四十八手
*立ち鼎*

向かい合わせに立ったまま、互いの体を愛撫しあう。
どちらのものとも知れない熱に浮かされ、じっとりと汗ばんだ肌と肌がぶつかり合う。
彼女の首筋に浮かんだ汗の玉が、その首筋から白い豊かな双丘の合間を伝って落ちてゆく。
深い渓谷に消え入る前に、ほんの少し体を離し、柔らかな丘に顔を埋めて、その滴を舐めとった。僅かに塩気が舌に残る。

「風華サン、"鼎"って分かります?」

「んっ、・・・"鼎"、・・・ですか?」

緩く波打つ長い髪を掻き分けて、薄紅に染まった彼女の耳朶を食む。ぴくり、と風華は体を振るわせるものの、それでも思考を止めようとはしない。

「確か、三本足の器のこと、ですよね?」

それがどうしたのか、と訝しげな視線を送ってくる風華の額にちゅっと音を立てて口付けを贈る。
ほんのりと頬を染めて、くすぐったそうに彼女が俯く。
そうして、彼女の気を逸らしてから、徐に風華の片足を担ぎ上げた。

「きゃ!?やだっ、何するの、・・・んっ、やっ、」

既にぐずぐずに蕩けた彼女の入り口に、そそりたった肉棒を擦り付ける。十分に潤ったそこは、はしたない蜜を垂れ流しており、猛った喜助自身にも絡み付いてくる。数回前後に擦っただけで彼女の愛液にまみれ、そのまま誘い込まれるようにくぷりと中に呑み込まれた。

「あーあ、ボクまでぬるぬるになっちゃった」

「あ、んん、そこ、だめっ」

片足を担ぎ上げたことで、風華自身の体重をもう片足の足だけで支えることになったせいだろう。喜助が上に突きあげるように腰を動かしても、風華の体が重力に逆らえずに床に崩れ落ちそうになる。

「・・・まだだよ、風華」

「ぁっ・・・、はァン!」

「ほら、ちゃんと片足で立って?・・・じゃないと、"鼎"にならないでしょ?」


喜助の両足と、風華の片足と。
合わせて三本の足。
その男女の絡み合う姿と"鼎"という字を掛けて、名付けられたのだろうか。
この"立ち鼎"という名称は。


「あ、やァっ!だめ、ンっ、」

「っあ、・・・くっ、まだ、早いって・・・!」

「・・・でも・・・だめっ、ん、あ、あぁッーー!!」

自らより深く喜助を呑み込むことになり、彼女の目の焦点が早々に危うくなる。と、締め付けがきつくなり、そのまま喜助が止める間もなく、彼女の体が崩れ落ちた。




「勝手に一人で気持ちよくなった罰だよ」、と嘯いて結局三回戦まで縺れ込んでようやく一息ついた頃。
彼女を布団の上から抱き寄せて、寝物語に花を咲かせる。
あわよくば、もう一度体を重ねたいと密かに願いつつ。

「ところでね、風華サン」

「・・・はい、」

「"鼎"って、足が四本の器もあるんだって」

「・・・・・・だから?」

「だからって、・・・そりゃあ、ねぇ?分かってるくせに」

「もう付き合いきれません!!」

頑として譲らない彼女が一向に此方を向いてくれなくなり、後戯どころではなくなってしまったことだけが、その晩の彼の心残りであったことをここに記しておく。



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