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- ナノ -
06

「ベネット?!除籍されたはずじゃ!?」
「残念だったな、合理的虚偽だよ…」





chapter:06





はい、合理的虚偽らしいッスよ!

あれから残りの競技を全部終わらせた俺達を待っていたのは結果発表だ。
正直言って落ちる気がしない、だって落ちるであろう人間が分かっているからな。

緑谷はボール投げで高成績を出してからが酷かった。
腫れ上がった人指し指の痛みに耐えながら残りの種目をこなしたのだろう、その結果は散々なものだった。
長距離走は何周遅れだったろうか、空飛んで一番にゴールした俺っちはかなり待たされたと思う。

彼が落ちる、と誰もが思って結果を聞く。
淡々と告げられる説明に主に緑谷が固唾を飲むなか、相澤先生は平然と言った。



「ちなみに除籍はウソな」



そして最初に戻る、と。



「今日の授業はこれで終わりだ、ここにいる21人がこれから1-Aの生徒になる、仲良しごっこで足元を掬われないようにしろよ、そこまで馬鹿の面倒は見切れないからな…以上ホームルーム終わり」



さっさと帰れよ、という先生の言葉で今日の学校は終わってしまった。
マジかよ、記念すべき高校デビューは!これにておしまいってか?

まぁいいか。
体力テストの結果は堂々の1位、これでナナへの土産話が一つできたわけだからな。
皆がぞろぞろと帰っていくなか、俺っちは朝から話しかけようと思っていた人物に歩み寄る。

そいつは俺っちの接近に気づいて顔をこちらに向けた、「よっ」と片手を上げれば、「よう」と軽く手を上げてそいつは答えてくれた。



「久しぶりだなー!轟!推薦入試以来?小学校卒業以来?なんにしたってお前と同じクラスになれるとは思ってなかったぜ!」

「おう、俺もだ、一応入試ぶりだろ」

「そうだけどよ、入試の時はちょっと話しただけでろくに世間話もできなかったじゃんか、帰る方向違ったし、お前にはお迎えあったしよ」



俺っちの昔馴染み…轟焦凍は、「あの時は悪かったな」と小さな謝罪を入れる。
別にいーんだよ気にすんなって!俺っちとお前の仲だろー!?

なんて心では言ってみるが絶対に口には出せない、というか出していいのか分からないからだ。



「駅までは同じだったよな、一緒に帰ろーぜ、世間話も交えてさ」

「あぁ」



俺っちの誘いに短い返事を返す轟の様子は昔と変わらない。

俺っちと轟は小学校が同じだった、クラスも殆どダブる為よく話したり一緒に行動したりする仲…つまるところ友達だった。

だった、って言い方は違うか、過去形だもんなー。
色々あって俺っちが小学校卒業と同時に引っ越すまでは家も近かった、もう二度と会うことはないって感じの別れ方しちまったから、あの時入試で顔を会わせたときはマジで驚いたぞ。

え?なんでその話を前にしなかったかって?
だって本当にろくな会話ができなかったんだって…。



「お前イケメンになったよな〜!小学校の時はビビりで俺っちの後ろに隠れてたのにこんなに立派に育って…俺っち嬉しいぜ…!」

「別にお前を盾にした覚えはないんだが…まぁ、お前こそ、昔に比べて随分と竜臭くなったな、前は角しか無かったのに」

「あぁ…中学の時に気付いたら増えたんだよ、最初っから生えててほしいよな〜慣れるのに苦労したわ」

「そうか」

「…轟は?個性の扱いにはもう慣れたか?」

「…まぁな」



轟は若干視線を反らして言う。
お互い、あの時は色々抱えていたから、正直どこまで話を広げればいいか困っちまう。
まだ親父さんとの確執は埋まってねーのか…。

俺っちの当たり障りない近状報告も、轟は淡白に返事を返し、時折自分の話もしてくれる。
そしたらすぐに駅についてしまった、ホームはそれぞれ別々だ、改札を潜って次の電車の時間を見る。

不意に、轟が俺を見て言った。



「なぁ皇」

「あー?」

「俺はお前が生きていてくれて嬉しい」

「へ?え、何いきなり」

「…小学校ん時の、俺に向けた別れの挨拶、物騒すぎてずっと物申したかった」

「あー…いや、あれは子供ながらに思い込んでだな」

「だからって小学生相手に『多分俺っち死ぬかもしれないから、もう会えないかもしれない』なんて言うなよ」

「うっ…なんで覚えてんだよ…」

「覚えてるだろ、友達がそんなこと言ってりゃ、しかもそれまで冗談でも死ぬとか言わなかったお前が」

「本当によく覚えてるねお前!あー!もう悪かったって、あの時はほんと色々面倒なことがあってさ、ちょっと命の危険もあったりなかったり〜?だったから友達のお前には言っておこうとだな…!」

「おう、で、もうお前が死ぬようなことは無くなったのか?」



轟がまっすぐ俺っちを見た、半分だけ火傷跡が残る彼の顔は本当に昔と変わらない。
にしても、あのビビりな轟がこんなにかっこよくなっちまって…俺っちちょっと安心したぜ?
あの時のお前、情緒不安定過ぎたからな。



「おう!今んところはな、事故ったりさえしなけりゃ100歳まで生きるつもりだぜ」

「100歳か…竜は長生きって言うから本当に100歳越えそうだな」

「たりめーよ…っと、ヤバッ電車来たわ、悪い轟、また明日な!」

「おぉ、引き止めて悪かったな…また明日」



電車が来ると告げるアナウンスに急かされ、俺っちはホームの階段を駆け上がる。
今日は色々あった日だ、体力テストに懐かしの友人、そんでもって懐かしい過去。

今までずっと覚えていてくれたことが嬉しくて、弾む気持ちで俺っちは電車に乗り込んだ。



そして扉に尻尾が挟まって情けない声が出ちまったのは内緒だ。


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