フレイヴァ―・スキン

 すると、鳴戸は徐にベッドに腰掛け両手を拡げてくる。
「来い、龍宝。抱いてやる」
 優しげな笑みに欲情を浮かべた鳴戸を見た途端、まるで飛びつくように抱きつき熱い吐息をつく。
「おやぶんっ……!」
「こんなもん巻いてんじゃねえ」
 さっさとタオルがまたしても取り去られ、全裸を晒した龍宝の肌に早速、鳴戸の手が這い始める。その武骨な熱い手のひらの感触に思わず身体を震わせてしまう。
 待ち望んでいたものが手に入る。
 これだと思った。自分の欲しかったもの、手に入れたかったものはこれだ。今ハッキリと何もかもが分かったような気がする。
 そうなると欲望に忠実になりたいのは人間の性か、龍宝も鳴戸の肌に手を置いて撫でてみる。未だ身体に水分が残っているのか、少し湿気っていてそして熱い肌だった。引き締まった身体は硬く、男性的魅力に溢れていてその身体に抱かれていると不思議と気分が高揚してきてしまう。
 そして何よりも龍宝を興奮させたのがかおりだった。鳴戸の持つ温かな肌のかおりが漂ってきて、身体を包まれている所為でさらに濃く感じるそのにおいは容易く龍宝の欲情を運んでくる。
「は、はあっ……おやぶん……」
 ぱさっとベッドに倒され、鳴戸が見下ろしてくるその瞳をじっと見つめる。穏やかな中にも、激しさが潜んでいるようなそんな瞳が弧を描き、手で頬を包み込まれ親指の腹で撫でられる。相変わらず熱い手だ。
「大丈夫だ、ひでえことはしねえ。キレーなツラ晒して……眼ぇ、瞑んな」
「ん……」
 そっと瞼を下すと、ぎしっとベッドが大きく軋み鳴戸が覆いかぶさってくる気配が感じられる。キスでもされるのだろうかと思いきや、首元に顔を埋められうなじに何度も口づけられ小さく舐められる。
 僅かな快感でも拾ってしまうということは身体が敏感になっているのだろうか。ぼんやりそんなことを思っていると、すんすんとにおいを嗅がれ今度こそ唇に柔らかなものが押し当たる。
「ん、んっ……」
 温かで湿ったそれは角度を変えて、何度も口づけてきて思わず息を上げてしまう。無意識のうちに口を開くと、舌で咥内を舐められまた口づけられる。一見遊んでいるようなそれだが、充分官能は引き出されてくる。
 ぺちゃぺちゃとひたすら舐めしゃぶられ、とうとう本格的に口のナカへと鳴戸の舌が忍び込み、べろりっと大きく舌を舐められる。ぞくっと、背筋が快感で震える。
「んんっ……はっ、んむっ……んむぅっ」
 つい両手を上げて鳴戸の首へと腕を回すと、口づけはますます激しくなり舌を柔らかく食んできては舐めてきての繰り返しを何度もされつい息が乱れてしまう。だが、気持ちイイ。とてつもなく心地いい。鳴戸とキスすることが、ここまで快感を呼ぶとは思っていなかった。好きな人とこうして過ごすことの幸せを噛み締め、キスに溺れる。
 ふっと唇が離れてゆくと同時に眼を開けると、そこには少し頬を紅潮させた鳴戸が至近距離で龍宝を見つめており、ぷちゅっと音を立てて頬に口づけが落とされる。
「ほっぺた、真っ赤じゃねえか。気持ちイイか、そのツラは」
「はあっ、はい。とっても、気持ちイイ……もっとして欲しいです、もっともっと、おやぶんが欲しい」
 甘えるように鳴戸の片手を取り、頬へと押し当てて顔を擦りつけると、じわっと鳴戸の瞳に欲情が滲み出て、それを熱い眼差しで見つめる。もっと興奮して欲しい。そして欲しがってもらいたい。
 さらに手にすりすりと擦り寄り、わざと色気のある顔を作って笑んで見せるとごぐっと大きな鳴戸の喉仏が上下し、頬に触れている手の熱さが増す。
「鳴戸おやぶん……」
 とどめとばかりにとびっきりの甘えた声で鳴戸を呼ぶと、龍宝が取っている逆の手が伸びてきて後頭部に添えられ、思い切り唇に吸いつかれる。
 口を大きく開くと当たり前のように鳴戸の舌が咥内に入り込んできてナカを大きく舐められる。その舌に絡めるようにして舌を動かすと、応酬になりぬるぬると舌同士を擦り合いながら溢れ出る二人分の唾液を飲み下し合い、未だ欲しかったのでさらに舌を動かすと今度は柔く食まれ、龍宝も食み返すとまたやり返し合いになり、舌が痛くなるほど食み続け吸い続けて漸く唇が離れてゆく。
 その頃にはすっかりと息が上がっており、未だ頬に宛がわれていた手に手を重ね擦り寄り熱い吐息をつく。
「んっ、はあっ……はあ、はっ……おやぶん……」
「龍宝……」
 ゆっくりと手を離すと、自由になった鳴戸の両手は龍宝の身体の至るところを這い回るようになり、顔は首元に埋められる。
「あー……すっげ、いいにおいする……龍宝、いいにおいするなお前」
「ん、おやぶんも、いいかおりがしますよ、あったかくて優しいかおり……すごく、好きです」
「そっか、好きか。俺も好きだぜ、お前のにおい。甘くて、いいにおいだ……」
 男から甘いにおいがするのだろうかと不思議に思ったが、鳴戸がそういうのであればそうなのだろうと、龍宝も鳴戸の肌を愉しむべく手を動かす。
 思ったよりもずっと、触り心地のいい肌だ。もっとがさがさしているものだと思っていたのだがそうでもなく、しっとりとしたそれは龍宝の手を存分に愉しませてくれる。
 それに、散々触られていて思ったが体温が高いのだろうか。肌も手も、舌さえも熱く感じる。その熱さが愛おしく、手ですりすりと背中を擦ると龍宝の持つ熱と鳴戸の熱ですぐにでも湿り気を帯び、すると鳴戸のにおいがさらに濃くなる。
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