痛覚のない夜

 そのうちにじゅわじゅわと唾液が湧いてきたのでそれぞれ、分け合うようにして体液を飲み下す。
 この官能的なキスも、久しぶり過ぎて涙が湧いてくる。やっと、鳴戸の腕の中に帰って来た、そう思わせるように求められ、歓喜に震える龍宝だ。
 鳴戸も欲しがってくれている、それが分かるようなそんなキスに涙の量は増すばかりだ。
 そのうちに呼吸が苦しくなってきて、必死になって肺に空気を溜めようと思うがそれも上手くいかず、上顎を舐められ、その快感にぎゅうっと目を瞑って「はっ……」と息を吸い込むが、舌の下を探られた時点で思わず吸った息を吐いてしまい、またしても呼吸困難になる。
 そんなキスが長々と続き、目が潤んで涙が溜まる頃に漸く咥内から舌が出て行き、息を弾ませて至近距離にある鳴戸の顔を見つめる。
「はあっ、は、は、あっ、はあっはあっはあっはあっ……ん、はげしい、親分……激しいの、大好き」
「俺はお前の口のナカが好きかな。熱くって甘くってトロッとしててよお、気持ちイイ、口ン中」
 ちゅっと触れるだけのリップキスをされ、頬ずりされるその顔を引き寄せて龍宝からも擦り寄っては熱い吐息をつく。
「ん……おやぶん、好き……離れたくない、傍に居たい。ずっとずっと、傍に居たいです。もう……離さないでください。離さないで、傍に居て……」
 じっと二人は熱く見つめ合い、また口づけ合う。
 熱い舌が気持ちイイ。触れ合っている唇も柔らかくて少し苦く、そして甘い。これは間違いなく、鳴戸の味だ。そして、体温だ。龍宝より少し高めの、体温は久しぶりでも心地よく馴染み、またしても涙を浮かせてしまう。
 もう、二度と逢えないかと思っていた。今度こそ、本気で逢えないのかもと思っていたのに、逢えた。この遠い地、ラスベガスで再会できた。
 探し回ってはいたが、実は何処かで諦めかけていたという部分もある。
 鳴戸が組を畳んでギャンブラーになると言って数ヶ月。すぐに後を追ったが、いくら探しても見つからず、逢えないこのまま、イゴールと人生を共にするのかと思っていたその矢先、顔を見ることができた。声を聞くことができた。そして、こうして抱き合うことができる。
「っく……おやぶんっ……だい、大好き。もう、逢えないかと……二度と、こうして腕の中に入ることさえできないかと、思って……」
「泣くなよ、続きができねえだろうが。ほら、仕方のねえヤツだな」
 優しい仕草で涙を拭われ、潤む目で鳴戸を上目遣いで見つめる。すると、これ以上ない優しい笑みが見え、そのあまりの柔らかさにまたしても涙が溢れてしまう。
 それを鳴戸は、目尻に唇を当てて吸い取り、唇に口づけられぎゅっときつく抱き寄せられる。
「こいつはちっと、酷なことしちまったかな。ごめんな、龍宝」
「そういってすぐに誤魔化そうとするんですから……もう、何処にも行かないって約束してくれたら、許しますし泣きません」
「おっ、こいつ! ちゃっかりしてやがる。そうだな……行くところっつっても、お前何処までも追いかけてくるからなー。観念するしかねえか」
 その言葉に、薄っすらと笑んで鳴戸の背に腕を回しぎゅっと抱きしめる。熱い身体が心地いい。ほうっと心からの安堵の溜息を吐き、さらに抱きついたところだった。
 鳴戸の手が不穏に動き出し、剥き出しになっている上半身を性的な意味合いを籠めて撫で回し始めたのだ。
 熱い手は、身体のそこかしこを這い、だんだんとソノ気になるにつれやはり、気になるのは下半身だ。先ほど揉まれたからか、勃ち上がりまでの時間が早いと思う。
 むずっと腰を捩らせると、のど奥で鳴戸がくくっと笑う。だが、触れてはくれずその手はへその窪みへと這い、凹んで窪みへ指が無造作に突っ込まれたと思ったらそのまま掻き混ぜられ、快感のあまり思わず大きな声で啼いてしまう。
「うあっ! あああっ、あああうううっ!! うあっうあっ、き、気持ちいっ、気持ちいっ! おや、おや、おやぶん気持ちイイッ!!」
「おー、イイ声イイ声。やっぱこの声だよな。かーわいいの、顔真っ赤にしちまって」
「お、お、おやぶんの、いじわるっ……! やっやっ!!」
 そう言って熱い胸板を二、三度拳で叩くとずいっと顔が寄ってきて額と額がこつんと音を立ててくっ付けられ、唇の触れ合いそうな位置でニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた鳴戸が、へそをいじりながら挑発してくる。
「あ、はあっ、は、あっ! あっああっ、んっはあっあっあっ、き、気持ちいっ! 気持ちいっ! やっ、やっだめ、だめ気持ちイイです、だめっあっあああああ!!」
「エロい声だぜ……コッチに響くな。コッチにさ」
 手を取られたと思ったら、鳴戸の股間へと宛がわれそこは下穿きの上からでもこんもりと盛り上がっており、興奮が窺える。だが、龍宝は羞恥のあまり顔を真っ赤に染め上げて慌てて手を振り解き、口元へ持っていって手の甲を唇に宛がう。
「だーめ。口隠すなよ、キスができねえだろうが」
「やっ……だ、だって」
「だってもクソもねえの。その手退かしな。キスがしてえからさっさと退かせ」
 俺様な態度だが、何故か興奮すると思う。そっと手を退かすと、すぐに唇に鳴戸のソレが押し当たり、ちゅっちゅっと唇を吸うように口づけてくる。
 まるで遊んでいるようなキスだ。龍宝からも同じように鳴戸の唇を吸い、互いに吸い合いながら舌を舐めたり、柔く噛んだりとソフトな触れ合いを愉しむ。
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