小説 | ナノ


▼ 08

「あれ、鳴は一緒にいかないの?」
「俺元日に来たし」
「そっか」

電車に乗って3駅、徒歩5分。あっという間に神社まで着いてしまった。

成宮先生から、甘酒を配っているところまで先にいると連絡が入った。だからそのまま成宮先生と合流して3人で回るのかと思っていたのに、境内に入る手前で鳴は立ち止まる。本当に、私を迎えに来てくれただけだったのか。

「ねえ」
「ん?」

このまま別れてしまうのがもったいなくて、小さな質問をぶつけてしまう。

「鳴はいつ寮に戻るの?」
「明日」
「へえ、早いね」
「三日も休んでんだから充分だっての」

全国区の高校だけあって、やっぱりストイックだ。

「全国行けますようにってお祈りしたの?」
「してねーし。自力で行くし」
「そっか」
「そっちは受験成功しますように祈る?」
「うん、自力でも頑張るけどね」

ちょうどこの神社は学業の神様のに関係するところらしい。せっかくなので祈っていく。

「鳴は自分のこと祈らないなら、私の分祈っておいて」
「……ったく、仕方ないな」

そういうと、ぴょんと私の隣に来てくれる。

「……一緒にお参り来てくれるの?」
「祈れって言ったのそっちだよね!?」
「まさか来てくれるとは」

近所だっていうから、またあとで来てくれるのかと思った。人混みで離れないようにと、先ほどよりも近い距離で歩いてくれる鳴に、なんだか嬉しくなった。


「ねえ、屋台で何か食べようよ」
「金持ってねーから貸して」
「返すタイミングないでしょ」
「今度コンビニ行った時」
「もう、仕方ないなあ」


そう言いながら、鳴と会う口実ができたのは嬉しかった。何を食べよう、あたたかい物がいいな、甘酒飲みたい。屋台を見ながらゆっくり歩いていたら、成宮先生と合流するのが遅くなってしまったけれど、先生は特に怒りもせず私たちを迎えてくれた。

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