君に捧ぐは荊のハート

 後、大きく息を吸い、それらをすべて声にしてイゴールの縫い合わせた頭に向かって言葉にして放つ。
「なんなんだてめーはさっきから一体!! 邪魔すんじゃねえって言ったよな!! いいから寝ろっ! 明日構ってやるからもう寝ろっ!! いいな? もうこれ以上邪魔したら明日、構ってやらねえぞ!!」
 ばんっと勢いよく扉を閉め、飛びつくように鳴戸の腕の中へと戻り、しきりに身体を擦りつける。
「おいおい、随分熱烈なお誘いじゃねえの。乗ってきちまったぜ」
「ちょっとくさいかもしれませんが……おやぶんがシャワーの時間さえ与えてくれないので、もうこのまま……抱いて、ください。あ、でも、くさかったら即シャワーできれいにしてきますので!」
「俺がお前をくさいなんて思うはずねえだろ。シャワーなんて浴びちまったら甘くっていいにおいが消えちまう。そんな勿体ねえことできるか! さ、ベッド行こうぜ。熱い夜にしてやる」
 そっと手を取られ、ベッドの縁へと座るとそのまま足を掬い上げられ、上着を脱いだ鳴戸がゆっくりと伸し掛かってくる。
 その首を両手で舐めるように撫で、くっと絞め付けてみる。
「あなたの、この首に首輪が付けられたらいいのに……」
「いっ!? くびわだぁ!?」
「そう。俺にしか見えない、透明な首輪……そしたら、何処かへ行こうとしても引き止められるでしょう? 俺を、置いていかないでしょう……? 淋しかった」
「龍宝……」
「何度も置いて行かれて、そのたびに泣いては探し回って、また見つけてこうして抱き合う。何度続ければいいんでしょう。この追いかけっこを。もう充分です。あなたを探して回って泣くのは、これっきりにしたい。本当にお願いですから、もう置いていかないで。ずっと傍に居てください……」
 すると、背中に腕が回りぎゅっときつい抱擁を受け、つい熱い吐息をついてしまう。
「何処にも、行かないで……傍に居て」
「悪かった。今度こそ何処にも行かねえから。お前の傍に、ずっと居る。約束すっから」
 少しだけ身体を離し、龍宝は鳴戸の頬を両手で包み込み涙を浮かせた顔を緩ませる。
「その言い訳も、聞き飽きましたよ、親分。いつもあなたはそうなんですから……そうやって、嘘ばっかり吐いて、俺を惑わせてばかりで……意地悪な人」
「意地悪はきらいか?」
 首を横に何度も振り、さらに笑みを深めてすりすりと頬を両手で擦る。
「もう、これっきりにするなら、きらいじゃないです。嘘はもう、充分……」
 近づいてくる顔。そっと眼を閉じると、目尻に溜まっていた涙が重力に従って零れ、こめかみを伝ってシーツに染みを作る。
 その涙を追って鳴戸の唇がこめかみを這い、ちゅっと音を立てて閉じた瞼にキスが落とされる。
「優しい……おやぶん」
「そりゃ、俺のせいで泣かせたからな。責任はきちんと取らねえと」
 耳元でそう囁かれ、その唇は耳の後ろへ移動してくすぐるようにキスを落としながら舌も使い、くしゅくしゅと音を立てながらくすぐるように舐められる。
「く、くすぐったい。止め、止めてください、こそばゆいです。おやぶんっ」
「だけど気持ちイイんだろ? 声が甘いぜ。久しぶり、この声も身体もにおいも、温度も。これは、手放せねえよなあ……」
「んっ……それは俺のセリフです。また置いて行って……おやぶんの温もりが、恋しかったです」
 そう言って広い背に腕を回し先を促す。
 すると、鳴戸の手が着ていたシャツを捲り上げ、素肌を擦ってくる。
「あっ……あ、んっ……んん、はあっ」
 思わず吐息のような喘ぎ声を出してしまうと、鳴戸がのどの奥で笑ったのが分かった。それに少しの悔しさを覚えつつも、どうしても止まらない声と共にシャツがすべて脱がされてしまい、上半身にはなにも纏っていない姿にさせられ、胸の中心に手が乗り、すりすりと撫で擦られる。たったそれだけでも、感じてしまう龍宝だ。
「あ、はあっ……おやぶんの手、久しぶり……熱くて、気持ちイイ……」
「気持ちイイのは、胸だけかな?」
「えっ……あ、そうだ。へそ、へそがあんまりきれいじゃないかも……。あの、やっぱりシャワーを」
「浴びさせねえーっと。キレーなモンだぜ、お前のへそ。汚れてはいねえよ。いつもの通り、キレーなへそしてる。なに、そう言うってことは舐めて欲しいか」
 こくんと頷くと、鳴戸は含み笑いをして伸び上がってきたと思ったらずいっと顔が寄ってきて、至近距離にある、その顔をつい赤面しながら見つめてしまう。
「あ、あの、おやぶん? 何故そんなに見つめるんです。何か俺の顔についてますか?」
「ばかか、お前は。いや、久しぶりに見るけど、キレーなツラだなって。数ヶ月前からなんにも変わっちゃいねえ、いい男だと思ってな。かーわいいツラ」
 でれっと笑ったと思ったら、いきなり頬を舐め上げられてしまい、顔を真っ赤にしながら抗議する龍宝だ。
「おっ、おやぶんっ! 俺をからかっているんですか!!」
「いーや? かわいがってる。からかってるんじゃなくって、かわいがってるってことくらい分かれよ」
「そっ……! 分かりませんよそんなっ、いきなり頬舐めるなんてっ……」
 するとさらにデレデレと笑い、舐めた部分を頬で包みさらさらと撫でてくる。
「あんまりかわいいからさ、美味いのかなと思って。想像通り、美味かったわ。もっと舐めさせろ!」
「やっ……ちょ、待ってください、おやぶっ」
 と、そうしたところで再び響く、扉をノックする音と共にイゴールの声が聞こえた。
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