14.誘いは突然に


どうして私は一番隊の隊舎にいるのだろう。霊圧が、強い。勿論皆抑えてるのだろうがやはり隊長が揃うとなかなかに堪える。入口に近い場所で赤い壁を見つめている。手に持っている一枚の報告書が、酷く、酷く重い。




「ちょっと忙しいから代わりに出てくれる?」

そう言って部長に手渡されたのは隊首会で報告するであろう決算の書類だった。

「……え?」
「この前副部長の代わりに京楽隊長にも報告行ってもらったし、あれ京楽隊長からも評判よかったし、このまま春原に任せた方がいいだろう。頼んだよ」
「いや、あの!ちょっと!」

総隊長によろしく言っておいてくれ、と言い残し部長は立ち去った。私が隊首会で報告?全隊長の前で…?気が遠のく。書類には右上に日時と場所が書いてある付箋が貼ってある。私は目を見開いた。

「一時間後…!」

部長は絶対これを狙っていた。一時間前なら逃げられない。昨日言われていたら確実に仮病で休んでいただろう。
腹を括るしかない。私は報告書を睨みつけ頭に叩き込んだ。




「では、来期の各隊の……」

雀部副隊長の声が響く。早くここから出たい。言われた時間より早めに行ったのに、そこには全隊長が揃っていて失神しそうだった。失礼がないようにと思って早めに行ったのに…。彼らの視線を避けながら入室した。京楽隊長には小さく手を振られ、浮竹隊長にはにっこり微笑まれた。鳳橋隊長と六車隊長はとても驚いた顔をしていて…、そして、彼の顔は見れなかった。決算報告は隊首会の最後らしい。それに隊首会の内容は一般の隊士や、まして経理の人間なんかが聞いていても良いものなのだろうか。

「では春原、最後に統括経理部から今期の決算と来季の予算についての報告を」

ぼーっとしていたら雀部副隊長に呼ばれ、心臓が飛び出るかと思った。

「…は、はい!統括経理の春原です。今回は代理で報告させていただきます」
「えー、代理なの?これからもずっと栞ちゃんが来て欲しいなぁ」
「こら京楽、春原が困るだろう」
「え、っと」
「京楽、浮竹!静かにせんか!」
「ごめんごめん、山じい」
「すみません、総隊長」

こちらを向いてペロ、と舌を出す京楽隊長は、いつも通りだ。やっぱり京楽隊長には感謝しないといけない。おかげで緊張がほぐれた。私は京楽隊長に笑みを送り、報告を続けた。



「以上で隊首会を閉会する!」

総隊長の言葉で閉められた隊首会だが、私はどのタイミングで退出すればいいのだろうか。扉の近くにいるのは私だし、とりあえず扉を開け、抑える。すると総隊長以下、順次退室していった。何人かは残って話している。彼も、そこにいた。やっぱり早くここを出たい。
隊長達全員の退室を待つのも不自然だし、私が帰るならこのタイミングでは、と思い、残っている隊長達に失礼します、と言い、部屋を出ようとした。

「ああ、待って栞ちゃん!」
「はい、何かありましたか?」

京楽隊長に止められたため、扉の近くで立ち止まる。京楽隊長が浮竹隊長と分かれて、こちらに歩いてきた。

「栞ちゃん、このあとは?」
「このあと、ですか?えっと、お昼休みをとってその後は通常勤務ですが……」
「そのお昼休み、僕にくれないかい?」
「……え?」
「報告、頑張ったご褒美にお昼奢るから一緒に、ね?」

いは突然に
絶対的に美味しいお誘いを
断る理由はなかった


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