GHOST FLAME | ナノ


「ミワちゃんって、クラサメくんのこと、すき、だよね」
「え、…ええぇ!?どど、どうしたのシア!そんな好きって、たしかに仲間だし…!」
「…レンアイの話だよ?」
「ヘゥッ!?」

ミワちゃんが纏う空気も変わっていた。確信が持てた頃に、胸の中にストンと腑に落ちる音がした。
なんとなく、恨みも妬みもなく、しかたのないことだと感じた。
彼女がクラサメくんを好いているとわかっていた。

「私もね…好き、なんだ。ずっ…と前、から」
「…うん、知ってた。で、でも、別に私横から取ったりとか…!」
「…?」

真っ赤な顔で手をブンブンと振り、わざとらしげに今日の気温について話し始める彼女の純粋さと言ったら。
なんだか今までの自分がイノシシのようだ。まさしくイノシシだったのだ。

「ね、別にミワちゃんのこと、何かして遠ざけようとかそういうのじゃないの。あのね、そのままクラサメくんのこと好きでいて」
「ええ!?」
「私、最近張り切りすぎてたみたい。でもね、一つ気がついたことがあるのよ。彼を好きになる人は増えても増えても嬉しいの、それは、ミワちゃんもそう」

わけも分からずきょとんとしているのが彼女らしいというかなんというか。
落ち着いたであろう彼女の手をとって、話を続けた。

「だから私ね、彼のことが好きなあなたのことを尊敬してる。アオイさんも、他にもクラサメくんのこと好きな人のことも。尊敬したうえで、フェアにライバルとして見てるよ」
「そ…っか…?」
「…わかってないでしょ…」

少しブスくれた顔をしてやれば、慌てる表情になって目をそらす。

「で、でも、私みたいなが、ガサツな女よりも、シアのほうが人気あるし〜!」
「人気…?」
「知らない?あ…張り切りすぎてたんだっけ。最近クラスにいないもんね〜!」

そこからは普通の女の子のような会話をした。
今まで焦って思い込んでいたのが馬鹿のようだった。

「そんなことを?」
「うんうん〜クラスの男子からも票高いんだよ〜」
「知らなかったわ…」
「ね、たまにはお休みの日作ってね、クラスにおいでよ!」
「そうするわ。気になる話もあるし…ね?」
「あ、あの…私の方はそんな…話はその無いっていうか」
「言ってもいいのよ〜?」
「ああもう、しっつこ〜い!」

誤解が解けたり、心についてた重しが落ちたり、とにかく気を晴らすことができた。今度のダンスパーティは譲るだの何だの、くだらない話もした。

「あ…いたいた。おおい、シア!ミワ!次行くぞ!」
「噂をすれば、ね」
「ホントだ〜」

テラスに来たのはその噂の彼で、二人で嬉しそうに彼を迎えた。当の本人はこんな上機嫌な理由に検討もつかず、訝しげな表情をしていた。

「なんだよ?二人して」

そんな鈍い彼に対して、私達は秘密だと言って、女子らしく手を繋いでその場から逃げた。
私は重い荷物を取り払えたことで、最終決戦への道のりを歩み始めた。



また裏切りだった。
仲間に優しい彼の心が痛むのを見て、また私も心を傷めた。
しかも今度は四天王と謳われていたメンバーのうち、裏切り者は二人だった。
先に立った者、後から刺してくる者、どちらも仲間と国とを天秤にかけて考えた結果だった。

私は、やっぱりクラサメくんの隣についた。
今度こそ君の心を守れるようにと。裏切り者二人を連れ戻せるようにと戦ったが、結果、

「とど、かない」
「ミワちゃん…おねがい…」
「クラサメくんを…」
「守って…」

私の魔力は底をついていた。
援護魔法を使いすぎた。攻撃魔法も、回復魔法も。
オールマイティに使えるようになったのが仇になった。
わたしはせめてと、とっておきのおまじないをかけた。
力及ばず、彼だけにかかった最後のおまじない。



「死な、ないで…」



忘れないで欲しい。
あなたはたくさんのひとに想われ、愛されていたこと。
そのなかに私やミワちゃん、彼らもいたこと。
そのみんなに自分が愛されていたこと。
それだけは、それだけは忘れないで欲しい。


私の意識はそこで途絶え、次に目が覚めたとき、宙に浮いて独りぽつんと雪景色を見ていた。





《死んだら、直前のことくらいは覚えているものなのかしら?私は、なぜかミワちゃんのことだけは覚えてる…。他の二人も、隊長さんも覚えてないのにね》

話した内容は鮮明に、昨日のことみたいに覚えているものもあれば、すっぱりと切り落とされたみたいに覚えていないものもあった。
でも、だんだんと薄れつつるのも確かで。

《きっと…ヒントなんだよね、これは》
「ヒントだぁ?」

面倒そうな声を出すくらいなら、聞かなければよかったのに。
シアはくすりと笑う。

《私の存在意義への》
「なるほどね、随分ポジティブなユーレイになったな」
《褒めてるのよね?それ》

カガリはそれ以上は聞かなかった。
きっと疑問に思って追求したいところもあっただろうに、口を挟まず最後まで聞くこと自体珍しい。
彼なりの優しさに感謝して、私は薄れつつある思い出たちを大事に大事にしまいこんだ。


流れる世界に身を委ね




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