四十八手
*抱き地蔵*

普段余程のことがない限り立ち入りを許可されない喜助の研究室。『今夜、来てくれませんか』と言われて一体何をするのかと思ってみれば。

「・・・喜助さん、」

言いたいことが山のように浮かんだものの、結局返って何も言えずに風華は嘆息した。呆れてものも言えないとはこのことか。
まだ作業の途中なのか、散らかったままの資材をぞんざいに横に押しやって、いそいそとその広い作業台に腰掛けて、彼はこちらに両腕を広げて満面の笑みでこう告げたのだ。
「おいで、風華」、と。
それはそれは穏やかな笑顔で。
こんな状況で無ければ風華とて、その胸の中に飛び込んでしまいたいところだが、穏やかなその笑顔の裏に見え隠れしている下心がある以上、うかつに飛び込めるものではない。

風華が頭を抱えていると、喜助が口を尖らせる。

「なんでこっち来ないんスか、風華サン」

「なんでも何も。何をするつもりなんですか、貴方は」

「さぁ?そういう聞き方をするアナタの方がよく判ってるんじゃないですか?」

「・・・っ、私は何も、」

「ふーん?じゃあこっちに来て下さいよ」

おずおずと歩みを進めて喜助に近寄る。彼との距離があと数歩というところまで近付いたところで、抱き上げられる。

「きゃ、」

気づけば既に彼の上に股がっている体勢。
焦げ茶色のフレアスカートが捲れあがり、そのスカートの中に喜助の掌が滑り込む。

「あ、やっ、まって、」

止める合間もなく、ショーツの隙間から指が侵入し、敏感な芽に触れる。それと同時に白いニットをたくしあげていたもう片方の掌がブラを引き摺り下ろす。
ぷるんと柔らかな乳房が弾み、外気に晒される。

「美味しそう、」

「や、っ、・・・ひゃん、だめ、ァん、」

ちゅうちゅうと幼子がするように乳首に吸い付かれる。
時折舌でねぶるものの、歯は立てずに強く吸われる。

「あ、・・・や!あぁっ、・・・んん、」

「ね、知ってます?・・・地蔵って、もともと胎児を表すんですって」

「はあ!ァあ、・・・やん、」

「こうやって抱き付いてくる風華のことなのか、」

喜助の首に腕を回し、しがみつく風華の中を、ぐちゃぐちゃと猛ったモノが掻き乱す。それに合わせて収縮する膣内の痙攣をやり過ごす為に、彼女は無意識に喜助の腰に脚を絡めていた。

「それともこうやって、アナタの母乳をねだるボクのことなのか、」

ぴちゃぴちゃとわざとらしく濡らした舌で音をたてながら、彼はその熱い舌で、風華の桜色の先端を何度も舐める。
舌が掠める度にぴくんと肩が跳ねてしまう。 

「ね、風華はどっちだと思う?」

「そんなこと、」

分からない。分かるはずもない。
文献に残っているようなことでもあるまい。
ただ、今彼女に言えることもある。
感じたまま、思ったままに。

「どっちも、でしょう?」

「どっちも?」

喜助のしがみついて、もっともっととねだる己も、
幼子のように胸に刷りよってくるこの男も、
どちらも子供ではあるまいか。

喜助が舌と腰の動きを止めて、抱えあげた風華と眼を合わせる。

「・・・違いますか?」

「いいね、悪くない」

ふっと、視線を和らげて笑う喜助にどきりとした。
心臓が跳ねるのと同時に、きゅんと膣が哭く。

「ふふ、風華のココはそれじゃ満足できないみたいだね?」

「ち、違うの、っ!・・・ぁ、ああ!ん、やっ!」

言うなり激しくなった喜助に煽られて、彼女は結局腰が痛くなるまで行為に付き合わされた。
翌朝、腰を庇いながら家事に勤しんでいた彼女が、"抱き地蔵の意味は地蔵を抱えるために腰を痛めてしまった相手を表したものではないか"と思い至ったことを、喜助が知る由もなかった。


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