02






帰りの乗車率の高い電車でぽーっと紫さんに寄りかかるように立って
さっきの紫さんとの話を酔った頭で思い出す。



『え、宇宙飛行士、ですか?』

「うん。まだ試験受けてる段階なんだけどねぇ」

『それは……』


めっちゃかっこいいですね!おもしろそう!


やってしまった。
なんか変なスイッチが入ってしまって

宇宙飛行士なんて、自分の現実的な選択肢になさ過ぎて
つい、募集要項とか試験内容とか根掘り葉掘り聞いてしまった。
宇宙飛行士の人って、多国籍から集まるし閉鎖的な空間での生活だろうし
なんだか聖人君子みたいな人格が出来上がった凄い人のイメージすぎて
いや、まぁ紫さんも冷静に考えれば
むちゃくちゃ優しいし、気遣いできるし
楽しいし、かっこいいし。
あれ?もしかして紫さん聖人君子なの?


俺、宇宙飛行士になる。って

く、あの、さらっと軽い感じで言う紫さんかっこいい。
なりたくて、なれるもんでもないだろうになるって決定事項なんだ。
かっこいい。
でも何となく、紫さんならなんの違和感もないな、なんて思って。


「本当は、宇宙飛行士なってからナマエちゃんに言ってびっくりさせようと思ってたんだけど、もう試験からドキドキワクワクしてさぁ我慢できなかったよ」


やっぱりこの楽しさはナマエちゃんと共有しといて正解だわ。なんて笑顔で言われたら
もうそんなの

好きすぎる。


でも、宇宙飛行士ってどうなんだろう。
JAXAってことだよね?
そもそも普段どこで何してるか謎すぎる。
ネットで調べたいけど、紫さんの前で調べるのはちょっと違うし。
とりあえず今はせっかく紫さんと一緒なんだから、紫さんと話がしたい。

宇宙飛行士になったら。は、本当になったら考えたらいい。よね?うん。たぶん。
とりあえず今はこのふわふわした気持ちよさに包まれていたい。



最寄り駅について、2人ならんで電車から降りる。
地下鉄のホームは何だか生暖かくて身体にまとわりつくようだった。

土曜日の晩。ざわざわと人の波をすり抜けて改札を出ると
散り散りになる人の群れに、なんだかやっと一息つけた気がした。
明日はお休みなので紫さんの家に二人で向かう。
紫さんの革靴の音が、いつもと違う音で少し響いている。


「今日さ、試験で前の人と話したんだけど話しやすくて仲良くなったんだよね」

『そうなんですね』

さすがコミュニケーションモンスターだな、紫さんは
宇宙飛行士の試験を受ける人かぁ、きっとその人も凄い人なんだろうなぁ。

「次の試験、まだ先らしいんだけど何日間か試験が続けてあるみたいだから今からすっごい楽しみなんだけど」

『泊まるって事ですか?』

「んー、みたい」

『へぇ。たしかに、宇宙だと集団生活ですもんね!』

「そうそう、だからその間連絡取れないけど頑張るね」

『そうなんですね…わかりました!待ってます!』

「うん!ありがとうナマエちゃん」


楽しそうに話す紫さんを見てたら、なんだかこちらまでわくわくしてしまう。
本当に紫さんは素敵な人だなぁ。と

好きだなぁ。なんて呑気に考えていた。



紫さんの家についてソファーに2人でぽすんと座る。
家まで歩いて少し酔もさめたけど、家についた安心感でもうこのままお布団に包まりたい。
とりあえずラフな格好になりたいから、シャワー浴びて部屋着に着替えたいなぁ。なんてぽやんとした頭で思っていると

わたしの右手に紫さんの指が絡まった

『紫、さん?』

「ナマエちゃん」

熱っぽい瞳で見つめられて、紫さんが近くて彼の体温が感じられる距離。
ゆっくり目を閉じると
チュッと唇に柔らかく紫さんがキスをくれた。

『んっ、ふ』

少しずつ深くなるそれに、またアルコールがぶり返したみたいに頭がふわふわする。

『ぁっ!ん、ふぅ…』

服の上から紫さんのおっきい手で優しく胸を擦られて身体が揺れる。
じわじわと身体が熱くなる。


『ぁっ、紫さんっ』

「んー?なあに?ナマエちゃん」

『あの、お風呂……』

このまま熱に浮かされたいけど
いつもエッチな事をするときはシャワーを浴びてからだからそう言ったのに


「ん?ナマエちゃんスーツエッチしたくない?」


なんてクイッとネクタイを緩めながら紫さんが意地悪く言うから


『んっ、したいです』


熱に浮かされて恥ずかしげもなく
私はそう答えてしまった。














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