2015/12月
12月15日

昨夜から喜助さんが私の後ろをついて回る。
何かすることはないか、ってそればっかり。
ご機嫌取りのつもりかしら。

「風華サン、」

彼の申し訳なさそうな声が耳朶に届く。
この声にいつもならすぐに許してしまう。
でも許してはいけないときだってある。

「もう!放っておいてくださいっ!」

たまにはキツく言わなきゃ。
そう思って付きまとう彼を振り払おうとしたところで、くらりと視界が廻る。
倒れる、ときつく眼を瞑った。
けれど、訪れたのは床への固い衝撃ではなく。

「喜助さ、」

「こんなことされるんじゃ、放置なんか出来ないよ」

眼を開けると喜助さんの腕の中。
見下ろしてくる喜助さんの眼がひどく優しくて、「ごめんなさい」と謝ってしまう。

「どうしてアナタが謝るの。悪いのはボクなのに。無理させてごめんね」

「もういいです。私も今、貴方に余計な心配させてしまったから、お互い様だわ」

結局すぐに許してしまうからダメなのかも。
ああ、また来年も夜一さんに叱られるんだろうな。



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