父上に休日を

「では、私は暇を頂きます。蘭丸、信長様のことよろしくお願いします。」
「はい!光秀様。」

奥方と二人、美濃へ里帰りをする明智。

これはあの娘が信長に頼み込んだからなのです。
「蘭!」
「あぁ、ガラシャ様」
「またわらわに様を付けたな。」
「あ。」
「まぁ、良いのじゃ。それより蘭。今日はチャンスじゃ。」
「はい?」

張り切るガラシャ。
そのテンションに蘭丸はついていけないでいる。
ガラシャは蘭の手を引き、
とある場所へ連れて行った。



「ねね、蘭を連れてきたのじゃ。」
「おねね様?」
連れてこられたのは台所。
そこにはねねがいた。
「本当に連れてきたんだね。すごいよガラシャ。」
「早速始めるのじゃ!」
「でも本人に見つからないかい?」

始める?本人?????

整理がつかない蘭丸をよそに話を進めてしまう女二人。

「蘭、チョコレートを作るのじゃ。」
「チョコレートとはなんですか?」
「如月に大事な人に贈るお菓子なのじゃ。」
「お菓子、ですか。私が誰に?信長様。」
「父上にじゃ。」
「光秀様に!?」

この想い、何故見透かされたかと戸惑う蘭。

「ガラシャ様、まさかこの為に光秀様を。」
「そうじゃ。毎日激務で忙しかろう。
わらわの行動はいつも父上が見ているからの。」

かわいい顔をしてなんて策士。
親譲りなのか。

しかし、自分がガラシャの手伝いをするために呼ばれたとも解釈できる。

「わかりました。蘭が全力でお手伝いいたします。」
「蘭丸やる気になったね。とびきりおいしいの作るよ!」
「作り方はねねがよく知っておる。では、始めるのじゃ。」

こうして三人の秘密の作戦は始まったのである。


「とても甘いのですね。チョコレートとは。」
溶けたチョコを一舐めした蘭は目を丸くした。
「な、蘭。美味であろう。」

話によると、ねね殿は毎年秀吉に作って贈るという。

「しかし、溶かしたここからどうするのですか?」
「これは冷やしたら固まるんだよ。だから、好きな形の型に流し込んでやるのさ。」

ねねが取り出してきた数々の型は、大きさもたくさんあるようだ。

「凄いですね。ガラシャ様、どれにしますか?」
「そうじゃのぉ。」

二人で悩み始める。
その背中をかわいく思うねねだった。
(うちの子達もこうやって仲良くすればいいのに。)

「蘭!明智の家紋の型があるぞ!」
「ああ桔梗ですね。これにしましょうか。」

二人で悩んだ結果桔梗の形にチョコレートを流し込むことになった。
蘭が型を押さえ、ガラシャがチョコを注ぎ込んだ。

夕暮れになり型から外すとチョコレートは綺麗に固まっていた。
「冬は冷えるから、固まるのも早いんだよ。」
ねねも一緒に四つ葉の形にチョコレートを固めていた。

どれも綺麗に出来上がり、
3人とも満足したようだ。

「後は、当日に渡すだけですね。」
蘭は笑顔でガラシャに話す。

「後はこれを綺麗に包んで父上にあげるのじゃ。
ちゃんと手紙をそえるのじゃぞ、蘭。」




え?




やっぱりこれは、蘭のためのチョコレート作りであった。


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