優しくて残酷で愛しい

 それが愉しく、そして嬉しかったのでもっと鳴戸を感じたいとしきりに手で肌を擦りたくっていると、もじっと鳴戸が身じろぎ身体を離してくる。
「コラ、手。くすぐってえだろ、止せって。俺はお前の肌の方が気になっていたいんだから、止しな」
 だが、龍宝は聞かずにぎゅっと鳴戸に抱きつき胸へと頬をくっ付けすうっとにおいを嗅ぐ。
「おやぶんのにおい、いいですね……すごく、安心するにおい。はあっ……気持ちイイ」
 すると、今度は止められはしなかったが鳴戸の手が積極的に龍宝の肌を這い回るようになり、背中はもちろん、肩や首筋、胸に下腹、そして足もしっかりと撫でられつい身体を熱くしてしまう。
 こんな心地のいい触れ合いなど、したことがない龍宝にとっては何もかもが新鮮でそして愛おしかった。
 優しく肌を撫でられたことも、鳴戸が初めてでこんな触れ合いもあるのかと驚くほどだ。それほどにまで、鳴戸の手つきは優しかった。自然、だんだんと汗をかいてきてしまい肌が湿り気を帯びるようになる。
 いつのまにか素肌の色も薄ピンク色に変わり、匂い立つ色気というものを発し始めているのを龍宝は知らず、何故に鳴戸がやたらと興奮気味に触れて来るのか分からないでいた。
 ただひたすら、手のひらで味わうように龍宝に触れてくる鳴戸。その熱さに、翻弄されつつ幸福を感じ、ベッドの上で鳴戸の足の間に挟まって愛撫を受ける。
 そんな鳴戸のモノは既に硬く勃起しており、動くたびに揺れていて気になってはいるが、どうしても触れられずにいると、鳴戸の手が龍宝の首を大きく撫でた時だった。
 先端の鈴口からトロッとカウパー液が零れ出し、それはサオを伝ってベッドに染み込んでいったのを見て、思わずそろりと手を動かしてピトッと人差し指を鈴口に押し当ててみた。
 途端、ビグッと鳴戸の身体が大きく動きまるで信じられないと言った表情で龍宝を見てくる。
「なにすんだ、いきなり」
「え、あの……いけませんでしたか? その、ソレが触って欲しそうに見えたので」
「いけなくはねえけど、どうした? 驚くじゃないの、積極的にお前がこんなとこ触るなんて」
「俺だって男ですよ。気持ちイイ場所くらい分かってます。……それに、これは男のモノですけど、俺にとっては男、ではなく親分の、モノですから。触るのに嫌悪はありません。もっと、触れてもいいですか? 触りたいです、親分のコレ」
「大歓迎だけどよ、お前はそれでいいのか? 無理とかしてるんだったら止しな」
「無理じゃなくて、なんて言うのかもっと親分のことが知りたい。いろいろ知って、気持ちイイって感じて欲しいんです。男の俺を抱くんですから、それくらいしないと申し訳なくて……」
 そう言って俯き、もう一度人差し指で鳴戸の亀頭を二度ほど突くと、その手を止められて口づけられる。
「おやぶん……?」
「あのな、お前が男だからってそんな引け目に感じることはねえよ。そういう理由だったら、触らなくていい。俺はただ、お前だから抱きたいってだけでお前もさっき言ったけど、男だから抱きたいんじゃなく、お前だから抱きたいって思う。分かるか? だから、申し訳ないとかそういうことを言うんだったら触るな」
 その慈愛の篭った言葉に、俯きながら思わず目尻に涙を溜めてしまう。
 優しい人だと思う。心底に優しくて、そして残酷な人。
「だから泣くなって。お前に泣かれるとどうしていいか分からなくなっちまう」
「おやぶんは優しい……同情でも、嬉しいです」
 その言葉を口から出した途端、あごを取られぐいっと上向かされる。
「おい、勘違いしてんじゃねえっての。誰が同情で男なんか抱くか。俺は元々、女好きだっ! だから言っただろう、お前だから抱きてえって。同情なんかじゃねえよ! なにをお前、言っていやがんだ。怒らせてえのか、俺を。いくらかわいいお前だからって、俺でも怒るのよ?」
「だって、女好きならなおさら、男なんて抱きたくないでしょう? だから同情だと……」
「お前ってさ、なんにも分かっちゃいないのな。なんでも知ってるような顔してるけど、何も分かっちゃいねえただのガキだ。呆れかえってものも言えねえぜ」
「だ、だって……! だって!!」
「なんだよ、だってなんだ? 何か言い分でもあるのかよ。聞いてやるから言ってみな」
 思わず押し黙ると、先ほどと同じく優しく頭を撫でてくれ、ゆっくりと髪を梳かれる。
「……ごめんな。怒ってはいねえけど、呆れてはいる。っつーかあれだったな、お前が複雑なヤツだってこと忘れてたわ。そうだな、もしかしたら同情かもしれねえけど、それにしちゃあお前に抱いてる気持ちはそうじゃねえんだ」
「どういう……言ってくれないと分かりません。俺には、何も分からなくて……」
「いいんだ、今はそれでいい。難しいことはこれ以上考えんな。黙って、俺に抱かれろ。俺も、もうなにも言わねえよ。……今からするキスで、このやり取りは終いだ。それ以外のことは喋ってもいいが、男だとか女だとか同情だとかそういったやり取りは終い。埒が明かねえ。分かったな?」
「……はい。分かりました。もうなにも言いません。おやぶんがそう言ってくれるのなら、黙ります」
「よし、イイコだ。べつに、会話を止めようって言ってるわけじゃねえからな? この話だけが終いって言ってるだけだから勘違いすんなよ」
 龍宝は緩く笑い、鳴戸の頬に手を当ててすりすりと手で擦る。
×
「#年下攻め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -