小説 | ナノ


▼ 07

「そういえば、成宮くんは」
「鳴!」
「……鳴は寮じゃないの?」

私の家から駅までは10分ほどかかる。向こうも駅から歩いてきたのか、私の案内なんてなくともずんずん歩いていく。

「流石に年始は実家だよ」
「あの外国人さんも?」
「カルロは東京出身だよ」
「そうなんだ」

名前も知らなかったけど、多分同じ人を想像しているだろう。前に稲実で会った時、私に声をかけてきた長身の人。


「……どしたの、寒い?」
「あーいうのがタイプなわけ?」
「ん?」
「カルロのこと、タイプなの?」

ポケットに手をつっこんで、顔もマフラーに埋めている鳴。いつも以上に表情は見えないけれど、コンビニに来てくれた時よりかは何考えているのか分かりやすくなった気もする。

「タイプじゃないよ」
「ふーーーん」
「顔だけなら鳴のこと、すごく好き」
「なっ!?」
「顔だけね」

念を押すように繰り返す。しかし、顔がすごく好きっていうのは本当だ。かっこいいと思う。「鳴はチャラついている人」って思ったら、なんだかさらっと言えた。だけど。


「な、んでそういうこと言うのさ!」


なんで、彼はこんなにも真っ赤になっているんだ。


「……照れているの?」
「そりゃ、突然タイプとか言われたらそうなるじゃん!」
「どーせ自分も色んな子に言っているんでしょう」
「言わないし!」
「でもナンパ、」
「しないし!前のはカルロが!話しかけていたから!」


立ち止まり、私の腕を掴んで正面を向かされる。これは肯定してあげないと、離してもらえない。

「そう、なんだ」
「ナンパとか全然しないし!一途だし!」
「へえ」
「……ほんとに分かった?」
「うん」

しっかり頷けば、ようやく向こうも頷いて腕を開放される。寒くないのかな。あまりにも彼がずんずん歩いていくので、いつもより早く駅まで着いてしまった。私は定期があるので、切符を買う彼を待つ。


「おまたせ」
「鳴ってさ、」
「ん?」
「テンション高い方が喋りやすいよね」
「は?」
「なんか最初の頃ってクールぶっていたじゃん」

何を考えているのか分からなくて、正直喋りかけにくかった。それを伝えれば、わなわなと震える。

「クールぶって……!?」
「後輩とそのノリだったし、今日のが素でしょ?」
「俺だっておとなしい時あるし」
「そう? でも私といる時はテンション上げていって」
「……仕方ないな!わがまま聞いてあげるよ!」


デレを隠し切れないツンとしたセリフに、私はマフラーの中でこっそり笑ってしまった。

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