2015/12月
12月7日

喜助さんの作業中に、部屋でいそいそと編み物をしているとコン、コンと、二回ノックされた。
このゆっくりとしたノックは鉄裁さんだ。

「鉄裁さん?どうぞ、」

「失礼しますぞ、奥方」

鉄裁さんは周りを伺いながら、部屋に入るなり後ろ手に扉を閉める。
その脇に抱えてあるものは、お菓子の雑誌。

「今年のクリスマスケーキはどのようなものにしようかと」

「あら、そう言えばまだ決めてませんでしたね」

毎年子ども達が楽しみにしているそれに応えようとする鉄裁さんの努力は素晴らしいものだ。
料理本の他に、各店舗のチラシまで切り抜いて保存していて、それも候補の対象になる。

「今年はパンケーキが主流なんですね」

「そのようですな。雨殿もこのチラシを見ておりましたぞ」

それはパンケーキを三段に積み重ねたデコレーションケーキ。
去年はジン太くんが騒いでいたのもあって戦隊モノのデコレーションケーキにしたから、今年は雨ちゃんの好きなものにしてあげたい。
ふと、チラシのクリスマスツリーが目に入った。
そうだ。

「鉄裁さん、こんなのはどうかしら?」

鉄裁さんが広げていた料理ノートに思い付くまま書き込んでいく。

「おお!良いですな!それでいきましょう!さすがは風華殿!!では早速材料を調達して参りますぞ!」

そう言って鉄裁さんは張り切って部屋を出ていった。
私も頑張らなくちゃ!



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