あの風呂の一件いらい、稽古が厳しくなった。あの場に居合わせた淡島は、「とーちゃん守るんなら鍛えときゃな!」という物言い。
その後は、イタクからのノルマもレベルが上がり、上級者向けの技も取得するよう言われている。
散々な毎日を過ごす中で、あまり近寄ってこなかった雨造が頻繁に話しかけてくるようになった。なぜかは知らないが、よく世間話をするようになっている。
たまに雨造が練習相手になっているので、ありがたい。
そんなことがある今では、体力も相当付き、練習試合では、雨造に十回勝負で全勝するなど、結構な成長も見られてきている。
しかし、雨造はそれが納得いかないのか、毎日「勝負しろ」と鬱陶しいくらいだ。
そういえば、今はもう大正の後半だろう。東から戻ってきた妖によると、「奴良組」の急成長が観れると報告が上がったらしい。
それを聞いた鯉乙は、そろそろ鯉伴が死ぬのでは……という予想が頭を過る。
(リクオが生まれる前には、少し様子を見ときたいな……)
「後で赤河童様にお願いしてみるかな」
そう言った鯉乙は、両手いっぱいに洗濯物を持ち、光の当たる場所へと足を進ませた。