あなたの選んだこの時を | ナノ

君の銀の庭

――そして、永遠が流れると共に、全てが終わった。

フレイドが目を覚ませば、其処は空虚で空白な世界であった。アメジストの瞳は何を映すのか、全く分からないが――唯一つ言える事は、自分はあの時、黒く染まっていくルークの姿を見る事しか出来なくて。それで、そして――!?
「目を覚ましたか」
目を覚ませば、レボルトが其処に居た。レボルトは自分と同じアメジストの眼、獰猛な目付き、まるで地獄の番犬と思わせる八重歯は相変わらずだ。確か、自分は――そうだ、イドの正体を知って…そして…。
「生憎、俺とソキウス、お前以外はイドに飲み込まれた――ネポスも、地球も」
「……!?そんな…!じゃあ、ペルブランド様とバーリッシュ様も――グラディスも、ベントーザも、あの二人も…!?」
「大丈夫だと信じたいだろうな。エゴを兼ね備えたグラディス達ならきっと生きているだろう」
「…違う!そうじゃない!」
「どうしてだ?」
レボルトの不自然な問いかけにフレイドはガックリ項垂れた。
「グラディスとベントーザならまだしも、ペルブランド様とバーリッシュ様、それにクルード様が…っ」
ぽろぽろと涙を流すフレイドに、ソキウスは「相も変わらず仲間思いだな」と言う。すると、フレイドは全てを思い出した顔をした。
「―――そう、だ。思い出した」

「―――ルークの未練がイドになった時には…翔悟が理になった時点、全て、偽りに塗り替えられていたんだ」

フレイドは思い出す。自らの記憶も偽りに塗り替えられていたのだろう。
「あの時…翔悟が理になった時点で彼の記憶は全ての者から失われてはいなかった――だが、ルークが翔悟の理と化して、段々辛い思いをして、心が濁り切っていた。其れを見かねた私は――ルークをネポス・アンゲリスに誘き寄せて…翔悟からの伝言を授けようとした時に――イドが現れて、全てを偽りに変えてしまった。じゃあ、私が喋れる様になったのも――理が変化していたから――?いいえ、違う。シュトルツの屋敷で落ちていたのは硝子のロケット――ルーク―――ルーク!」

フレイドはルークの安否を心配していた。此の儘世界は滅んでしまうのか?いいや、そんな事はさせてたまるか!とフレイドが振り返ってみるも、ルークの姿は見当たらなかった。どうして、こんな事になってしまったのか…自分の責任だ。ルークの思いを分かってあげなかった自分の責任だ――。
フレイドがエゴを具現化させると、くるくる回転するように現れたのは小さなドア。だが、彼にとっては何かの脅威が待ち受けているのであろう、警戒を怠ってはいない。フレイドがドアを開けようとした瞬間に、レボルトとソキウスが「待て」と肩を叩いた。
「俺も連れて行っても良いんだぞ」
「レボルトの言うとおりだ。友人だからな」
確かに、レボルトとソキウスを信用してもいいのか分からない。だけど、この非常事態だ。一時協力をするしかない。
「分かった。協力をさせ――――――て――」
段々、喋れなくなった。フレイドが喉に手を当てると、理が変わったのだと知った。
「成る程、理にイドが浸食した為――お前を抑える力が解除したのか。だが――また理の抑制が変わってしまったか」
「……………」
喋れなくなったフレイドは、文字で説明をした。
『ごめん』
「いいや、お前がまた力を失ったと言うのなら――俺が協力をしてやろう。光栄に思え」
フレイドはコクリと頷くと、ドアを開こうとした。
「準備は良いか」
「覚悟は出来ているか?」
出来ている。とフレイドは頷くと、覚悟と決心をしたようにドアを開いた。

崩れゆく空、破壊された街、蠢くイド。
フレイドがドアを入ると空から落下する。落下するように現れたのは漆黒の繭。自分を取り込もうとするのであろう。フレイドはレイピアを具現化させてエネルギー状の針を飛ばし、イドを消滅させた。

『ボーンの力を使える?』
フレイドは文字で語り、ソキウスとレボルトはコクリと頷いた。
『生憎、一部の力であるが…ボーンの力を使えるみたいだ。俺のウロボロスの力は異空間を形成する力であるが』
『ケルベロスの力は雷を放つ。つまりボーンの力とエゴの力を一体化させる事が出来るのだろう』
フレイドは意味が分からないと説明をすると、レボルトが語る。
『――理が、変化しつつある。ボーンの理も、その適合者が絶望から救われた意味も――』

ダークスパイダーの形を模したイドが此方に襲い掛かって来る。フレイドは空中から空間能力を使い、イドの一部を空間で切り取った。レイピアで切断をし、イドは真っ先に消滅をした。
(――――成る程、私でも対処し切れる相手だ)
ホワイトボーンを模したイドならある程度対処し切れるが、アイアンボーンを模したイドは如何対処出来るのかが分からない――すると、腹を力強く殴られ感触をし、前を見れば――梟を模したイドが居た。
(…ダークオウル!ウルーラのボーンか…!)
ソキウスの部下であるウルーラは、足技を使って相手を翻弄させて時間を使い、格闘術で倒しているアイアンボーンのエクェスであった。今はボーンが存在しない世界で、まさかのアイアンボーンをイドが写し取るとは思ってもいなかった――が今の衝撃で体がよろけた…まずい!またあの衝撃を受ければ…!
バリバリッビリビリッ!
突如イドに雷が落ち、後ろを振り返ってみれば――雷を放ったレボルトが居た。ソキウスも居る。
「生憎、俺は暇ではないのでな」
レボルトはそう言い、混沌に落ちた惨状を見る。

「――そうか、此処が、魂の揺り篭と言える地か」