st.V事件
王元姫
「子上殿、これあげる。」
昭
「お?なんだ?」
手渡されたのは小さな箱。
昭
「はは〜ん。チョコだな。」
王元姫
「残さず食べてよ。」
鐘会
「司馬昭殿、それはなんですか?」
厄介な奴が来た。
昭
「ああ、元姫が俺にチョコくれたんだ。」
鐘会
「ほう、バレンタインか。ならば、私ももらってやらないでもないぞ。」
王元姫
「何言ってるの?私が作ったのはこれ一つだけよ。」
鐘会
「なっ!」
王元姫
「貴方の分があるわけないでしょ。」
鐘会
「くぅー私に恥をかかせたな!覚えておけ!」
鐘会立ち去っていく。
昭
「元姫が冗談言うなんて珍しいな。」
王元姫
「冗談?」
昭
「これ一個だって。」
王元姫
「本当よ。」
昭
「え?」
王元姫
「何?」
昭
「お前、いいのかよ。」
王元姫
「・・・・は?意味わからない。ちゃんと食べてね。」
王元姫去っていく。
昭
「まったく。」
翌日
昭
「元姫、この書類なんだが・・・減らない?」
王元姫
「しょうがないわね、私も手伝うから。」
昭
「おお、助かるぜ。」
王元姫
「で?あれは美味しかった?」
昭
「ん?なんだっけ?」
王元姫
「だから、昨日あげた。」
昭
「ああ、あれな。」
この男、とんでもないことを告げた。
昭
「兄上にあげた。」
王元姫
「・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!?!!????」
あまりにも驚きの事だったため、
元姫も気が動転した。
気が付いたら、昭の胸ぐらを両手でつかんでいた。
王元姫
「子上殿!バカなの!馬鹿よね!どこまで大馬鹿なの!!!」
昭
「本当に食べてほしい人のところに届けただけだろ。」
王元姫
「余計なことしないで!」
昭
「余計なことか?」
王元姫
「何よ!食べたくないならそのまま捨てればよかったでしょ!」
昭
「元姫落ち着けって。」
王元姫
「・・・・・。」
昭
「顔真っ赤だぞ。」
王元姫
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
昭
「それに。」
王元姫
「何?」
顔真っ赤にしながらも怒っているよ。
昭
「兄上が欲しいって言ったんだ。」
王元姫
「・・・・・え?」
昭
「俺だけがもらったって自慢したら取られた。」
王元姫
「なんで?」
昭
「それは本人に聞けよ。聞けるならな。」
王元姫
「・・・・・・・・・そうする。」
昭の襟から手を離し、部屋を出ていく元姫。
昭
「やっと正直になったか。って、書類手伝ってくれねぇ〜。」
行く場所は師の書斎。
そこに彼はいた。
王元姫
「子元殿、失礼してもよろしいでしょうか?」
師
「元姫か、構わない。」
部屋に入る元姫
意を決してその姿を見ると・・・・再び固まった。
右手には筆、左手にはチョコ。
王元姫
「子元殿・・・それ。」
師
「ん?あぁ、すまぬな。昭が見せびらかすものだから。」
王元姫
「い・・いえ。」
師
「元姫。」
王元姫
「は、はい!」
師
「やはりお前のチョコはうまい。昭から奪って正解であった。」
王元姫
「そ・・・そうですか。喜んでいただけたのであれば。」
師
「来年は、昭だけでなく私の分も作ってくれると嬉しいな。」
天にも昇る言葉・・・。
王元姫
「はい!」
師
「時に、」
王元姫
「はい?」
師
「このチョコレートを肉まんに混ぜることはできないか?」
王元姫
「・・・・・・・な、中身をチョコレートにすれば・・・なんとか。」
師
「今度はそれが食べたいのだが・・。」
王元姫
「今すぐ作ってまいります!!!」
その視線に耐えられなくなり、部屋を出ていく元姫。
幸せの時間だった。
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