壊れてそして | ナノ
■ ある女子高生Aの

目の前を通り過ぎていく、背がとても高くて目付きが鋭い男の子。でも中身を知れば、気さくで優しい男の子。部活をしている普段の真剣な姿と、笑った時に見せる笑顔、そのギャップで虜になった女の子達はどれくらいいるだろう。私もまたその内の一人だった。

三年生になって、クラスが一緒になった。嬉し過ぎて何度も貼り出された名簿を見返した。毎日教室で会えるんだと思ったら自然に緩む顔。そう思って学校に行くのが楽しみになった。

掃除当番が一緒になって、話す機会が少し増えた。彼はやっぱり優しくて、私がゴミ袋を持とうとすると重いからと気取った感じもなく自然に代わってくれる。箒で掃きたいと思う所に不良みたいな人達がいて困っていた時「ウェーイお前ら邪魔〜」「あぁ?んだよお前真面目かよ」「このゴミ袋に入れられたくなければそこをおどきっ」「誰だよ」なんて軽口を交わして、何のいざこざもなく彼等を退かせてくれた(不良と仲が良いのもまたかっこいい)。

とにかく彼の言動一つ一つがときめいて、気付けば私の心は彼のものになっていた。でも、私は彼のすることなんて否定したくないけど、たったひとつだけ例外がある。それは貴田春瀬という女を側に置いておくこと。これだけはどうしても理解できない、あんな女の何がいいの?染髪された髪、着崩した制服、態度、全部がふざけてる。一緒に行動している二人も下品で汚い女。貴田春瀬はお昼休みになると結構な頻度でこっちの教室に来て彼と彼の友人二人で昼食を食べる。それも気に入らない。話したことはないけど、何だか知らないけど色んな人と仲が良いみたい。でもそれって絶対、彼が人気者だからでしょう?貴田春瀬は彼の人気を利用して自分の株を上げているに決まってる。気持ち悪い、酷い女だ。私は違う。私は彼のことを利用なんてしないし、株を上げたいわけでもない、ただ、ただ大好き。

その想いが溢れて、私は掃除時間に遂に、彼に告白した。彼は最初驚いたように私を見ていて、その表情が新鮮で思わず下を向いてしまった。胸がドキドキする、もしかしたら答えはイエスだったりするのかな?クラスが同じになって大分話すようにもなったし、掃除時間にもいつも助けてくれたり、親切にしてくれたりする。私に気があるから、だったのかも。鼓動の音が速くなって、顔に熱を感じる。すると頭上から、ごめんと聞こえた。は?と思って顔を上げると少し困ったようにしてたけど、でもすぐに真剣な顔になる彼。気持ちは嬉しいけど付き合えないって言われた。急に心が冷たくなる。断られた。どうして?好きな人がいるの?思わずそう聞くと、彼は、うんって。聞きたくないけど、気になって、聞きたくないけど、聞いた。それって、貴田春瀬さん?その名前を出した途端、彼の瞳が揺れた。答えは聞かなくてもすぐに分かった。わかった、これからも友達でいてくれる?私は嫌な気持ちをなんとか抑えてその言葉を口にする。すると彼はあぁと頷いてくれた。

許せなかった。幼馴染というだけで、ここまで彼に大事にされる貴田春瀬が。私がもし、彼の幼馴染だったら彼は私を好きになっただろう。貴田春瀬なんて大嫌いだ。私の方が綺麗な髪で可愛いし、制服もきちんと着てて好印象、顔も悪くない、どこからどう見てもあの下品な女より清楚で、彼にーーー黒尾君に相応しい子なはず。どうにかして黒尾君と貴田春瀬を離さなきゃいけない。黒尾君が可哀想。


離さなきゃいけない。
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