破瓜

 セックスでイニシアチブをとることがこんなに愉しいとは思ってもみなかった。女相手では勝手が違うと思っていたが、相手が鳴戸だと思うとここまで奉仕できてしまうのだ。
 不思議な感覚だが、きらいではない。寧ろ、好きだと思う。誰に対しても冷めた感情しか抱けなかった自分が、こうして熱心に他人の身体を愛している。
 他人ではなく、鳴戸だが。
 もっと気持ちよくなって欲しいと、また身体を擦り下げてゆき、ペニスを口に咥え込みながら手を伸ばして両乳首をいじる。
 すると鳴戸の戸惑っているような、なにかを我慢しているようなそんななにかを押し殺した声が龍宝の耳に届く、
「はあっ、はあっ……も、いい加減いいだろ。俺もそろそろ限界だわ。イっちまってもいいが、お前ン中でイキたいし、そろそろ離しな。ありがとな、龍宝。もういいから」
「ん……未だいいでしょう。もうちょっと……」
「ここで打ち止めにしちまうぞ」
 その言葉に、慌ててペニスから離れて身体を起こすと鳴戸も身体を起こし、額にちゅっと口づけられ唇にもたくさんのキスが降ってくる。
「すっげえ気持ちよかったぜ。お前はイイコだな、口は上手ぇし手も上手いって商売女かお前は」
「比べないでください! 俺は……親分が気持ちイイと思ってくれればそれでいいんで、気持ちイイって言ってもらえるのが一番の誉め言葉です。良かった、ですか……?」
 すると、両手で頬を包み込まれて両手の親指の腹ですりすりと肌を撫で擦られる。
「気持ちよかった。今までされた中でも、お前が一番上手くって興奮した。ありがとうな、しゃぶってくれて。嬉しかったぜ」
「はいっ……! そう言ってくれれば、俺も報われます。親分の濃い味、美味しかった……」
 そう言ってはにかむと、目の前の鳴戸もふんわりと笑み顔が近づいてくる。
 反射で目を瞑ると、唇にふわりとした真綿の感触が拡がり、次いで湿った舌が唇を舐めてくる。ためらわず大きく口を開けるとするりと舌が咥内に入り込んできて龍宝も応えるように舌を鳴戸のモノと絡めるようにして動かすと、じゅわっと唾液が溢れ出てくる。
 それを、二人で分けてのどを鳴らして飲み下しつつ、濃厚なキスは続く。散々舌を舐め合い、柔く食み合って最後にもう一度、唾液を飲み下し合うと待っていたのは熱い抱擁だった。
「あー……! すっげえ、気持ちイイ。セックスってこんなに気持ちいいモンだったんだな。今まで俺がしてきたのはなんだったんだ」
「俺も、すごく気持ちイイです。おやぶんが悦んでくれるのも嬉しいですし……満たされます。幸福な気分というのはきっと、こういうことを言うんだと……」
 言葉を途中で切り、龍宝も鳴戸の背に腕を回して抱きつき共にベッドに転がる。
「はあっ……おやぶん、きて、きてください……ナカ、挿れて……挿れてください」
 わざと下腹を手のひらで撫でると、ごぐっと大きく鳴戸ののどが鳴る。
「お前、その誘い方は反則だって……! 分かってんのか、自分の色気の強烈さを! まったく、とんだ淫乱子ちゃんだな、オマエは。まいるぜ」
「おやぶんの所為ですよ。おやぶんが、俺を淫乱に仕立て上げたんです。責任、取って挿れてください、ココ……もうゆるゆるですよ。おやぶんが、ゆるゆるにしたココに、早く挿れて」
 そう言って、自分でアナルを指で開いてみせると鳴戸の顔色が変わり、頬がほんのり赤く染まった。
「っかー! エッロいなあお前はホントによおっ! すんげえ色っぺえな。こりゃ極上モンもいいところだぜ。どっかの遊女みてえだな、エッロ」
「エロくしたのは、おやぶんです」
 ぴしゃっと返すと、鳴戸は苦笑いからご機嫌の笑みに変わり早速龍宝の両足に手をかけてくる。
「んじゃ遠慮なくいかせてもらおうかな。だが、言っとくが最初はかなりつらいと思えよ。初めてだからな、結構キツイと思うが、もうそれは我慢してもらうしかねえ。だから、いやがっても止めねえぞ。それだけ言っとく」
「分かり、ました。……平気です、きて、いいですよ。早く、きて……んっ」
 さらに手でアナルを拡げると、足の間に鳴戸が入ってきて掬い上げられるように邪魔になっていたであろう、両脚を折り曲げさせられ何もかもが丸見えの恥ずかしい体勢を取らされる。
 これには羞恥を隠せなかったが、アナルは少し奥まった場所にあるためそれも仕方ないと、無理やりに諦めて自分から膝裏に手を入れて足を上げ拡げる。
「よし、イイコだ。んじゃ、そろそろいくぞ。我慢だ、龍宝。ガマンを忘れるな」
「ん……はい。早くっ……」
「おっと! その前に、俺のブツにもクリームを塗して……痛くないようにな」
 このままの体勢で待つのは恥ずかしいが、何とも思いやりのある抱き方だと思う。龍宝は目を伏せながら鳴戸の準備が整うのを待つと、足の間に戻ってきた鳴戸が内ももに何度もキスを落とし、早速ペニスをアナルに押し当ててくる。
 ただそれだけでもアナルは熱を持ち、ぐぐっと先端が入り込んでくる。
 指とは圧倒的に違うその質量と大きさに、思わず呻いてしまう。キツイ。これは、かなりキツイ。
「うううっ、ああああ、くるっ、しいっ……! お、おっきいっ! おや、おや、おやぶん、苦しいっ! あっあっ、うううっ!」
「我慢だ。この先っぽさえ入ればあとは……」
 さらにぐっと腰を使われ、亀頭がすべて入り込みカリまで埋め込まれると苦しくはあるが、なんとなく第一関門は突破できたように思われる。
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