小説 | ナノ


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「じゃあねかのえちゃん、おやすみ」

そう言って通話を切る。自分の部屋へ戻ろうとミーティング室を出れば、ちょうどカルロがいた。

「まーた糸ヶ丘と電話か」
「へへん、羨ましい?」
「その能天気さがな」
「なんだとー!?」

バカにされて腹が立ったけど、どうせカルロは嫉妬しているだけだから放っておくことにした。俺は大人だからね。

「そういやずっと弁当作ってもらうつもりなのか?」
「うん!寮弁も食べるけどねー」
「なら毎日作らせるなよ」
「えーなんでさ、」
「流石に糸ヶ丘の負担だろ」
「んー、でも作るの楽しい!って言われたし」

楽しいっていうなら、ありがたく頂戴したいじゃん。難しそうなら別に寮弁だけで足りるけど。でもかのえちゃんは「自分の作るついでだから」と言っていたし。そういうなら、当然お願いする。

「あっ!」
「ん?」
「かのえちゃんが撮った写真、忘れてた!」
「なんだ写真って……お前じゃん」
「そ!かのえちゃんが撮った俺!」

約束通り、かのえちゃんは俺のピンショットをすぐ送ってくれた。59分になっているから、きっと教室戻って準備してギリギリの時間だったと思う。だけど、俺のためにすぐ送ってくれたんだろうな。ほんと、成宮鳴最優先な子だ。


「お前なに頼んでんの……?」
「アプリのアイコンにしようかなって」
「うわー……バカップルっぽい」
「バカじゃないしー、ラブラブなだけー」
「鳴も糸ヶ丘のこと好きだったんだ?」
「は!?当然ですけど!?」

どこからどうみても、彼女と仲がいい彼氏だ。なのにカルロは俺に愛がないかのような言い方をしてきて、これは普通に腹が立った。

「お弁当作ってきてくれるしー、練習試合でも応援来てくれるしー、いつでも電話出てくれるし―、すっげー好き」
「お前それ……」
「なに?」
「いや、なんでもない」

好きなところあげても、なんだか納得してくれない。もう面倒だし、カルロに伝わらなくてもいいや。


「あ、それとかのえちゃんって何かやってあげるたびにすげー喜んでくれるの」
「お前が誰かに何かやってやるなんてめずらしいな」
「失礼じゃない!?」
本当にこいつは何なんだ。さっきから俺に対してケチばっかりつけてくる。とはいえ、結局興味があるのか色々聞いてくる。

「何やってやったんだ?」
「見学の穴場教えてあげたり、写真送ってあげたりしてる」
「……」
「それと、この間髪型崩れてたから三つ編みしてあげたら、めっちゃ喜んでくれた!」
「ああ、そういうのもあるのか」

安心したわ、とつぶやくカルロ。


「なんかさ、尽くしたい!って人の気持ちが分かってくるよね〜」
「尽くしてはいねーだろ」
「でもほら、何かやってあげたいって気持ちは大事でしょ?」
「……そのままその気持ちを育んでくれ」


ため息をついてカルロはひらひら手を振って自分の部屋にか、去っていった。まーカルロの許可なんてなくても付き合うんだけどね。

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