壊れてそして | ナノ
■ テスト用紙は折紙です

「ちょっとまってぇ春瀬めちゃくちゃまつ毛長くね」
「んー?」
「まじだやっば。あんたマツエクとかしてた?」
「自まつ毛ー」
「ふざけー」
3-6には三馬鹿と呼ばれる女生徒達がいた。春瀬と彼女のギャル友である。1人は春瀬の机に座り、もう一人は春瀬と椅子を半ケツしていた。
「あたしはもうつけまないと生きていけねーわ」
「みーちゃんたまに目の上に毛虫乗ってるもんね」
「ころすぞ春瀬このやろ」
「ころされちゃうゆっこ助けて」
「骨は拾ってやんよ」
ゲラゲラと笑いながらそんな会話を繰り広げる。チャイムが鳴って、英語の持田先生が教室に入ってきた。ざわついていた休み時間とは一変し、生徒の声は徐々になくなっていった。
「この前の英語のテスト返すぞー」
生徒の声がなくなったと思えば途端「ええー」「いらねー」という声が上がる。文句言う奴は0点なという先生の言葉にひとつ笑いがおき、再度静かになる。
「はい、平野ー」
「はい」
「吉川ー」
「うぃー」
次々と生徒の名前が呼ばれる。みーちゃんこと三井、ゆっここと唯川もまた名を呼ばれ、お互いその点数に爆笑していた。笑ってる場合じゃないぞお前ら!と怒られ、また爆笑していた。
「松井ー」
「はーい」
「貴田ー……お前…お前もなかなかひどいな…」
「うぇいうぇい?なんだねもっちー」
名前を呼ばれ、トテトテと教卓の方へと向かう。先生は、呆れたように春瀬を見た。
「お前はやればできるのに…どうしたこの点数は」
「あちゃば」
「春瀬ダサいぞー」
「春瀬0点かー?」
「どれどれ…ぶはっ!36点!惜しい!」
「どの辺がだ!!」
バシリとプリントで頭を叩かれる。春瀬はだってあと4点で40点と口を尖らせた。
「お前は成績の上がり下がりが激し過ぎる。勉強してる時としてない時が丸わかりなんだよ。やれば出来るんだからやりなさい」
「みゃーい」
やれやれとため息をつき、先生はまた次の生徒の名前を呼び始めた。春瀬はテスト用紙を折り畳みながら席に着く。すると、隣の席の男子に声をかけられた。
「貴田さん前回95点だったよね?科目別順位貼り出されてたの、俺覚えてんだけど」
「あれねぇあの時は一緒に勉強したからさーなんやかんや解けたんだよね」
「一緒にって、誰と?……バレー部の黒尾?」
「うん。黒ぴっぴだよ」
端と端を丁寧に合わせて、テスト用紙で折り紙のように遊び始める春瀬。そんな彼女に、彼は問いかける。
「付き合ってるの?」
「ん?誰と?」
「えっと、バレー部の」
「クロ?」
「うん」
「付き合ってないよ」
そう答えると、彼はフーンと口元を手でおさえた。そんな反応なんて気にせず、春瀬は手元に集中していた。時折ニヤニヤしながら。

授業終了のチャイムと共に、春瀬はすぐに席を立った。
「あ、貴田さん、話したいことが」
すると隣の席の彼が、彼女を引き止める。
「ごめん、急ぎ!?」
「えっいやっ、急ぎ、ではない、かな」
「じゃあ後でもいい?クロに今すぐ届けねばならないものがある…!」
「あ、うん。いってらっしゃい」
「ごめんね後でね!」
そう言うや否や、バタバタと教室から出て行く春瀬。その後ろ姿をぽかんと見つめ、他の男子生徒からはポンと肩を叩かれたのだった。

「黒ぴー、みて!」
嵐のようにやってきた彼女の気迫に若干押されつつ、黒尾は「ん」と手招きして自分の近くへと来させる。
「何を」
「これ、やばい自信作」
「なにが?あ?鶴?これのどこが自信作っ…て、ぶはっ!ぎゃっははは!!なんだこれ!!」
春瀬の手にはテスト用紙で丁寧に折られた鶴が一匹、なのだが。その鶴からガニ股な足が生えていた。春瀬はゆっくりとそれを黒尾の机に置く。
「くっ…待っ…立つのかよ…!ぶふっ…なんで無駄にクオリティ高ぇの…しぬ…」
「自分でも完成度の高さにビックリしてね…」
「ハルさん俺がこういうシュールなの苦手なの知っててやってるだろ!ぶはははっなんちゅーガニ股だよ!!」
「しかもねてちゅろうくん」
春瀬はソッとその鶴を手に取り、ガサガサと紙を開く。
「36点」
「嘘だろ!?!?」
ヒーッとお互い腹を抱えて笑っていると、うるせぇと夜久に頭を叩かれた。
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