔、垂れた眉。
「くろ…………」
今度ははっきりと、聞こえた。我に返って起こそうとしたがその単語にまたもや動きを止めてしまう。恐る恐る頬に手を伸ばすと春瀬の熱い息がかかる。
(…………いや、起こせよ)
なに傍観してるのだと思い直す。
「…………………やだ……」
しかし言葉は続いた。ハル、ともう一度声をかけてみたがやはり眠っていてただの寝言のようだった。そしてまた、言葉は途切れる。手の平に伝わる春瀬の体温が高くて、これはまた熱上がってきてるんじゃないかと焦る。
すると彼女の顔が苦しそうに歪められた。
「っ、」
もう片方の黒尾の手に、春瀬の指が絡められる
「…………ハルさん、ちょっと俺がヤバいから離そうぜ。な。」
そう言って離れようと試みる黒尾の行動とは逆に、春瀬は彼の手に頬を摺り寄せてきて絡めた指に力が入れる。ヒクリと頬を引きつらせて、こいつ本当は起きてんじゃねぇの?と春瀬の顔を見た。

「…………いっしょに……いたいのに…」

そう耳に入ってきた途端、黒尾の一旦離れようという思考は完全に停止する。頬に添えていた手に力を入れて、ゆっくり彼女の顔を上を向かせる。絡められたもう片方の手は繋いだまま。黒尾は春瀬の唇に自分の唇を押し付けた。熱い。ん、とくぐもった声が聞こえて、一度離す
「いればいいだろ」
そしてまた、重ねた。


「黒尾君遅れてごめんねーってびっくりした!何で開けてすぐドアの前立ってるのよ!!」
「はははは」
「心臓バクバクしてるわ…。あ、どう?貴田さん起きた?」
「まだ寝てます」
「そっか。」
「じゃ俺戻ります」
「はーい。……何か様子おかしくない?大丈夫?」
「はははは」
「大丈夫?!」
「ダイジョブです」
爽やかな笑顔を保健医に向けて、黒尾は会釈して早足でその場を離れていく。来た時と違い明らかに何か変で、どうしたのだろうと頭にハテナを浮かべる。とりあえず春瀬を送らねばとベッドの側に寄って、寝息を立てている彼女の身体を軽く揺すった。
「貴田さん、用意出来たから行こっか」
「ん………んー………………ここどこ…」
「保健室よ」
「……ん…あぁそっか…………そうだった……」
「体調はどう?」
「んー……さっきよりは全然大丈夫……だけど………」
「だけど?」
「………………なんか、やな夢見てた……途中まで…」
「あら。途中ってことは後半は良い夢だったの」
「………んー………………ん?………あかんなぁんも覚えてない…」
「まぁ夢なんてそんなもんよねぇ」
上体を起こしてペタペタと自分の顔を触ってみる。熱い。
「…………?」
身体は相変わらず怠い筈なのに不思議と、気持ちはスッキリしていた。
「なんじゃろ…………」
くあっと大きな口を開けて欠伸をすれば、手で押さえなさーいと注意を受けた。
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