あなたを幸せにする全てになれたらいい

 すると徐に鳴戸が顔を上げ、龍宝を見つめてくるのに疑問符を頭に浮かべると、ぱくっとチョコが口に放り込まれ、いきなりだった。
 ぐいっと頭を片手で引き寄せられ、そのまま強引に口づけられてしまい、反射で口を開くとナカに半分溶けかけたチョコが舌で押し込まれてくる。そしてそのまま舌を絡め取られ口のナカでチョコが蕩けてゆき、それを二人で分け合う形で双方共ののどが大きく動く。
「ん、んっ……んんん、ふっは、あっ……んむ、んむ、んっ、っくん! お、おやぶん、いきなりなにをっ……!」
「いや、お前も味見したいかなって。すげえ美味ぇ」
「し、しれっと……!」
「あ、そうだ。んなあ、今日の朝からコース、これ毎年の定番にしねえ? バレンタインは、午前中に神社に行って、午後少しゆっくりして夜は俺が用意したレストランでめし食って、ホテルとってお前の手作りバレンタインチョコを食べながらシャンパンを飲むっていうさ、そういう日」
「それはいいですが、親分こそいいんですか? 来年……毎年、あるかどうかも分からないのにそんな約束を俺と取り付けてしまって」
 その言葉に、鳴戸のチョコレートを食べる手が止まる。そして、意外そうな顔をしてこんなことを聞いてきた。
「なに、お前はもうすぐにでも別れるつもりなのか?」
「いえ、いえそうじゃなくて……ぬか喜びは、いやです。親分はそうですね、とても気ままな人ですから……俺を置いてすぐに、何処かへ行ってしまいそうで……」
 そう言って言葉端を掬うように黙ってグラスを傾けると、投げ出してあった手に鳴戸の手が重なる。
 その熱い手はぎゅっときつく龍宝の手を握りしめてきて、思わず顔を上げて鳴戸を見つめてしまう。
「そんなに、信用ねえかなあ俺。これでもちゃんと、お前のことを愛してるつもりなんだけど……なんかなあ、伝わんねえよな。残念だけど、まあ仕方ねえか、って諦める俺だと思うか?」
「えっ……」
 空いていた手でぐいっとグラスの中身を煽った鳴戸に驚いていると、そんな間もなく握り合っていた手を思い切り引かれ、身体がぐらっと鳴戸の方へと傾くと同時にがっしりと支えらえられてそのまま抱き込まれるようにして身体に腕が回る。
「んー……いいにおい。甘いにおい……」
「あ、の、おやぶん、ちょ……」
「俺がさ、どういう気持ちでお前のこと見てんのか、いい加減ハッキリさせねえといけねえかもな。伝わってるつもりでいたのは俺だけで、一年お前と居たけど……何一つお前は分かっちゃいねえってことが今の会話で分かった。なら、分からせねえと。俺がどれだけオマエのこと好きで愛してるか、身体に教え込まねえとな。言葉で伝わらなかったら、身体しかねえだろ」
「おや、ぶっ……あっ!!」
 抱かれたまま、強引に椅子から剥がされそのままずいずいと歩を進ませてくる鳴戸に戸惑いながら、後ろ歩きでよたよたと歩き、バランスの取れないそれが怖く鳴戸にしがみつく形で足を後ろへとやると、とんっと何かに躓き倒れると思った瞬間、身体が柔らかいものにキャッチされ、ふさっと転がった先はベッドだった。
 鳴戸は結んでいたネクタイを緩めながら首元に顔を埋めてきて、龍宝のネクタイにも手をかけて来る。
「あ、あっ……おや、親分っ、ま、待って、待ってくださいいきなりそんなっ」
「いきなりなんかじゃねえよ。俺は朝からこういうこと考えてたぜ。神社で菓子食ってる時も、バイクに乗っかってる時もずっと、考えてた。お前をめちゃくちゃにすることばっかり、考えてた」
「そんなっ……」
 耳の後ろに顔を埋められ、唇と舌でくすぐるように舐められてしまい思わず身体がビグッと跳ねてしまう。ぶわっと、快感が舐められた箇所から拡がり一気に身体が熱くなる。
「やっ……あ、あっあァッ!!」
 はっ……と熱い吐息をつくと、それごと飲み込むように口づけられ、角度を変えてのそれにますます身体の温度が上がってゆくようだ。
 鳴戸の熱に、飲み込まれる。
 思わず口を開いてしまうと、するりっと鳴戸の舌が咥内へと入り込んできてナカを探られ、その情熱的な舌の動きに次第に龍宝からも自ら舌を伸ばして鳴戸のソレと絡み合わせて舌の上に乗った唾液を啜ると、鳴戸も同じくぢゅぢゅっと音を立てて舌を吸ってきて大きく互いののどが上下する。
「んはっ、はあっはあっ、あっはあっ……は、はあっ、おやぶんっ……」
「俺のモノになりなっていったその意味、お前には未だ分かってねえようだから、今から思い知れ。俺がどんな気持ちでお前の傍に居るのかをな」
「おやぶんの、気持ち……?」
 性的な意味を含めて鳴戸の手が身体のそこかしこを這い回り、龍宝は息を上げて身を捩る。
「そうだ、俺の気持ち。お前を想う、俺の気持ちだ」
「……じゃあ、俺の気持ちも知ってください。分かってないのは、親分もです。俺の気持ち、知ってください。俺がどれだけあなたを好きか、身体で知って……」
「龍宝っ……!」
「好き、おやぶん……あなたが、大好き……愛してます。あなたを、俺は愛してる」

 然して、それから五年が経ち――
 龍宝は鳴戸を後ろに乗せ、バイクを走らせる。自宅にはバレンタインプレゼントの手作りチョコが出番を控え、二人が向かうのは鈴生神社だ。
 そして、この五年欠かすことなく通い続けた顔見知りの祢宜さんに挨拶をする。
「今年もやっぱり、いらっしゃいましたね。これで五年目でしょうか」
「おう、来たぜ! 相変わらず俺らはラブラブよ! それより、今年も美味い菓子食わせてくれよな」
 その言葉に、祢宜さんは苦笑しながらこんなことを言った。

 来年も再来年も、そして来世でもお待ちしております、と。

Fin.
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