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今日は土曜日で私は午前中仕事で
紫さんも用事があるみたいだけど、お昼過ぎに終わるから
デートしよう。と言うことになった


仕事もあったし、化粧はそんなにガッツリじゃなくて
服はちょっと綺麗めな感じで、靴はスニーカーじゃなくてぺたんこだけどパンプスにした。
ほんと、仕事の後だからと適当な服にしなくてよかったと。心底思う。
なんなら化粧もうちょっとちゃんとしたらよかった。荷物になるからってリップとフェイスパウダーしかカバンにはいってないだなんて悔やまれる。

だって、まさか紫さんが今日はいつもにましてかっこいいなんて予想してなかった。




「あ、ナマエちゃん」

駅前の本屋さんでファッション雑誌を読んでいる紫さんを発見すると、彼もこちらに気づいてくれた。

『紫さん!おまたせしました!』

「いやいや、ナマエちゃんお疲れ様」

すっと雑誌を棚に戻す紫さんは、あまりにも様になっていて格好良い。

『今日お仕事だったんですか?』

「んー?んー。まぁちょっと」

『スーツかっこいいです!』

「やっぱり?」

かっこいい!やっぱり?って!ヘヘって笑ってるのかわいい!

用事があるとは聞いてたけど、まさかスーツだとは
紫さんの職場は、服装はなんでもいいらしく普段はわりとカジュアルな感じで出社しているらしい。
ただ、私と仕事終わりにご飯に行くときは綺麗めな服を着ているからお仕事の時はやっぱり綺麗めなのかなーって思ってたら
「そっちの方が仕事の後って感じでよくない?ナマエちゃんも好きかなーって」なんて言うから
思わず『はい、好きです』と即答してしまった。

だから、ちゃんとガッツリスーツっていうのはなかなかレアだ。

私も服綺麗めにしてよかった。
あー、やばい。かっこよすぎる。
髪もいつもよりちょっと艶感強めにセットされてて、清潔感と色気のバランスがやばい。



「お昼食べれた?」

『終わるの遅くて…でもプロテインバー食べたんで大丈夫です!』

「それ大丈夫じゃなくない?」

『紫さんは?』

「俺は軽く食べたよ。ナマエちゃんお腹空いてないの?」

『大丈夫です!あ、夜早めに食べてもいいですか?』

「もちろん。じゃあとりあえずちょっと回ろうか」

『はいっ!』

スッと紫さんが腕を出してくれたから、それに自分の腕を絡める。
普段より滑らかな感触のスーツの生地が新鮮で、そしてふわっと爽やかな香りがして

なんだか擽ったい。


紫さんのスーツ姿本当にかっこいい。
かなり久しぶりに見たな、そういえば前見たのはたしか友達の結婚式に行ったて写メが送られてきたときくらいで
それを除けば、


紫さんが告白してくれた時以来だ。
ジャングルジムの上で……

ブワッとあの時のことが思い出されて
少なくない月日が流れたのに、鮮明にあの時のことは思い出せる。
あれからいくつもの季節を紫さんと一緒に過ごした
温かい気持ちで胸がいっぱいに満たされていく。

自然と腕を組むのにもなれて、この暖かさが心地良い

足元をみれば、紫さんの革靴と
私のぺたんこのパンプスがおなじ歩幅で動く。

斜め上を見上げれば

「ん?」

紫さんが優しく笑って

ああ、なんて幸せなんだ。
紫さんと一緒にいられるだけで幸せを感じる。
ずっと隣にいられたらいいな。








「お疲れ様」

『はい、お疲れ様ですっ!』

グラスに口をつけると、シュワッと喉を通る金色の液体に仕事の疲れもふきとんだ。

『おいしいです』

「久しぶりにシャンパン飲んだよ」

最近はお家デートが多かったのと
紫さんはスーツだし、わたしも綺麗めな服だったので
ちょっといいところに行こっか。なんて言われて
普段あまり行かないような、フレンチのお店に行くことになった。

お料理もワインも美味しくて、ついついグラスに手が伸びる。
ほろ酔い気分の中あまりにも紫さんがニコニコと楽しそうで、それが明らかに美味しいディナーのせいだけじゃないのがわかった。
普段もわりと紫さんは楽しそうだけど、こんなにそわそわした感じは珍しい。


なんだろう。
もしかしてなにかある?
めっちゃ雰囲気いいお店だし。


チラッと酔った脳裏によぎった思考を慌てて振り払う。
いや、違うよね?うん。
だって、紫さん全然そういう話しないし。
今日べつに記念日でも、誕生日でもない日だし。
うん、落ち着け、私。



『美味しいですねっ!』

「うん。ワインも合うし、よかった」

美味しいご飯を食べながら伺うけど、やっぱり表情がいつもよりこう、なんか嬉しそう?

『紫さん、今日いつもより楽しそうですね』

「え?」

『あ、えっと何かいいことありましたか?』

一瞬キョトンとした顔になって


「あー、ナマエちゃんにはわかっちゃうのかぁ」

ヘラッと笑う紫さんが可愛らしい。

「本当はまだ秘密にしとこうかなって思ったんだけど」



何を紫さんが言おうとしているのか、
全く想像がつかなくて





「俺、宇宙飛行士になる」



笑顔でそう言う紫さんに

まるで時が止まったかのように目が離せなかった











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