ともすれば君は独り

 あれ、また泣いてるじゃねえか。こいつ、泣き上戸か? まーた涙が目尻に溜まって零れてやがる。
 なんつーか、世話がかかる。ま、そういうところもかわいいか。鳴戸のヤツも、こいつのこういう些細なことから惚れてったんだろうな。何となく分かる。俺も男だからな。
 しかし、どうしたもんか。
 この間よりかなり深く寝入ってるみてえだし、キスの一つでもして……って、オイオイ! 俺はホモじゃねえ! 危なかった……けど、なんかしてやらねえと泣き止まねえし、ま、しゃーねえ。撫子、言っとくが浮気じゃねえからな。
 さて、では……。
 そっと屈みこんでキスしてみることにする。眼は開いたままじっとヤツを見ていると、唇が触れた途端、少し瞼がピクッと動いたが起きる気配は無さそうだ。
 しかし、相変わらず柔らけえ唇だぜ。触れ心地バツグン。しかも、甘い味がして美味いしいいにおいもする。サイコーだな、こいつは。男にしておくのが勿体無ぇぜ。
 舌入れたら、起きちまうかな。ま、起きたらそん時だな。だって、未だ泣き止まねえんだもん。仕方ねえ。仕方ねえからするんだからな、撫子。
 ちろっと舌を出して唇を舐めてみると、ブワッと咥内に甘い味が拡がる。唇でこれだけ甘いんだ。ナカは一体どうなってやがんだ。つか、こいつの人体の不思議は何処から来るんだ? 甘すぎるだろうが。
「ん……おやぶん……」
 おお、起きるか。しかし、起きない。どころかもっと泣いてるじゃねえか。なんでだ! 無意識に俺が鳴戸じゃないって分かってるからなのかどうなのか、知りたいところだ。
 ってことで続けさせてもらうぜ! 悪ぃな、鳴戸!
 もう一度、ちゅっと音を立ててキスすると、やけに従順に口を開いてくれた。よし、今がチャンスだ!
 舌を伸ばして咥内へ入れ込むと、ナカは生温かくってぬるってしててそんで、とてつもなく甘かった。甘いなんてもんじゃねえ。こってりしすぎてはちみつそのまま食ってるみてえな、そんな感覚だな。
 でも、何処かクセになる。クセになっちまうんだよ撫子! あー、もう止まんねえ。止まらねえぞ俺は!
 さらに奥に舌を入れて大きく舐めると、酔っ払っている所為なのか何なのか、鳴戸と間違えているのか積極的にヤツの舌が動き出し、俺の舌を舐めてくる。クッソ、かわいい。なんだこの拙い舌使い。これが大の男の舌の使い方かね。おぼこいなあ、こいつ。きっとこういうところも、鳴戸は気に入ってんだろうな。ま、分かる。分かるよ鳴戸くん。
 なんて余裕ぶっこいてる暇なんてねえぞ! かわいい、こいつはかわいいぜ!! 責め甲斐もあるっつーモンだ。
 そのままヤツの舌を絡め取るようにしてぢゅぢゅっとヨダレを吸ってやると口いっぱいにヤツの甘い味が拡がる。なんか、飴玉食ってるみてえだ。しかも特上に甘いヤツ。でも、なんか何度でも欲しくなっちまう味だ。
 そのまま心行くまでしっかりと上顎も舐め、舌はこれでもかってほどにまで舐め回してヨダレも吸ってやったし、龍宝の野郎は息を上げて俺とのキスに夢中になっている様子。
 また、この息遣いが上手い。なんつーか、すんげえ色っぽいんだよな。男って性を思いっ切り煽ってきやがるような、そんな溜息にも近い吐息をつかれもはや俺の頭の中はめちゃくちゃだ。
 ついでに、龍宝もめちゃくちゃになってやがる。
 いつの間にか首に空いてる手が回されていて、ますます強く唇同士がくっ付く。この煽り方も上手いもんだ。これはあれか? 鳴戸仕込みか。まあ、そうだろうな。こいつが意識してやってるとも思えねえ。つか、天然モノだとしたらとんだ淫乱だぜ。
 さて、と。キスもしっかり堪能したし……ちょっと、腹でも見ちゃおっかな。撫子、これはただの好奇心だからな。浮気じゃねえぞ。
 そっと唇を離し、ピチピチエロエロ服に手をかけて、ついっと引っ張ってみると引き締まった腹筋が見えた。それと共に、真っ白な肌も見えた。
 うっわ! 触りてえ!! あー……肌もきっと、気持ちイイんだろうなあ。キメ細かそうだし。触りてえなあ。悪ぃ、鳴戸! 触る!! 我慢できねえから触るわ! てか、さほど我慢もしてねえけどな。
 そろりと服をたくし上げると、引き締まったヤツの肢体が露わになり、呼吸によって微かに上下している。
 なんと、まあ。色っぽい野郎だなあ、こいつは。けしからん、けしからんぞ!
 よって、このけしからん身体は俺がこうしてやる!
 がばっとピッチピチのエロ服を脱がすと、ぽつんとした乳首のお出ましだ。つか……なんで寝てるだけなのにこんなに色気が駄々洩れなんだこいつはっ!! エロすぎやしねえか? 言葉では言い表せねえ何かがこいつにはある。
 女の色気じゃねえ。かといって、男の色気かといわれるとそういうんでもなく……なんていうか、こいつ独特の何かだ。においと一緒。
 言ってみれば、人を惹きつけるなにか特別なフェロモンとでもいうのか、そういうモンが意識してないと駄々洩れになっちまうんだな。だから、こいつも気を付けているのかもしれねえ。
 つか、抱きてえ、なあ……。なんか、くっちゃくちゃにしてやりてえ。

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -