女の子なら誰だって良い顔して!!
彼女の私の前でも他の女の子にヘラヘラして!!
謝れば私が許すと思ってて!!
でも!!!
今回はもう我慢できない!!!!
「でも、実際名字はいつも羽鳥の事、許すだろ。」
「うっ・・・、そうなんだけど!!でも!今回はもう無理!!いい加減甘やかし過ぎたって思う!!」
「はぁ・・・。」
いつものRevelの皆が集まるバー。
羽鳥と喧嘩して、溜まった愚痴を槙くんにぶちまける。
だって!だって!!!
たしかにね、羽鳥の女癖の悪さは承知の上で付き合ってるよ。
それでも、私だけは特別だって思ってるし、仕事のうえでどうしても必要な付き合いがあるのだって分かるけど・・・。
「羽鳥と泉に何か起こるとは思えないけどな。」
「・・・知らない。」
「・・・。」
今日は私も羽鳥も早く仕事を切り上げてデートの約束だったのに、ドタキャンで泉さんと出掛けるって・・・。
ねえ!!
泉さんと出掛けるの何回目!?
Revelへの依頼とか、仕事の事だって分かってるけど!!
もうさすがに何か仕返ししないとやってられない!
「それで、羽鳥への見せしめに合コンに行くのか?」
「うん!!羽鳥はね!私が何でも許して、ただ羽鳥の事を大人しく待ってるだけしかできない羽鳥に溺れてる女だって私の事思ってるんだよ!」
「そんなこと無いだろ。」
「ある!!」
「(聞く耳持たない・・・)」
「私だって、他の男の人にトキメキ事だってあるんだって、油断してると他の男の人のとこに行っちゃうぞって思い知らせるんだ!」
「そうか・・・。」
「それに!もしかしたら羽鳥以上にカッコ良くて私の事を1番に考えてれる人がいるかもしれないしね!」
「ふぅん。まあ、気を付けて行ってこいよ。何かあったら連絡しろよ。」
「槙くん!!好き!!」
そうしてバーを出て、合コンが開かれるバルに。
前に何度か誘ってくれたけど、断っちゃった友達にお願いするとすんなりと受け入れてくれた。
なんでも今回のお相手は商社マンたちで、友人含む他の女の子たちも気合い充分だ。
「「「かんぱーい!」」」
つつがなく会は始まり、自然とそれぞれお相手を決めてきゃっきゃっと盛り上がっている。
私の隣にも、同い年の爽やか系イケメンくんが座り、あれやこれやと話し掛けてきてくれる。
「へえ、名前ちゃんはオモチャメーカーで働いてるんだね。」
「うん。昔からの友人が役員してるんだけど、そこで広報やってるんだよ。」
「俺、子供の時、あそこのオモチャでよく遊んでたよ!」
うーん。
イケメンくん、だけど・・・。
普段羽鳥を筆頭に、とんでもないイケメンたちに囲まれてるから特別ドキドキする訳じゃないんだよなぁ。
「名前ちゃんは休みの日とかは何してるの?」
「えっと、映画見たり買い物行ったりとか、」
あ、そういえば来週公開の誠さん原作の映画、羽鳥と観に行く約束してたっけ、
「名前ちゃん、おかわりは?どれにする?」
「えっと、」
羽鳥ならシャンパン好きで、バーでも飲んでたなあ。
私はお酒そんなに得意じゃなかったのに、羽鳥と付き合ってから美味しい飲み方教わって、苦手意識が無くなってきたんだよね。
「名前ちゃんって髪の毛綺麗だよね。その色、似合ってる。」
この人も、ダークブラウンな髪色が爽やかな印象を受けてすごく似合ってるけど、私はもうちょっと赤みがつよい色が好きだな。
そう、羽鳥みたいな・・・、
「俺、もっと名前ちゃんと仲良くなりたいな。」
羽鳥なら、もっとスマートに距離を詰める。
だって、そうして私も羽鳥から逃げられなくなったんだもん。
「ねえ名前ちゃん、聞いてる?」
「あ、」
あぁ、ダメだ。
結局私は羽鳥を見返そうとこんなとこに来ても、他の男の人と話してても、羽鳥の事ばっかり考えてるじゃん。
「あの、ごめん。私、やっぱり帰る・・・。」
「え、どうしたの!?」
「本当にごめんなさい、」
荷物を持って、席を立とうとする。
幹事の女の子にお詫びも兼ねて多めに会費を払って帰ろう・・・。
「待ってよ!名前ちゃん!」
「っ!」
腕を掴まれてその場から動けない。
強く掴まれた腕がギリギリと痛む。
羽鳥はこんな乱暴な事、しない!
「ほんとに俺、名前ちゃんのこと気に入っちゃったんだって!」
「ごめ、離して!」
「嫌だ。とりあえず番号教えてよ。」
「もっ、やめ、」
「はい。そこまで。」
「な、誰だよ!」
「な、んで・・・。」
「名前、大丈夫?」
「羽鳥・・・。」
ここのいるはずのない、羽鳥がそこにはいた。
「ごめんね、この子、俺の彼女なんだ。」
「は!?」
「だから離してくれない?」
笑顔で詰め寄るも、目が笑ってなくて彼もたじろいでいる。
「で、でも!彼氏いるのに合コン来るって、お前に不満とかあって来たんじゃねぇの!?」
「ちょっ、それは、」
確かにそうだったけど。
でも、それはこの人に言われる事じゃない・・・!
「分かった。とりあえず名前と話すから、君は黙っててくれない?」
「は?何言って、」
「さっきこの店買い取ったからさ。ここのオーナーは俺だよ。」
「「!?」」
・・・は?
え、何言ってるの・・・?
「だから俺の好きにして良いって事。」
「お前、なんだよ、」
「だから名前の彼氏だよ。」
しつこいなぁ、なんてヘラリと笑う羽鳥。
「君、◯◯商事の社員だよね?保身のために静かにしてた方が良いと思うけどなぁ。」
「なっ!」
そう言うと、羽鳥はまわりを一瞥してから私に向き直る。
「ねぇ名前。こんな合コン来てみてどうだった?俺より良い男はいた?」
「・・・。」
居ない・・・。
どんな話をしてても羽鳥が頭から離れなかった。
「槙から聞いたよ。不安になってたんだよね。」
「・・・だって、」
「うん、ごめん。分かってると思うけど、玲ちゃんとはRevelの仕事で一緒にいたんだ。」
「分かってる・・・でも、」
「良い気持ちには、ならないよね。」
「・・・。」
羽鳥は、眉を下げて笑う。
「俺も、名前が合コンに行ったって聞いて柄にもなく焦ったよ。思わず店を買い上げるくらいにはね。」
「ごめん・・・。」
「名前、」
「うん・・・。」
「俺がこんなに必死になるのは名前だけだよ。名前は優しいから甘えちゃってたね。」
「・・・。」
私も、羽鳥じゃなかったらこんな柄じゃない合コンに来なかった。
見返してやろうなんて、やけになってない。
「名前、ごめんね。でも好きだからもう他の男ののとこになんて行かせられない。」
「羽鳥・・・。」
「それに、」
申し訳なさそうな顔から一転、ニヤリと強気な笑みを浮かべた羽鳥は私を引き寄せて、耳元で囁く。
「俺以上に名前を夢中にさせる男なんて、いなかったでしょ?」
そうなんです。
私、もう羽鳥じゃないとダメになってる。
「・・・他の女の子にヘラヘラしちゃ、嫌だよ。」
「うん、しないよ。名前が嫌なら、もう名前にしか笑わない。」
「・・・少しなら、笑ってもいいよ・・・。」
「ははっ、名前は優しいなぁ。」
「それと、あんまり泉さんばっかりに構ってたら悲しい・・・。」
「玲ちゃんは神楽に任せよう。」
「あと、」
「ん?」
「好き。羽鳥が、大好き。」
「俺も。」
私の大好きな、羽鳥の甘くて私をまるっと受け入れてくれるような笑顔と一緒に抱き締められる。
羽鳥の良い香りがして、気持ちが落ち着く。
「ってことで、俺と名前は帰るね。」
「!!!」
忘れてた・・・!!!
みんな、見てたんだ・・・!!
「あぁ、代金は気にしなくていいよ。でも、もう名前にちょっかいかけたら許さないから、そのつもりでね。」
そう言って、手を引かれて店の外に出る。
「これで、名前はどこにも逃げられないね。」
「っ、うん・・・。」
友人たちの事を指してるのか、さっきの彼を指してるのか・・・。
どちらにせよ、私だって羽鳥を離す気はないんだからね!
「それにしても、焦ったとはいえお店まで買う必要あった?」
「それだけ驚いたし何も考えられなくてさ。それに、他の男と一緒にされなくなかったしね。」
「・・・あんなの羽鳥にしかできないよ・・・。」
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bkm