小説 | ナノ


▼ 055

「糸ヶ丘なんで朝からプロテイン摂ってんの?」
「ん?白河くんからもらった」
「おい勝之!なんで糸ヶ丘に媚び売ってんだよ!」
「プロテインで媚び売られる私おかしいでしょ、誕生日だよ」
「……誕生日?」

そういえば、成宮くんには聞かれたことがなかった。今日は私の誕生日である。朝もらったプレゼントはロッカーに置いてあるので、今持っているのは白河くんからもらったプロテインバーだけだ。確かに、誕生日っぽくない持ち物ではある。

「去年白河くんの誕生日に自販機で会ってね、1本奢ったの覚えていてくれたの。記憶力すごいよね」
「それ以前になんで糸ヶ丘は勝之の誕生日知ってんの?」
「神谷くんとの雑談で聞いたことあったから」
「聞くなよバーカ!アホ!」
「成宮くんのも神谷くんから教えてもらったんだよ」
「それはちゃんと聞いて!」
「えー……」

理不尽な意見に、なんと返していいものか。思った以上に美味しいプロテインバーをもさもさ食べ進めながら、一方的に喋る成宮くんの話を聞く。

「今回は何が気に入らないの?」
「べっつにー」
「糸ヶ丘の誕生日知らなくて焦っているだけでしょ」
「なっ!?」
「そうなの?別に気にしなくていいよ」
「気にしてないし!糸ヶ丘の誕生日とかどうでもいいし!」
「そこまで言われると傷つくんですけども」
「別に、糸ヶ丘が何ほしがっているとか、全然気にしてないし……!」
「(……かわいいな)」

きっと自分だけ受け取ったままなのが癪なのだろう、随分と気にしてくれている様子だ。あまりにも分かりやすいしょげ方に、思わず反応してあげたくなる。しかし、白河くんはそんな彼の様子なんて知らぬ存ぜぬだ。

「それ、もう食べているの」
「朝練したらお腹空いちゃって。これ美味しいね」
「味は知らないけど、成分はそこそこいいと思うよ」
「確かにタンパク質多いなあ、それでこの美味しさはすごい」
「糸ヶ丘は脂質とか糖質みてないでしょ」
「えっ白河くんそこまで考えているの?」

「脂質より俺のこと考えてくれない!?」
「ああごめん」

やっぱり運動をする身としては、そこまで考えていくべきなんだろうな。最近になってようやく偏った食生活を変えようとしはじめたが、やっぱり甘いものを食べたくなるし、お昼にたくさん食べることも難しい。そして、成宮くんに話しかけられるので白河くんと会話を続けることも難しい。

「で、何の話だっけ」
「糸ヶ丘の!欲しいもの!」
「気にしてないって10秒前に言ってたよね」
「ツンデレじゃん!分かれよバーカ!」
「ツンがきつい」

ほしいものか。難しいなあ。

3月のホワイトデーの時に、お返しでほしい物を聞かれたら素直に答えていた。おかげでちょっとしたものはすべて手元にある。ハンカチなんかはいくらあっても足りないが、神谷くんにもらったばかりなのでリクエストするのはちょっと違う気がする。

「あ、タオルほしい。首からかけられる大きさの」
「タオル?」
「うん。部活でいくらあっても足りないし」
「えーなんかふつー」
「うっさいな、じゃあもういいです」
「わーうそうそ!来週!来週までには!」
「いつでもいいよ。ていうかプレゼントだからせびるわけにも」
「いいから!待ってて!絶対自分で買わないでよね!」
「じゃあ夏までに買って。自分の買い物ついでにあれば買って」

夏大会に向けて、お互い忙しい。別に至急必要なものでもないし、何かしらのついでに見つけてもらえたらいいや。成宮くんもそのつもりだったようで、私たちはいつになるのか分からない約束をした。


(まあ野球最優先だからね)
(当然そうして)

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