変わった少女 [ 102/156 ]
しつこい「私」に対して少女は明らかに怒っているが少しでも反応してくれたのが嬉しかったのか、「私」は嬉嬉としてマギルゥに似た少女に話しかけ続けた。
「ねーねー!!」
「うるさい!なんなんじゃお前は!?」
まるで年寄りのような喋り方をする少女だ。
うん。そんな所までマギルゥにそっくりだ。
違う点は今より幼いという事と、聖寮の服を……着ているということだ。
「お名前は何ていうの?私はねーエリアスって言うの」
「まるで興味がないのお。儂のことはほおっておいてくれ」
マギルゥに似た少女は「私」にそう吐き捨ててまた足元に散らばった資料を読み始めた。
だがその間も「私」はねぇねぇそれそんなに面白い?ねぇ、ねぇねぇ以下略。
我ながらこれはしつこいぞ。と思い始めた頃、少女はぷるぷると震えて「うるさい!!!!!!」と再度怒鳴った。
部屋を出て言ったりすればいいのに何故かそれをしない少女は若干疲れた顔で「私」が入ったガラスケースをばんばんと叩いた。
「わしは!!忙しい!!お主に構ってる暇はないわい!!」
「じゃあ黙るからさー貴女の名前だけでも教えてよ」
「……はあ……教えたら黙るのか?」
「黙る黙る!……
少しだけなら……」
今ぼそりと少しだけならと言った。だがその少しでも黙っていて欲しいのか少女は諦めた表情をしてポツリと口を開いてくれた。
「マギラニカ」
「マギ……ラニカ……」
聞いた事が、ある。いや、知ってる。
そうだ、この過去は私が思い出せなかったことの一つ……だ。
「マギラニカ・ルゥ・メーヴィンじゃ」
もう一度、今度はフルネームで名前を告げた少女は、やっぱり今旅している彼女とそっくりで、……いやそっくりなんじゃない。この少女は「過去のマギルゥ」なのだろう。
「ま……マギ……
えっ長いちょっ、ちょっともっかいゆっくりいって!
めちゃくちゃ長くて言いづらい!」
「………………」
「あ、待って!そのままその紙に集中しないでー!!ごめんってばー!!
怒んないでよ!あっほら私が言いやすい名前考えて上げるからさ!ねっ?」
ねぇ〜!!また「私」はねぇねぇ攻撃を名前を告げたはずのマギラニカに再開した。
そう言えばフルネームを初めて聞いた。マギルゥは最初からマギルゥと名乗っていたからだ。略してマギルゥなのか、少し納得した。
「……私は……マギルゥと出会っていた……?」だが納得出来ないのはひとつあった。"今"の一緒に旅をしているマギルゥの態度だ。
なぜ、今のマギルゥは他人のフリをしているのだろうか?監獄塔で出会った時も「初対面だ」と念を押していた。
……?、そうだ。念をおされた。「初対面だぞ」と
今思えばまるで、そうであって欲しいような言い方でもあった。
「これを……見ればその訳も……わかるのかな」人魚のことも、
私の過去も。
マギルゥのことも。
誰がなんのために"この光景を故意"に見せているか分からないが、……今の私にはこれしか過去を知る術はない。
警報を鳴らす様に煩い心臓を誤魔化すように胸に置いた手を握りしめた。