小説 | ナノ


▼ 02

「ねーーー雅さん」
「なんだ」
「糸ヶ丘になんて言って告白したの?」


ピッチング練習が終わり、全体練習へ移動している途中で、今日喋っていたことを聞いてみる。雅さんがビックリした顔をした。

「……アイツが言ったのか」
「糸ヶ丘に「雅さんからどんな返事もらった?」って聞いたら」
「そうか」

もしかしたら知られたくなかったのかな。ニヤニヤしながら更につつく。

「もしかして、バラした糸ヶ丘に怒ってる?」
「別に構やしねえよ」
「えーーーじゃあなんでさっき変な顔したのさ」
「あいつ、その辺のこと他人に言わねえから驚いただけだ」

もうちょっと恥ずかしがったりすればいいのに、普通にザクザク歩いていく。思っていた反応と違って、なんだかつまんない。

「ねえ!だから何て告白したの!」
「教えるわけねえだろ」
「いーじゃん別に!」
「付き合ってくれって言っただけだ」
「えー……つまんない」

もっとロマンティックな告白をしていてほしかった。いや、でもそんな雅さん、別に知りたくないな。そもそも雅さんの告白シーンなんて知りたくないや。

「うっせえな、お前にゃ関係ねえだろ」
「今後の参考にさ?」
「好きなやつでもいるのか」
「いや、いないけど」

グラウンドに着いたけど、まだ守備練習が終わっていないっぽい。外野の連携が上手くいかなかったみたいで監督がキレてる。こわ。


「俺もめちゃタイプの子が告白してきたらなー」
「……」
「ちなみに俺のタイプはね」
「無視してんのに喋るのか」

キレている監督にビビっているのか、黙って守備練習を見ている雅さんに、俺は問答無用で話しかける。


「とりあえず顔もスタイルも最高でー、頭も良くて―、野球のこと一切口出ししてこなくてー、休みに会えなくても文句言わなくてー、そんで、付き合ってからも好きってめっちゃ言ってくれる子!」

指折りして、カルロから「そんな女居ねえよ」と言われた理想を挙げていく。でもさあ、妥協して彼女なんて作りたくないじゃん?

「なかなかこういう子に会えなくてさ〜」
「残念だったな」
「雅さん反応雑〜」
「この会話に対する雑じゃねえ反応が分からん」
「うーん、そう言われると困る」
「なんて返してほしかったんだよ」
「カルロは「いねーよ妥協しろ」って言ってきた」

とりあえず、一番真面目に聞いてくれていたカルロの返事を例にあげてみた。雅さんは少し間をおいて、喋り始める。

「別にいないこたねえだろ」
「えー雅さん知り合いにそんな子いるの?紹介してよ!」
「紹介はできねえが」
「なんで!?ひどくない!?」

「俺と付き合っているからな」

雅さんの発言に、俺は白目を向きそうになる。

「……雅さん、俺の話聞いてた?」
「聞いてんだろ」
「糸ヶ丘のどこが俺の理想なわけ?」
「俺が野球漬けでも文句言ってこねえ」
「それは、まあ……確かに?」

言われてみれば、確かにそうだ。糸ヶ丘はあれだけ雅さんのことを好き好き言っているけど、会いたいだのデートしたいだの、一言も口にしないって聞いた。ストーカーは続けているっぽいけど。

「糸ヶ丘の顔がいいからって、全部よく見えちゃっているんじゃない?」
「頭いいのは顔関係ねえだろ」
「まあ確かに? 成績はいいらしいけど!?」
「ああそれと、」
「あーはいはい!もう満腹でーす!」


このまま聞いていたら、ずーっと惚気話が続いてしまう。恋愛している雅さん
とかマジでやめてほしい。しかも相手があの糸ヶ丘かのえ。俺が止めたから雅さんも口を閉じる。わざわざ自分から喋りたがるタイプじゃないもんね。そこは助かった。あ、でも。


(糸ヶ丘のどこが好きなのか、聞けばよかった)


自分から止めておいて、まだ同じ話を振るのも癪だなあ。っていうかこれ以上惚気話を聞きたいわけじゃないし。

ま、今度聞いて、それネタに糸ヶ丘から何か奢ってもらおうっと。とりあえず今は監督の怒りが落ち着いたっぽいから全体練習へ混ざりに行くことにした。

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