四十八手
*千鳥の曲*

まるで、琴を弾くように。
爪弾く女の指先で、
踊らされるは男の情欲。
それは、夜伽の合間にだけ響く楽曲。

「・・・んっ、ぁ、・・・ふぁ、」

「ぁ、っ・・・そう、ァ、だいぶ、巧くなったね」

男の股座に踞った風華の髪を大きな掌が撫でた。
口に含んだ大きなそれは、舌を這わす度に、びくりと震えてより固くなる。詰めた息を吐き出す際に漏れ聞こえる微かな男の声にぞくりとする。背中を這い上がるそれは、男を悦ばせることが出来たことへの愉悦であろうか。
はたまた、ともに快楽へ堕ちることへの期待か。
いずれにせよ、まだ触れられた訳でもないのに既に体の中心が熱くなって仕方がない。
嬉しいと思う反面、これ以上固くなってしまうと、風華の口には収まらない。

「・・・っ、ァっ、風華・・・そこ、もっとして?」

「ん、・・・ぁむ、・・・ここ?」

「そう、っう、・・ぁ、はぁ、・・・いいよ、」

熱く猛った楔の根本を擦る。喜助の声が先程よりも少し上擦っている。視線だけを上に向けると、彼が何かに耐えるように苦しげに眉を寄せていた。

「喜助さん、・・・気持ちいい?」

「・・・うぁ、っ、勿論、だよっ、」

でも折角ならこうしてほしいな、と突然体を持ち上げられる。風華が抵抗する暇もなく、彼女の体は喜助の股座から持ち上げられて、その横に座らされた。

「これはね、千鳥の曲っていうんだよ」

彼は熱の混じった一瞥を風華に寄越すと、そっと手を捕らえて自身の胸元へと誘う。

「こうして、ボクの体に触れて?」

「こう?」

胸板と割れた腹筋の筋を辿るように、すうっと指を滑らせる。
男性からすると嬉しくないのかしれないが、均整のとれたその体はいっそ美しさすら感じるほどだ。
するりと脇の辺りまで指をすべらせたときに、伸ばした爪が引っ掛かる。そのときにぴくりと微かに肌が跳ねたのを爪先に覚えた。
触れている此方まで、どきりと心臓が跳ねてしまったのは、何故だろうか。

「んっ、風華、・・・ァっ、あんまり、焦らさないで?」

行き来させる度に、肌がざわめくのが指先に伝わる。
それは爪弾く度に旋律を奏でる、琴の如く。
いつの間にかその感覚に愉しみを見出だしていたのか、つい夢中になってしまっていた。

「あ、ごめんなさ・・・きゃっ!」

手を引かれた。
そう思ったときには、くるりと、視界が反転して、背中は柔らかな敷布に押し付けられていた。

「ふふ、悪いヒトだ」

わずかに陰りを帯びたその美しい翡翠の瞳の奥に、紅く燻る情欲を見た。低く嗤う声に、余興を愉しむ余裕がないことを知る。

ーーー悪いヒト、だなんて。
ーーー貴方が始めたんじゃない。

言葉は胸の内に秘めたまま、薄く笑って彼を求めた。



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