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▼ 遠足前の前園くん

「え、前園くん遠足行くの?」
「なんでや、行くわ」

行かない前提で返事した私に怒る前園くん。

「だって修学旅行来なかったし」
「あれは大会中やったからな」
「今は大会ない?」
「6月入ってからや」
「なるほど、来月ね」

あんまり分かってないけど、分かったことにして返事する。野球部っていつも大会している感覚だし。

「なら倉持くんも来るの?」
「行くやろうけど……アイツに何かあるんか」
「遠足って千葉でしょ」
「よく千葉出身やて知っていたな」
「前園くんも分かるよ、大阪でしょ」
「喋りで判断したやろ」

その通りだけど、兵庫じゃなくて大阪って当てたことは褒めてほしい。

「倉持くんはほら、同じクラスだったから」
「糸ヶ丘は去年B組か」
「うん。出身地くらいしか聞けてないけどね」
「一年一答かい」

そう言われると、そうである。

「そういえば、あの二人ってずっと野球の話していたから野球部全員そういう感じだと思っていてさ」
「んなわけあるかい」
「前園くんも同じレギュラーだって思わなかったんだよね」
「一緒にすんな」

あれは異様なんや。そう言いつつ、”野球バカ”で知られているチームメイトと比較されるのは嫌なのだろうか、少しムッとする前園くん。

「じゃあ前園くんも野球の話ずーっとできる?」
「いくらでもしたるぞ」
「いや、野球の話されても私分かんないな」
「なんやねん」

ここで終わると本当に前園くんへの興味がない人だなあ。どうしようなあ。そう考えているのが分かったのか、喋りの得意な彼の方から提案が出た。

「……なら話題は何でもええ」
「ん?」
「なんか聞いてきたら、なんでも答えたる」
「一日一答?」
「毎日するんかい」

そう言いながら、前園くんは笑う。笑うと高校生っぽい顔になるんだな。


(はいはーい、じゃあ好きなアルファベットは?)
(もうちょい聞きたいことあるやろ)

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