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▼ クラス替え前の金丸くん

「金丸くんって文系?」
「なんだ藪から棒に」
「クラス分けあるでしょ」

昼休みが終わる直前、背中を突いて話しかける。金丸くんは教科書を出しながら雑な返事をくれた。

「つっても、2年はまだ文理選択ないだろ」
「参考に」
「何のだよ」

何のだろう。あんまり考えず、こちらもテキトーに返事をしているから。

「まだどっちか決めてねえ」
「ふーん」
「糸ヶ丘は?」
「私は理系」
「めずらしいな」

確かに、この時期にはっきり言い切る人はめずらしいかも。おまけに女子で理系。

「進路そっちにしようかと」
「はー考えてんだな」
「金丸は大学行くの?」
「普通にいけば、行くと思うけど」

普通じゃないパターンは置いておくとして、普通のパターンで会話する。

「例えば同じ大学になったとしてさ」
「おう」
「すれ違う時挨拶するくらいには仲良くしててさ、」
「おう」
「友達から『かのえあのかっこいい人と知り合い!?』って騒がれたりしたいから」
「は、はあ!?」
「東条くんも同じ大学に連れてきてね」
「ぶん殴るぞ」

流石に金丸くんじゃ騒いでくれないと思う。性格はいいんだけどね。金丸くんの良さを知るには時間が必要だから。

「つーか大学まで一緒にはならねえだろ」
「そうかなあ」
「せめて来年のクラスくらいじゃねえの」
「えー金丸くんと同じクラス?」
「ぶん殴るぞ」
「どうどう、落ち着いて」

すぐ怒る彼を宥めつつ、そう思った理由を告げる。

「だって金丸くんのクラス、うるさそうだし」
「俺騒ぐキャラじゃねえけど」
「でも金丸くんは沢村くんと同じクラスになるでしょ?」
「なりたくねえ、決めつけるな」
「でも絶対同じクラスにされるよ」
「まあ……可能性がないわけじゃねえけど」
「絶対だよ、まあ見てて」

別に確証があるはずもないのに、言い切る私にげんなりとした表情を見せる金丸くん。そんなくだらない会話は授業が始まれば忘れてしまっていたのに、翌月、始業式の日に理不尽な怒りを金丸くんから受けることとなるのはまた別の話。


(おい糸ヶ丘!本当になっちまったじゃねえか!)
(私と同じクラスに?やったね)
(そっちじゃねえよ!沢村だよ!)
(えー……私と同じクラスで嬉しくないの?)
(そっ、それは……!)

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