小説 | ナノ


▼ 04

「へー、茶道部も練習試合あるんだ」
「練習試合って……ただのお茶会だよ」

二学期に入り、御幸くんとも雑談をするようになった。ちょうど先週の席替えで前後の席になってからは、その機会もさらに増えている気がする。


「でも稲実ねえ」
「顧問の先生同士が仲いいんだよ」
「鳴と会えるんじゃねえの?」
「うーん、どうだろ」

シャーペンを無意味にカチカチ鳴らし、戻して、もう一度出し、先ほど配られた進路希望アンケートに名前を書く。御幸くんは書く気がないのか後で書くのか、もらってすぐ引き出しへ入れていた。


「あれ、あんまり会いたくない感じ?」
「そういうわけじゃ、」
「鳴は喜んで会いにくるだろうに」
「それはないでしょ」

まさか、そんなことはない。それを伝えれば、御幸くんは目を丸くしている。

「いや、あいつ絶対飛んでくるじゃん」
「なんで?」
「なんでって……あいつの態度みたら、こう、分かんない?」
「成宮くんって無表情だから感情分かりにくいよ」
「……はい!?」

今度は声を大きくして驚く。御幸くんは表情までうるさいな。

「ちょっと待て、今って鳴の話だよな」
「うん」
「あいつのイメージ、どうなってんの?」
「言葉足らずで、何考えているのか分からないタイプ」
「ブフッ」

思った通りを伝えれば、御幸くんはいよいよお腹をかかえて笑い始めた。なんだかバカにされている気がする。

「っはー、笑った笑った」
「御幸くんは成宮くんと違って騒がしいよね」
「そんなこと初めて言われたわ」
「共通の知り合いいたら絶対言うよ」
「まー対極とは言われるかな」
「言われてるじゃん」

何なんだこの人は。ちょっとむっとすれば、ごめんごめんと軽く謝ってくる。



「ま、稲実で素の鳴みてくれば?」
「見てくればって、簡単に言うけど広いんだから、」
「野球部のグラウンドなら入ってすぐ右な」
「いやいや、他校の生徒が駄目でしょ……」
「私服なら大丈夫だって」
「(私服……ってわけでもないんだけどなあ)」

校外から見に来る人、結構いるし。そう言われたものの、私は私服で行くわけじゃない。制服でもないけど。これ以上御幸くんと喋っていても埒が明かないと気付いた私は、予習する振りをした。まあ、結局御幸くんはそのまま話しかけてきたんだけど。

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