四十八手
*御所車*

「あの、喜助さん、」

「なぁに?」

「これはどう動くべきなのかしら?」

牛車に腰掛けた婦人の様子を詠ったであろう体位は、主導権は女性側にある。
だから彼女に動いてほしいのだが。
脚を揃えて腰掛ける体勢で繋がった半身を、どう動かしていいか分からないようで、その体勢から風華は固まったままだ。

「ん?風華の好きに動けばいいよ」

「そんな・・・」

無責任だわ、と彼女が僅かに頬を膨らませている。
そんな風華を見上げて仰向けに転がったまま、喜助はつい笑ってしまう。
好きに動いてみて、気に入らなければ止めればいい。
なんにせよ、先ずは行動あるのみだ。

「もう!喜助さん、笑わないで、」

「だって、風華のその困った顔が可笑しくて」

ごめんね、と謝ってみたけれど、笑いながらではやはり効果はないようだ。
風華の腰に手を伸ばす。

「このまま、ぐるっと回ってごらん」

「・・・こう?」

「ん、っ、そう、・・・いいね、そんな感じ」

左向きに腰掛けていたのを、繋がった半身はそのままに180度回転させる。
廻るときの彼女の腰の捻りが、直接喜助の半身にも伝わり肉壁がすれて気持ちがいい。
だが、大きな動きではないので、快楽以上にもどかしさもある。

好きにしてしまいたいが、今日の喜助は車なのだから、彼女の動きに合わせなければ。

だが、そこまで考えて、あることに気付いた。

「牛車だ、」

「・・・?喜助さん?」

また180度体の向きを変えていた風華が、小首を傾げてこちらを見下ろしている。
上になっている彼女が主導権をもって然るべきなのだが。

「ねぇ、風華」

必ずそうあるべき、という答えはないはずだ。
何せ今更当時の性事情に倣う必要もないのだし。

「牛車の牛だって、たまには暴れることもあったと思いませんか?」

「ひゃっ!!やァっ!・・・まって、ァン!」


ならば、こういう解釈だってありだろう。
ーーーーこじつけ?
そうじゃない。人聞きの悪い言い方はしないでほしい。



ただまぁ。
少しばかり、強引なのは認めざるを得ないけれど。



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