2015/12月
12月5日
喜助さんが居ない時間を見つけて、こっそりと編んでいるからか、思っていたよりも進んでいない。
「もうちょっと太く編めば良かったかしら」
けれど今更ほどく気もない。
ほどいて編み直すより、このまま編んだ方が良さそうだから。
「溜め息つくと幸せが逃げるんだってよ。何かあったのかよ」
「ジン太くん。ふふ、平気よ」
「で、何してんだ、ねーちゃん?」
はぁ、と溜め息をついたところを、縁側から顔を出したジン太くんに見られていたらしい。いけない、いけない。油断していたら彼に見付かってしまう。
「編み物」
「へー。なんか面倒臭そうだな」
「ふふ、かもね。でも楽しいわよ」
「野球の方がぜってぇ楽しいぜ!」
そう言って炬燵の上の蜜柑を食べると、ジン太くんはまた縁側から庭へ駆けていこうとするから、その背中を呼び止める。
「あ、ジン太くん!」
「あー?」
「喜助さんには、内緒ね?」
しー、っと指を立てると、ジン太くんはにやりと笑っていた。
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