8月の教会
夢主≠玲ちゃん




「この前の連休にね、玲ちゃん、九条さんたちと古城行ってきたんだって!」

「あ!そういえばそんな事言ってたなあ。」



夜、夏樹くんと自宅のソファに座って食後のコーヒーを飲みながらまったりテレビを見てるときに、ふとこの前玲ちゃんが職場で話してたことを思い出した。
お土産のクッキー、美味しかった・・・。



「なんか司さんもその後また玲と一緒に行ってたよな?」

「うん、なんか幽霊がどうのとか言ってて・・・」

「ははっ!古城に幽霊とかロマンチックじゃん!」

「ええー。幽霊はやだなあ・・・恐いじゃん・・・。」

「名前怖いの?可愛いー!」

「もお!!」

「おっ!照れてるー!!」


ふざけた調子でぎゅーっと抱き締められる。
付き合ってしばらく経って、同棲もして1年は過ぎたのにいつまでも付き合いたてのように彼にスキンシップをとられるとドキドキしちゃう。


「でも、幽霊はともかく、お城でドレスを着たっているのは羨ましいかな。」

「ドレス?」

「うん、なんかレンタルサービスかなんかで借りて着たみたいだよ。」

「ふーん・・・」


夏樹くんは何かを考えてる様子で身体を離す。
すると突然、


「よし!俺たちもお城でドレス着ようぜ!」

「え!?夏樹くんもドレス着るの!?」

「ちがーう!!ドレス着るのは名前!!俺はそうだなあ、なんか貴族っぽいの着るよ!」

「ぷっ、夏樹くんが貴族って!」

「あ!笑ったなーー!!」

「ごめんごめん!」

「で、いつ行く?」

「え、ほんとに?」



思い付きの冗談かと思ったのに。
でも、夏樹くんと古城でドレスかあ・・・。
思わず笑っちゃったけど、絶対格好いいじゃん・・・。



「俺も今の捜査が一段落付いて休みとれるし、名前のとこは?」

「うーん、この前の摘発が終わったばっかりだから夏樹くんに合わせられると思うよ。」

「よし!じゃあ来週あたりに合わせ行こうぜ!」

「うん!」




◆◆◆◆




そうしてやってきた当日。
この前玲ちゃんたちが来た古城じゃなくて、東京から二時間半くらいにある、古城を使ったテーマパークに来た。


ドレスと一緒に写真のサービスあるからここにしよ!


夏樹くんの鶴の一声でここに決まった。
なんか施設調べたり準備したり、率先して計画をたててくれて。
夏樹くんも衣装着るの楽しみにしてたんだね。



「まずは入場券買ってっと、」

「あ、あそこにあるよ!」


平日ということもあって、園内は人がまばらにいる程度。
でもその方がゆっくり見れていいよね。


「じゃあさっそくプリンセス体験といきますかー!」

「え、もう?」

「早く名前のドレス姿見たいじゃん!ほらほら行くよー!」





「ご予約頂いた菅野様ですね。お待ちしておりました。」

「よろしくお願いしまーす!」

「では、女性はこちらのお部屋になります。」

「あ、はい、」

「じゃあね、名前!また後でな!」

「うん!後でね!」






「お疲れ様です。」

「わあ!」


ドレスを着せてもらい、おまけにメイクと髪の毛までやってもらった鏡に写る私は、自分でいうのもおかしいけどほんとに自分じゃないみたいに綺麗に仕上がっていた。
ドレスはスタッフのお姉さんに勧められるがまま、白のレースが何重にも重なったフワッフワのプリンセスラインのドレス。

「よくお似合いです。」

「えへへ、ありがとうございますっ」

「では、お連れ様がお待ちなのでこちらへどうぞ。」

「あれ、ここにいないんですか?」

「はい、先にお写真を撮る撮影場所でお待ちになられてます。」


スタッフさんに連れられて廊下を進む。
うう、裾踏まないように気を付けなきゃ・・・!


「こちらです。」

「ここって・・・、」



スタッフさんが両開きのドアを開けると、そこはチャペルになっていて



「夏樹くん・・・!」

「名前。」



祭壇の前に、白いタキシードを着た夏樹くんが私のほうを見て微笑んで待っていた。



「では、ごゆっくり・・・。」


バタン・・・


「え、え!?さ、撮影は!?え、」

「名前、こっち、おいで。」

「夏樹くん・・・。」


夏樹くんに導かれるまま、前へ、前へと進んでく。



「名前、すっごい綺麗だよ!」

「夏樹くんも、格好いいよ・・・。」

「ビックリした?」

「ビックリどころじゃないよ!え、なに?どういうこと?」

「名前、聞いて。」


急に真剣な顔をした夏樹くんに、私も口を閉じる。
私の足元に跪くと、本物の王子様のように私の手を取った。


「夏樹くん・・・?」

「名前、いつも仕事に一生懸命で、ほんとは泣き虫のくせにそれでも歯を食いしばって前を向いてるところも、家ではちょっとズボラなところも、甘えたいときに俺のほうチラチラ窺ってる上目遣いも、俺のことをいつも大切に好きでいてくれてるところも、全部全部好き。」

「っ、夏樹くん、」

「これからも、ずっと、俺のそばにいて欲しい。」

「っ、」


夏樹くんは、胸ポケットから小さな箱を出して、


「名前、結婚して下さい。」


綺麗な指輪を、私の指に嵌めてくれた


「私で、いいの・・・?」

「名前がいいの。」

「ズボラなのに?」

「俺にはピッタリじゃん!!」

「っ、仕事で、お家のこと、疎かになるかもっ・・・」

「ふたりで支え合うのが、夫婦でしょ?」

「っ、な、なつきく」

「名前。」

「ふぅっ、くっ、ひっ」

「結婚しよ。」

「はいっ、」



夏樹くんと、一緒にいたい。



「っ、やったーーー!!!」

「っきゃあっ!!」


突然立ち上がった夏樹くんに抱き上げられ、小さい子供のようにクルクルと回される。


「や、ちょっ、夏樹くん!」

「名前!愛してる!!」

「っ、私も!!」



その瞬間、たくさんの風船が祭壇の後ろから飛び出す。



「わあっ!」

「どう?びっくり?」

「全部全部びっくりだよ!」

「でも、古城で幽霊よりロマンチックだっただろ?」

「っ、もう!!」







「ずっと、一緒にいような。」


「はいっ、」





happy wedding!






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