※一個前の話のおまけ的シチロウ過去話
途中若干の愛なし性的表現がでます。苦手な人はバックでお願いします。





「ねぇカルエゴくん、最近ナマエちゃんと連絡とった?」

「は?なぜ私がナマエに連絡しなければならないのだ」

眉間にシワを寄せて、こっちに視線すらよこさないで目の前の書類をカルエゴくんは片付けてる。

なんでって……だってナマエちゃんはカルエゴくんのこと好きなのに

「そっか」


卒業してからナマエちゃんとはお互い別々の進路に進んで、なかなか連絡をする機会もない。それこそ最初はナマエちゃんから何かと連絡が来ていたけど、少しの時間が経てばそれもどんどん間隔があいて今では無くなった。
カルエゴくんの近況が知りたいのかも。と返事はするけども、僕から送っても仕方がないよねって自分から連絡するのは辞めていた。

ナマエちゃんから連絡がなければ
あっさりと途絶えてしまう関係性に胸が傷んで、もしかしたらカルエゴくんとは連絡してるのかなって聞いてみたけど違ったみたいだった。

あんなに、ナマエちゃんカルエゴくんのこと好きだったのに

少し照れたみたいな、頬を染めて俯くナマエちゃんの横顔を思い出して

鬱々とした気持ちに支配される。


カルエゴくんにならって……必死に思いこめてたんだけどな





久しぶりの歓楽街は相変わらずガヤガヤと五月蝿くて
仄暗い路地を抜けて大通りに出ると眩しいほどの喧騒の高低差に目眩がする。濡れた手袋が気持ち悪くて、さっきまでの行為を思い出して乱暴に手袋を外す。

卒業して、所謂オトナな場所にも出入りできるようになった。
悪周期対策のために見てみぬふりをされているエリアで女性を買った。
途中でキレちゃったけど、まぁいいかとさっき会ったのに顔も名前もいまいち覚えてない彼女のことを脳内で雑に扱う。

伸びきった髪と学生の時より少し大きくなった身体。はめたマスク。そんな男が「君は何もしなくていいから触らせてくれ」と言えば、あからさまにラッキーって顔をして承諾してくれた。

オプションで幻覚できますよ。なんていうから、とりあえず聞いてみたら
なんでも望んだ相手とヤッてるように見える幻覚魔法がオプションでつけれます。って張り付けた笑顔で言うから
高額なソレになるほど、とも思いつつ
それはいらないって言えばちょっと残念そうに「わかりました」って彼女はいった。

余裕しゃくしゃくだったのに、30分もすれば顔が涙とヨダレでぐちゃぐちゃになってて、ちょっと悪いことしたかな?ておもったけど気持いいってうわ言みたいに言うし、お金払ってるからいいかなって思って
とりあえず壊さなければいいかって最大限配慮しながら触れた。

彼女の中で限界の閾値を軽く超えてしまったからなのか
踏み込んだことのない快感に恐怖を覚えたのか
僕が真顔でちっとも興奮してないのも要因かも

"オプション"をこっちの了承もないままつかってきて

好きな人相手だったら優しくしてもらえるって思った?

そんなクソみたいな理由で


快感でトんでだらしのない"ナマエちゃんの顔"で「もぅ、無理ぃ」なんて言うから


ナマエちゃんを汚すなって
ブチ切れて壊れるまでやってしまった。
一瞬ドキリとした自分すら殺したくなったのに、ナマエちゃんの顔でそんな顔するなよって
静かにガチ切れしてしまった。最後は呂律の回らない「ごめんなさい」と「きもちいい」しか話さなくなった人形みたいになっちゃって
まぁお金払ったし、相手はプロだしなって

でもまぁ、もうこれで触りたいだけ触ったし
どれだけしたら壊れるかもなんとなくわかったから

もう二度とないかなって

こんなもんかって


古くなってたから変えようと思っていた手袋を雑に外して
新しいのに付け替えた


「あれ?バラムじゃん」

キュッと手袋を馴染ませていると、目の前から声をかけられて

「え、てかでかくなってない?」

その姿に一瞬であたりを視線だけで隅々まで把握する

「久しぶりだねぇ」

「うん」

期待していたナマエちゃんの姿はなくて
目の前の彼女はナマエちゃんと一番仲が良かった子だったからもしかしたらっておもったのに。と心の中だけでガッカリする。

当たり障りのない近況を話し合いながら、なんで僕に話しかけてるんだろう。と推測する。
ナマエちゃんと仲がいいだけで、僕ともカルエゴくんともこの子はたいして喋ったこともないのだ。

「最近ナマエと連絡とってる?」

「え」

脈絡なくでてきたナマエちゃんの名前に

「ううん、ナマエちゃんも最近忙しいみたいだね」

「そっかー、そうみたいなんだよねぇ」

目の前の彼女は、どうして

「なんかさぁ、職場の人に告白されたから付き合うかもってこの前あった時に言ってたんだよね」

「へぇ……」

なんで僕にそんな話をするんだろうか。
探る様な目で僕を見る彼女は、悲しいけど嘘なんか一つもついてなくて

ふつふつと

感情が沸き立つ

「ナマエちゃんに内緒で、僕にその話ししていいの?」

「え?あー……」

目線を泳がす彼女に

「ちなみにどんな人なの?」

なんていたずらっぽく聞けば

「んー、でもランクも上で男らしくて普通にいい人ってナマエはいってた」

「そっかぁ」

"普通に"なんかじゃ、ナマエちゃんには釣り合わなくない?

「ナマエには好きな人と結ばれてほしいなぁって」

「そうだね……ナマエちゃんには、幸せになってほしいよね」

幸せに、してくれる人でないと

「本当に……そうなの」

懇願するように、強い瞳でこちらを射抜く彼女に

ああ、もしかして

「そういえばナベリウスは元気?」

「元気だよ」

「そっか」

彼女の口からでたカルエゴくんの名に

「ナベリウスはまだ彼女とかいないの?」

「いないよ」

「そっか……バラムは?」

「いないよ」

「そう」


うん。僕も同じ気持ちだよ

大丈夫


やっぱりナマエちゃんの相手は半端な男じゃダメだよね

ナマエちゃんのことが大好きで
ナマエちゃんもその人が大好きで

ナマエちゃんを守ってあげれるくらい強くて

かっこよくて

ナマエちゃんを幸せにできる男じゃないと



そうじゃないと


ああダメダメ、殺すのはダメだ

あとが面倒だし


優しくお話してみて相応しくないならナマエちゃんの前に二度と現れないでって
優しくお願いするだけだから

そう、それだけ

不思議なくらい思考は落ち着いてる。












「来年度の教員採用に、ナマエの名前があったんだか」

「ナマエちゃんならいい先生になりそうだよね」

「お前……」

「ん?」


泣きそうな、思い詰めた顔で自分に教職が務まるんだろうかと悩むナマエちゃんは本当に可愛かった。
あれこれ理由をつけて悩む彼女に

「ナマエちゃんならいい先生になれると思うよ」って優しく言えば
『そうかな?』って照れたようにはにかんで『じゃあ、頑張る!』って笑った。

僕が作った囲いに自ら足を踏み入れてくれるナマエちゃんが可愛くて、僕の言葉を励みにしてくれる真っ直ぐなところも大好きで

これでずっと一緒にいられるっておもった

一番近い場所じゃなくても

ナマエちゃんの傍にいられるならそれでいい


カルエゴくんならナマエちゃんを幸せにしてくれるはずで

あんな半端な男に二度と手出しはさせない

ナマエちゃんが少し余所見をしても、この囲いから彼女を出さないようにすればいい


だから大丈夫

僕は傍にいられるなら、それでいいんだ


そうやって僕は今日もナマエちゃんの幸せを願っている。




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