四十八手
*時雨茶臼*

ただの上下の運動の筈なのに、中心から頭の芯まで犯される。
腰に力を入れて上げ下げを繰り返す度に、ずっぷずっぷと空気の出入りする音がする。

「もう、無理・・・」

「だぁめ。まだ動けるでしょ?」

へたり込むように、喜助の腹に手をついて風華が根をあげるも、聞き入れてはもらえない。
いつだって風華にとことん甘すぎるこの男は、どうも性行為に於いては甘い、どころか余談を許さない。
科学者故か、はたまた元来そういう性格なのか、快楽を追求することについては一切厭わないらしく、今もこうして四十八手を端から試してみよう、という話だ。
最も、今の体位については四十八手云々以前に、昔からあるものだろうと思う。

一般的な呼び名がある。ーーー『騎乗位』という名が。

そもそも風華自身はこの体位が苦手だった。
下になった喜助を見下ろすという滅多にない感覚に、最初の頃こそ、言い知れぬ快楽を見出だしそうになったものの、実際跨がった後ではどう動いても、彼がしてくれるときのような快感がないのだ。
だから、こうして腰を振っている今も、濡れてはいるものの、絶頂には遠く、先に疲れを覚えてしまった。

「ん・・・でも、喜助さんだって、・・・辛いんでしょう?」

中でビクビクと脈打っている固い楔。
喜助とて、既に限界に近いはずだ。

「まぁね。でも、こうやって風華の綺麗な躰を見上げるのも好きなんだ」

「もう、またそんなこと言って・・・」

そんな言い方は卑怯だ。
甘さと熱を孕んだ視線に耐えかねて、風華は互いの陰毛を擦り付けるように前後に腰を揺らした。
擦れ合う陰毛の先端から伝わるぞくぞくとした感覚に、きゅうと子宮が啼いた。

「今は小雨、かな」

「え?」

「風華のココ、」

喜助は開いた太股に手を宛がって風華の腰を支えた。
そのまま、下から突き上げる。
律動にあわせて豊かな乳房がゆさゆさと揺れているのが分かる。胸の脂肪が弾んでいるせいか、乳房の下部が少しばかり痛い。

「時雨茶臼っていうのは、ココの濡れ具合を表現してるらしいよ」

「っ、あ、」

いつの間にか繁みに喜助の指が滑り込んでいる。
彼女が驚く間もなく、その指先は、くちゅりと風華の濡れた陰核に触れる。そうして、体液の混ざり合う入口をなぞる。

「ひゃ、あ、ァっ、ん、」

「だんだん本降りになってきましたねぇ」

喜助の指先がその芽に触れる度に体の芯がだらしなく涎を垂らしてゆく。
それを指摘されて風華は頬を紅潮させて歯噛みする。

「あれ、また一段と強い雨脚になりましたね。台風でも来たんですかねぇ」

そ知らぬ顔で嘯いている彼が憎らしい。
抗議しようにも、口から吐き出されるのは淫らな雌の啼き声ばかり。

「あ、そこ、だめ、・・・ぁん、ふぁ、・・・ァあ、やんっ」

「もっと、土砂降りにしてみましょうか?」

愉悦に歪んでゆく彼の顔を見ている暇なんて、彼女にはなかった。
洪水が起きるまで、弄ばれてしまったのだから。


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