あなたの選んだこの時を | ナノ

Labyrinth

「結局、神が選んだ事なのか、それとも、神の枷に囚われてしまって他の星の住民が怯え続ける日々なのか――分からないな」
ソキウスはそう言い、始まりの魔神の伝承に関わる文章を読んでいた。始まりの魔神とは何か。神の枷とは何か。何故、神の呪縛に囚われた人は、生き永らえてはならないのか。
「俺は、始まりの魔神に囚われ、人が居る地を――『魂の揺り篭、或いは揺籃』と呼んでいる」
「流石、俺の相棒。推測は出来る所まで出来るな」とレボルトは苦笑する。始まりの魔神の枷に囚われている人は、どうやって生きているのだろうか?何故、呪縛に囚われないといけないのか?

(――其れは、俺自身が知った事だ)
イドを消滅させ、舌打ちしたレボルトは――フレイドを見た。彼は凛々しく、全ての者を守る為に其処に立っている。例え世界を敵にしようが、例え――竜神翔悟とルークを見殺しになる結果になろうとも。フレイドは凛々しく立っている。
(フレイドがペルブランドとバーリッシュを失いたくないと言う思いをしてるのも――俺がソキウスと一緒に、仔の理を壊すのも、一緒なのかもしれないな。例え、悲劇だろうが、何だろうが)
レボルトはエゴを具現化させる。其れは、黄金の槍だった。全知全能の神オーディーンはグングニルと、スレイプニールと共に戦場を歩んだと言う。自分がオーディーンならば、ソキウスは宛らロキだろう。気紛れの神であり、善にも創造にも破滅にも悪にもなれる偽りのトリックスター…。ソキウスは魔術書を具現化させ、其処に立っている。
『ルークが居ると思わしき場所を見つけた』
「其処は何だ」
『貴方は魂の揺り篭と言っていた。此処は魂の揺り篭――滅び行く世界の成れの果て。此処が、最果ての地となるから、私はルークの気配を察知した』
フレイドはそう言い、硝子の迷宮へと飛び込む。
『さあ、行こう。ルークを助けなくては!』

適合者は絶望から救われたのか、其れとも――。



硝子の迷宮に辿り着けば、イドが襲い掛かる。
「全く喰えないイドだ――しかも、ダークイーグルのイドとは」
ダークイーグル。バイズのボーンである。飛行類のイドがやって来るとは、少々厄介な事だ。だが、空間を司るソキウス、フレイドには相手には少々力不足であろう。ソキウスは、空間で体の一部を抉り取った。
「その通りだな。年寄りの部下となると少々空間の力を使うのは面倒だ」
ソキウスはそう言って、飛行してくるイドの大群を――空間転移させた。向かうのはソキウスが創りし異空間であろう。だが、フレイドにとっては、忌々しいものであった。
「おっと、君は此処で幽閉されていたのか。あの二人と一緒に」
「………」
反論は出来ない。もう直ぐ硝子の迷宮を抜ける頃だ。硝子の迷宮を抜けると、荊の教会があった。
「荊の教会――木属性なのか?」
すると後ろに荊が襲い掛かって来た。這いよる荊に対処出来ないと思い、咄嗟にエゴを具現化させていると――一筋の一閃が吹いた。
「…グラディスか」
「…レボルト様!?」
ダークソードフィッシュのエクェスのグラディスは、久々の上司との再会に驚いていた。死んだ筈では?と混乱していると、ソキウスも居る。グラディスが混乱している最中、フレイドはエゴを仕舞う。
「俺も居るぜ」
グラディスの後ろに居たのは、ベントーザだった。ベントーザはしなやかなシルクの鞭を持っており、どうやらエゴの様だと分かった。フレイドは安堵し、文字を描く。
『良かった、貴方達が生きていて』
「生きているも何も、お主が生きていて何よりだ」
「…ったく、何なんだ、この空間は」
『恐らく…イドのボスの心境が具現化された様だ。この木属性はもしかしてジャガーボーンの適合者の…』
「だったら、尚更早い」
レボルトはそう言い、槍で空間を切る。

「―――突っ走るぞ」

『ルーク』
伝え切れなかった言葉がある。其れでも、貴方はこの言葉を受け止めてくれるか。例え、私が分かってくれなくても、例え、私が光を失う事になっても。
―――――例え、この先が絶望だとしても。