煌々と光る幻滅灯の下で

 だが、ここで負けてはならないと必死になって手を振り解こうとするが上手くいかず、鳴戸の素晴らしい舌技によってトロトロに蕩かされる頃、漸く唇が離れてゆき目の前には欲情を浮かせた鳴戸の顔がある。
「さあ、着るって言え。言わなきゃ、もう一回おんなじキスする。お前がうんって言うまで、キスする」
「だ、誰がっ……! 死んだって言いませんっ!! いやですからね!!」
「なら、キスを続けるまでだな」
 然して、それから何十回キスを繰り返されたことだろう。いやだと何度も言ったが無視をされ、口のナカは唾液が吸われて無くなってしまい、上顎も舌も舌の下も舐められ過ぎて痛いくらいだ。
 それよりも快感が勝り、頭の中が薄ぼんやりとしてくる頃にとうとう、頷いてしまった。
「おおっ!! とうとう着てくれる気になったか!! よし、じゃあ頼む。俺のサンタさん、頼むわ!!」
「はあっ、はあっはあっはあっはあっ……ちょ、調子のいいことばかり言ってっ!! いいです、分かりました。着ればいいんですね? 分かりました。ですが、着ている間は見てはいけませんよ。俺がいいって言ってから。それまでは後ろを向いていてもらいます」
「はーい!」
 そのいいお返事に、さらに苛立ちが募る。しかし、とんだことになってしまった。まさか、自分が女性モノの下着を身に着ける日が来るとは。
 しかし、頷いてしまったことはもう取り返せない。
 仕方なく、着ていたスーツに手をかけたところで、眼をランランに光らせた鳴戸が見ているのに気づき、後ろを向けといったジェスチャーをすると、しぶしぶ背中を見せてくれた。本当にしぶしぶの勢いだ。
 大きく溜息を吐き、早速スーツを脱ぎ捨てそしてネクタイに手をかけて解いて床に置き、全裸になって紙袋の中を漁り、まずはショーツを身に着ける。だが、ここで問題が発生した。というのも、ペニスが入りきらない。布地が小さすぎるのだ。考えた結果、後ろに回して何とかブツを股に挟み込みショーツを穿く。何故こんな目に遭わなくてはならないのだろう。
 クリスマスとは本来、こんな日だっただろうか。
 頭が痛くなったがなんとか振り切り、ブラジャーに手を伸ばして身に着ける。もちろん、膨らみなど無いから不自然さが目立つ。
 そして、問題のキャミソールは何とも着にくいもので何とか苦戦した結果、ぴちぴちのぱっつんぱっつん、元々サイズが合っていないのを無理やり着たのだ。これは下着からちらちらと見える肌を楽しむものであって、龍宝の場合、何しろ身体にはぶ厚い筋肉が覆いおまけに男の身体ということで洋服に体型が合っていない。
 その顛末が、身体にフィットしまくってぴったりとキャミソールが肌に張り付いているような状態へとなり、眼も覆いたくなるような、そんな姿になってしまった。
 一応着てはみたが、自分がいま一体どんな姿を曝しているのか知りたくなり、全身鏡の前へ立ってみて驚いた。
 似合っていない。
 この一言に尽きるどころか、若干の気持ち悪ささえ感じる。
 これは男の着るものではない。慌てて脱ごうとするが、その前に鳴戸がいいとも言っていないのに振り向いてしまったのだ。
「おーい、龍宝。もういいだろ、着替え終わったよな? 見せてみろや」
「まっ……ちょっ、待っ……!! 待ってください!!」
 慌てて隠れる前に、ばちっと鳴戸と視線が交わり、つい身体の動きを止めてしまうと、鳴戸が顔を赤くしてぼーっとこちらを見ている。
「あ、あの、おやぶん……? 脱いでも、いい、ですよね……? こんな」
「き、キレー……キレーだ! 俺の大好きな、キレーな龍宝がいる!!」
「はぁっ!?」
 思わず素っ頓狂な声が出てしまった。この姿を見て、まさかきれいだという人間がいたとはそちらの方が驚きだ。
 顔を赤くして逃げ出そうとする龍宝だが、がしっと腰回りに腕が回りそのまま押し倒されてしまう。
「あっ、ちょっと! おやぶん!!」
「んー! いいにおい……キレーだぜ、龍宝」
「キメ顔で言われても困ります!! 何がきれいですか! こ、こんな姿……恥ずかしいです!!」
 何とか身を捩って逃げようとするが許されず、そこかしこに鳴戸の武骨な手が這い回り始める。
「あっあっ、ちょ、ちょっと待って、待ってくださいってばおやぶんっ!! いやです!!」
 すると、きょとんとした顔を見せ至近距離で大きな眼と出会う。
「こんなに似合ってるのに、なにがいやなんだ? すっげえキレーだぞ! お前も鏡で見てみろって!」
「見た後だから言うんです! なにが似合っているですか、ばかにしているんでしょう!?」
「いいや、いたって本気で言ってる。めちゅくちゃかわいいじゃねえか。お前、眼がおかしいんじゃねえの?」
 そこで大きな溜息を吐く龍宝だ。
 そして肺に息を溜め、それをすべて声に変えて怒鳴り散らす。
「おかしいのはあなたの頭の中です!! 脱ぎたいっ……脱ぎますからね!!」
 しかし、鳴戸はそこで満面の笑みを浮かべずいっと顔を寄せてくる。
「だーめ。未だお愉しみはこれからなんだからよ。脱ぐのは、その後! ってことで、いっただっきまーす!」
 ぷちゅっと唇に口づけが落とされたと思ったら、いきなりだった。鳴戸の顔がするすると降りていったと思ったら、なにを考えているのか両手で足を割り開かれてしまい、咄嗟に閉じる前に股間に顔が寄せられ、ペニスが挟まって盛り上がっている部分を舌を出して舐め始めたのだ。
「やっ!! いやだぁっ!! なにっ、なにをしてっ……なにしてるんですこの変態っ!!」
「あれ? お前あれなのか、勝負下着の使い方ってこういうことなんだぜ。この下着をつけているってことはだ、股間を含め私を食べてってことでクンニとかな、そういうことを下着の上からやるっていう」
「黙ってください! く、クンニとか言うの止めてっ!! 止してください下品です!!」
 顔を真っ赤にして怒鳴る龍宝だが、鳴戸はいたって上機嫌に、上目遣いで龍宝と視線を合わせながら再び股間に顔を埋めて下着の上からペニスを舐めしゃぶってくる。
 そのじれじれとした快感に、思わず身体の動きを止めてつい、舐めている姿を見つめてしまう。
 倒錯的だとは思えど、間違いない快感に身体と心が揺らぐのが分かった。何しろ、気持ちがイイ。
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