四十八手
*梃子がかり*

『筏流し』もしくは、『逆さ浮橋』

そんな名称でも呼ばれるこの体位は、果たしてどういった経緯で生み出されたのかが甚だ疑問である。
それは曾て十二番隊隊長兼技術開発局局長を努め自他ともに認める類い稀なき明晰な頭脳を持った浦原喜助をもってしても、である。
散々に頭を悩ませた。
この体位の為だけに特殊な薬でも飲むべきか。
しかし、それでどうして彼女を満足させよう?
けれど、今のままでは、どうしたって、痛みを伴うものだ。


「はぁ、っん、喜助さん?」

掠れた吐息で自身の名を呼ぶ風華の声に、喜助は我に返った。

「ごめんなさい、その、あまり得意じゃなくて」

「・・・ん、そんなことないよ」

今、彼等は、女性が下になるシックスナインの体勢をとり、喜助が上になっていた。
寝転んだまま、喜助の竿を撫で上げていた風華が申し訳なさそうにしているが、そんな必要はない。
喜助のそれはもう十分過ぎるほどに猛っている。

「十分だよ」

しかし、だからこそ問題なのである。

「・・・喜助さん?」

ずりずりと風華の脚先へと前進した彼を訝しげな声が追ってくる。
ふう、と息を吐き出して腹に力を入れる。

自身で根を持ち、腹につくほどに反り上がったそれを強引に下に下げる。

「・・・っ、」

「ゃん」

「風華、どう?入った?」

「ん、入ってる、けど」

ゆっくりと腰を下げてみた。
だが、数回動いただけで、抜けてしまった。
何より、痛い。
驚くほどに。

「・・・はぁ、やっぱりダメか」

むくりと、喜助が起き上がると、風華もシーツを巻き付けながら体を起こした。

「どうしたんですか?」

睫毛をぱちぱちと瞬かせたままに、きょとんとした視線をこちらは向けた。


「ああ、それがね、」

喜助は頭をばりばりと掻きながら説明をした。

梃子がかりという体位に挑戦しようとしていたこと。
そうして、それが猛った半身ではどうにも挿入しづらいこと。

「それは・・・確かに難しそうですね。というか、それ、痛くはないんですか?」

「うん、実は・・・すごく痛い」

そうなのだ。彼女の言う通り、上に反り返ろうとする半身を無理矢理押さえ付けている為、動くだけで折れてしまいそうな程。いくら愛しい彼女の中に埋っているとはいえ、すっかり萎えてしまっている。
くすくすと笑い出してしまった風華に頭からシーツを被せる。

「きゃあっ!?」

「風華サーン?なーに笑ってるんスかぁ?」

もぞもぞと動いて脱け出そうとする彼女を抑え込む。
おそらく彼女は『喜助さんでもそんなことあるんですね』なんて思っているのだろう。

故人は果たしてどう愉しんでいたのか。
せめて文献なり、何なり遺しておいて欲しかったと、こんなことでそんなことを思う日が来ようとは思いもしなかった。

苦労した割りに、得るものもなく。
たまには、そんなことがあってもいいのかもしれない。
喜助は、そうして無理矢理自身を納得させておいた。




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